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ニーズが "多様化" する時代に、メガヒットする「本の企画」をどう考えるか -Book Lover REPORT vol.5

こんにちは、サンマーク出版の代表、兼、編集者の黒川精一です。今回は「本の企画」の立て方について書かせていただきます。

というのは、価値観や考え方、ライフスタイルが「多様化」し、マスという概念がなくなりつつある現代で、書き手・作り手の多くが ”ある悩み” を抱えているからです。

多様化したニーズに対応しようとすると、
市場が狭すぎて「部数」が伸びない

僕がお仕事をご一緒しているある著者さんは、日本を代表するような「模型鉄(もけいてつ)」です。模型鉄とは、鉄道模型を作る人。材料の調達から製作まで情熱を燃やし、人生をかけて鉄道模型を作っています。

ご存知の通り「鉄オタ」と呼ばれる鉄道好きの人たちは趣味嗜好がいくつにも分かれています。

  • 撮り鉄:鉄道の写真を撮る人

  • 乗り鉄:列車に乗ることを楽しむ人

  • 模型鉄:鉄道模型を作る人

  • 音鉄:鉄道の「音」を聴いたり録音して楽しむ人

  • 時刻表鉄:鉄道の時刻表やダイヤグラムを愛好する人

  • 廃線跡歴史派:廃線跡を検証する人

  • 歴史鉄:鉄道の歴史を研究する人

  • 駅弁鉄:駅弁を食べたり、包装紙を集めたりする人

  • 会社鉄:鉄道会社について調べたり、株を購入したりする人

  • 法規鉄:鉄道法規を研究する人 など

上記の鉄道ファンの方々を ”一括り” にして、みんなに読んでもらおうと

『鉄道好きが読む本』

を作ったとしても、読者を満足させる結果にはなりにくい。興味や趣味嗜好、価値観が多様化しているためです。

かといって、一つひとつのニッチなニーズに対応した本を作っても、それぞれの対象人数が少ないため部数は伸びません。

じゃあ、一体どうすれば・・・⁉︎

このような葛藤が、ありとあらゆるジャンルで起きています。「多様化」というのは、作り手にとってはじつに難解な現象です。このように「ニーズが多様化、細分化されるマーケットにおいて、ベストセラー本をいかに作り出すか」というのが現在の出版市場の課題の一つです。

今回のレポートでは、その解決策を考えてみたいと思います。


急速に多様化するもの

多様化とは、様式や傾向などがさまざまな種類に分かれることです。働き方の多様化、人材の多様化、 社会の多様化など様々な事象に対して使われます。多様性を意味する「ダイバーシティ」という言葉も近年よく使われるようになりました。

コンテンツやサービスの世界では「ニーズの多様化」という言葉がよく使われます。先程の鉄道ファンの例を出すまでもなく、人々の興味、好み、趣味嗜好、ライフスタイル、時間の使い方はじつに様々です。

この多様化。

「本」ーー 特に、生活実用書やビジネス書、自己啓発書、教養書、児童書、エッセイなどの企画を検討する際には、そもそも「何が多様化されているか」を考えておく必要があります。

主に3つあるように思います。「ダイエット」という巨大マーケットを例にお伝えします。

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