教え方がうまい人は基本から順番に一つずつ教える
「友だちにバスケのやり方を教えているんだけどさっぱりわかってもらえない。どうしたらわかってもらえるの?」
他人にモノを教えてわかってもらうのは、大人でも難しいことです。何かコツはあるでしょうか。
子どもの小学校生活で、「仲間に入りたい」「嫌なことを言わないでほしい」「教えてほしい」「意見を言いたい」など、シチュエーションにあわせた言い方と、その考え方を紹介している齋藤孝さんの新刊『こんなときどう言う?事典』よりお届けします。
基本)教えるのは一度に一つだけ
できる!)いちばん重要なことを最初に教える
これだけでもOK)いっしょにやる
<全部いっぺんに伝えない。一つずつ教える>
だれかに何かを教えるときには、ぼくはルールをつくっています。それは、「一度に教えるのは、一つだけ」ということです。
一度に三つも四つも教えると、どんな人でも「あれ? 何を教えてもらったんだっけ?」とわからなくなってしまいます。教えてもらったことが、頭の中でゴチャゴチャになったりね。だから、一つずつ教えることが大切なんです。
そして教えるときには、いちばん重要なやり方やルールを、最初に教えるんです。「まずはこれをできるようになってみよう」と教えて、うまくできるようになったら、ちょっとステップアップしたことを一つ教えて……とくり返すんです。
たとえばサッカーをまったく知らない人に、サッカーを教えるとすると、「足や頭、胸は使っていいけど、手だけは使っちゃダメだよ」みたいな、いちばん基本的で重要なやり方とルールを教えるんだ。それを覚えたら、「この線からボールが出たらダメだからね」といったルールを教えたり、次にはボールをまっすぐける方法を教えたり……と、一つずつステップアップしていきます。
「基本から順番に、一つずつ教える」というのは、覚えやすくするための方法なんだけど、教えられている人の実力がつきやすいという効果もあるんだよね。
積み木を積んでいくときだって、いちばん下の土台の部分をしっかりさせておかないと、きちんと積むことはできませんよね。だからまずは、土台となる基本を一つ、しっかり教えたあとで、その上に一つ、また一つ……と教えたことを積み上げていくのです。すると、いつの間にか高く積み上がっているものなのです。
それに、基本的でかんたんなことを一つだけ教えれば、「へー。意外とかんたんだな」と思ってもらえたり、「これができるなんて、ぼくは天才かも!」なんて、ノッてくれたりもしますよ。
忍者も「基本」を大事にしている
みなさんは「忍者」って知っているかな? 江戸時代にいたとされる忍者たちは、毎日の訓練として、麻という植物の苗木を飛び越えていたという言い伝えがあります。
麻は成長がとても早く、1日に3センチくらいのびるらしいのです。今日3センチだったら、明日は6センチ。1週間後には21センチになっています。その上を毎日飛び越えるということは、毎日3センチずつジャンプ力が鍛えられるということですね。そして、1か月で90センチほど、3か月で3メートルのジャンプが、いつの間にかできるようになっているということなんです。
まさにこの忍者の訓練が、「基本から順番に、一つずつ教える」ということになりますね。
また、教えるときには、きみもいっしょにやってみるとよいと思います。言葉で説明するよりも、実際にやってみせたほうが、「ここは足を踏ん張って」「こういうことをするとミスになるよ」などと教えやすいですし、相手もわかりやすいと思いますよ。
POINT きみもいっしょにやってみよう
<本稿は『こんなときどう言う事典』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
齋藤孝(さいとう・たかし)
1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』『12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)、『小学生なら知っておきたい教養366』(小学館)等多数。テレビ出演多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。