
小5レベルの言葉でも「ガラッとカッコよく」変えるコツ
お、ねだん以上(ニトリ)
そうだ 京都、行こう(JR東海)
やめられない、とまらない
(かっぱえびせん/カルビー)
こうした誰もが知っているキャッチコピーは、すべて「簡単な言葉の組み合わせ」でできています。言うなれば小学5年生でも知っているレベルの言葉。
その印象を強くする方法はいくつもありますが、『言いたいことは小5レベルの言葉でまとめる。』の著者でコピーライターの手代木聡さんがおすすめすることの一つが「順番を逆にする」。
アパレルメーカー入社2年目でブランドマネージャーに抜擢された「チエ」と、手代木さんの頭に棲みついている猫界イチの天才・言語化猫「メイメイ」との会話形式により構成された本書よりお届けします。

順番を入れ替えるだけで、物語が一気に動き出す
メイメイ:日本語って「主語→述語(動作)」の構成が通常でしょう。これを「述語(動作)→主語」にしてみるんです。例えば、こんなふうに。
母がトップスのチョコレートケーキを食べた。
↓
トップスのチョコレートケーキを食べたのは、母だった。
主語の「母」と述語の「(チョコレートケーキを)食べた」の順番を入れ替えただけですが、どう感じますか?
チエ:最初の文章は、ただ事実を伝えているだけって感じだけど、後の文章は、何かの事件の犯人を探してるみたい! 順番を逆にした方は、チョコレートケーキを食べた「母」が強調されているわけね。
メイメイ:そうです、最初の文章ではただ単にお母さんの行動を書いただけですが、後の文章はその前後の物語を感じさせますよね。
あの人のことは、忘れようと思う。
これなら、「失恋でもしたのかな?」と思うくらいですが……
忘れようと思う。あの人のことは。
なんて言ったら、「本気で忘れようとしてるんだ」「大恋愛の末の大失恋だったのかな?」「『あの人』って、どんな人だったんだろう?」なんて具合に決意のすごさに驚かされたり、「あの人」のことが気になったりしませんか?
チエ:わかる! 後者の方が印象に残るし、壮大なストーリーを感じさせるね。

あえて逆にすると意外性やインパクトが生まれる
メイメイ:好きだったあの人は、いまでも学生服を着ています。私の中では。
(富士ヨット学生服)
こちらも通常の順番だと、
「私の中では、好きだったあの人は、いまでも学生服を着ています。」と〝フック〟になる要素がありません。
しかし「私の中では。」を最後に持ってくることによって、いまだに「私」の中に眠る淡い恋心、甘酸っぱい記憶を想起させますね。
チエ:前者の方が印象に残るし、ストーリーを感じさせるね。
ねえメイメイ、いま「フック」って言ってたけど、それってどういう意味?
メイメイ:広告界では、人を引きつける言葉やツカミになるものを「フック」なんて言います。「残り物にはフック(福)がある」と覚えておきましょう。
チエ:メイメイってたまにひどいオヤジギャグ言うよね……。レアがどうとか……。
メイメイ:これは、文章の流れをあえて逆にすることで、意外性やインパクトが生まれるからです。言葉は上から下(横書きだと左から右)へと時間が流れていくので、それを逆転させる効果が生まれますね。詳しくは『言いたいことは小5レベルの言葉でまとめる。』3章の「流れと組立」でもお伝えしています。単調になるのを避けて、読者の好奇心を刺激し、新鮮な印象を与えることになるでしょう。

<POINT>
文章の順番をあえて入れ替えると意外性が生まれ、フックが作れる。
<本稿は『言いたいことは小5レベルの言葉でまとめる。』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 SUNMARK WEB編集部)
Photo by shutterstock
サンマーク出版の公式LINE『本とTREE』にご登録いただくと、この本『言いたいことは小5レベルの言葉でまとめる。』の実際と同じレイアウトで目次を含み「プロローグ」「はじめに」「1章 伝わる言葉は小5レベル」の途中まで冒頭33ページをすべてお読みいただけます。ご登録は無料です。ぜひこの機会に試し読みをお楽しみください!

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【著者】
手代木聡(てしろぎ・そう)
株式会社電通西日本コピーライター/クリエイティブディレクター
1975年東京都生まれ、広島県在住。大学卒業後、Hondaの広告制作を手掛けるプロダクション「原宿サン・アド」に入社。ピーク時は深夜や明け方まで身を粉にしながら働き、それでも自分の企画がなかなか通らない20代の日々を過ごす。
ローカルの方が面白い仕事ができるのでは、と電通西日本の岡山支社に、31歳のときに転職。クリエイターの活発な交流の場がなかった岡山では、地元の広告制作者同士がつながる団体「岡山広告温泉」を創設。地元の街を巻き込んで、10年以上続くイベントとなる。これまでに企業や行政などさまざまな広告・商品開発・ブランディングを手掛ける。
表現をすることに憧れて就いたコピーライターという仕事は、実はクライアントの課題や見えない問題を可視化し、解決するための指針を立てることが醍醐味であるということに気づき、その能力を磨くうちに競合コンペでほぼ負け知らず、クライアントからは指名され続ける唯一無二のパートナーシップを築くようになる。本書が初の著書となる。
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