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あらゆる「しにくい」を「しやすい」に変えてしまう、たった一つのワザ

 説明には「わかりにくい」と「わかりやすい」がある。

 商品には「使いにくい」と「使いやすい」がある。

 デザインには「見にくい」と「見やすい」がある

 住宅には「住みにくい」と「住みやすい」がある。

 巷にあふれる「しにくい」は、たったひとつの技術を身につけることで、すべて「しやすい」に変えることができます。それこそが「分ける技術」。

 コクヨのワークライフコンサルタント・下地寛也さんの著書で、「分ける技術」を駆使してありそうでなかった「しにくい」の解決を探った本日9月20日発売の新刊『「しやすい」の作りかた』より、冒頭の試し読みをお届けします。

『「しやすい」の作りかた』
『「しやすい」の作りかた』

序章「しにくい」を「しやすい」に変える

大谷翔平と外野スタンド

 大谷翔平選手が「ドンッ!」っというすごい音をさせて打ったボールが、大きな放物線を描いて外野スタンドに消えていく。ホームラン! これこそが野球の華であり、人々を魅了する。

 そんな「ホームラン」の定義は次のようなものだ。

 バッターが打ったボールが、一度も地面に触れることなく、両翼のファールラインとフェンスの交差地点の間を通過し、プレイフィールドの外に出ること。

 こう書くとなんだかややこしいが、要は「打ったボールが一度も地面につかずに、外野スタンドのフェアゾーンに入ること」だ。

 ここで想像してみてほしい。もし、「プレイフィールド」と「外野スタンド」がフェンスで分かれていなかったらどうなるだろう?

 事実、野球の統一ルールが定まる以前は「外野フェンス」は存在していなかった。外野フェンスが初めて設置された球場は、1862年5月にニューヨーク州ブルックリンのウィリアムズバーグ地区に開場した「ユニオン・グラウンズ」だと言われている。『大谷翔平とホームラン』(AKI猪瀬著)によると、当時このグラウンドは、夏場は野球場、冬場はスケート場として使用されていたらしい。

 打球が放物線を描いて外野スタンドに入る。誰の目からもそれがホームランだとわかる。

 この「わかりやすい」状態を作り出しているのは、プレイゾーンと外野スタンドがフェンスで分けられているからだ。ボールが外野スタンドに直接入ることで、誰の目にもそれがホームランだとわかり、観客たちのボルテージが一気に上がる。

 もしも、プレイフィールドと外野スタンドが分かれておらず、ボールがコロコロと転がり続けていたら、何をもってホームランとするのか「わかりにくい」。実際、外野フェンスが登場する以前のベースボールでは、ホームランの定義はあいまいだった。

分け方が「しやすい」を作る

 私はコクヨという会社に勤めている。コクヨ最大のヒット商品といえば「キャンパスノート」だ。学生から大人まで幅広い層に支持されており、約50年前の1975年の発売以来、累計販売冊数は35億冊を超える大人気商品だ。

 100種類以上あるキャンパスノートの中でもっとも売れているのは「B5サイズ」で、1行の幅が「7ミリ」、1ページあたりの行数は「30行」。これがユーザーから好まれている。

「30行」ということはつまり、1ページを「30分割」している。1行の幅が、もしも1ページを20分割にしていたら広すぎるし、40分割にしていたら狭すぎて「書きにくい」。30分割にしたことで「書きやすい」状態になっているわけだ。

 私も様々な人のノートを調べてみたが、書く文字の高さは6~7ミリくらいが多い。そのため「30分割」だと絶妙に「書きやすい」のだ。

 多くのものは、目的によって「分け方」が変わる。

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この続きは、サンマーク出版の公式LINE『本とTREE』にご登録いただくと実際の本と同じレイアウトで「序章 「しにくい」を「しやすい」に変える」(目次を含む30ページ)を無料でお読みいただけます。ぜひこの機会に試し読みをお楽しみください!

【著者】
下地寛也(しもじ・かんや)
コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタント
エスケイブレイン 代表
1969年神戸市生まれ。1992年文房具・オフィス家具メーカーのコクヨに入社。オフィス設計者になるが顧客対応が下手すぎて、上司や営業に怒られる日々が続く。つねに辞めたいと思いながら働いていたが、5年後、コクヨがフリーアドレスを導入したことをきっかけに「働き方とオフィスのあり方」を提案する業務に従事し、ワークスタイルを調査、研究する面白さに取りつかれる。
デスクや会議室の配置などの「分け方」を研究したことをきっかけに、社会のさまざまなコト、モノ、サービスの「使いにくい」「わかりにくい」といった問題点は「分け方」で「しやすい」に変えることができるという提案をするようになった。 コクヨにおいては、顧客向け研修サービス、働き方改革コンサルティングサービスの企画など数多くのプロジェクトマネジメント業務に従事。未来の働き方を研究するワークスタイル研究所の所長などを経て、現在はコーポレートコミュニケーション室の室長としてコクヨグループのブランド戦略や組織風土改革の推進に取り組んでいる。
同時に新しい働き方を模索して複業ワーカー(エスケイブレイン代表)としてのビジネススキルに関するセミナーや講演、YouTube動画配信などの活動も積極的に行っている。著書に『考える人のメモの技術』(ダイヤモンド社)、『プレゼンの語彙力』(KADOKAWA)、『一発OKが出る資料 簡単につくるコツ』(三笠書房)などがある。