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「文章は導入3行とオチが命」ブロガーかんそうさんに面白い文章を書くコツを聞いてみた

■"かんそう"さん、ついにその文章術を公開!

時には音楽の感想、ある時はアニメの感想、日常の愚痴まで…… ありとあらゆるジャンルの文章で人々を共感させ、時には感動の渦に巻き込み、はたまたその内容が議論の的にもなってきたエンタメ系のトップブロガー“かんそう”さんが初めて本を執筆した。

そのタイトルは『書けないんじゃない、考えてないだけ。』である。

『 書けないんじゃない、考えてないだけ。』

発売に合わせて、6月21日には「青山ブックセンター本店」にかんそうを招き、初のトークベント、初のサイン会も兼ねたイベントが開催された。かんそうさんが人前に出るのも初めてであり、門外不出ともいえるその文章術を披露するのも、はじめてであった。

まさに異例尽くしと言えるが、ブログ執筆開始から10年目にして、初めて手の内を披露したのはなぜだろうか。

今回はなんと札幌から上京したかんそうさんに直撃インタビュー。文章を書き始めた知られざる原点、そして唯一無二で誰も真似できない、常軌を逸した味わい深すぎる文体を生み出す秘訣に迫ってみよう。

■きっかけはmixiの日記

――実は私もかんそうさんの文章を何度も読ませていただいているのですが、毎回キレがあって面白いですね。そもそも、かんそうさんが文章を書き始めたのはいつ頃ですか。

かんそう:本格的に文章を書き始めたのはブログを始めた10年前ですが、mixiで日記を書きはじめたのは高校生の頃なので、20年前くらいかな。当時流行っていた“前略プロフ”や、個人のホームページを作成していましたね。

――mixi日記、懐かしいですね。

かんそう:mixiの日記は、はじめは友人に向けて書いていたのですが、あるとき匿名の方からコメントをもらいました。自分が書いたものが知らない人にも届くんだとわかったときは、嬉しかったですね。

――開設当初のブログは、どんな内容だったのでしょうか。

かんそう:テレビドラマのあらすじをまとめたブログでした。この頃はブログ自体が珍しかったので、芸能人が書いてなくても、アクセスが集まったんですよ。最新話が放映された1時間後にあらすじを書けばアクセスがあったので、ひたすら書き続けていましたね。読んでくれる人が増えてくると、オリジナルの感想を書くようになっていきました。読者の反応を見ながら、次の記事はこうしようかな……と考え、アレンジを加えていきましたね。

■「Mステ」の感想に大反響!

――ブログを始めてから、はじめて大きな反響があった記事は何ですか。

かんそう:ドカンと伸びたのは、2019年に書いた「ミュージックステーション」の感想ですね。アップしてから一瞬で、100万人くらいに読まれたんですよ。内容はただの番組への不満です。出演者の演奏よりもVTRの街頭インタビューの時間が長かったので、意味ないじゃんという内容で、深く考えずに1時間くらいで書き上げたものです。そしたら、他の人も同じことを思っていたんでしょうね(笑)。とんでもない反響でしたよ。

――まさに記事がバズったわけですね。そもそも、バズる原稿を書くコツのようなものはあるのでしょうか。

かんそう:バズるために必要な要素は、“共感”と“タイミング”だと思っています。例えば、サウナブームについて文句を書いた記事もすごく読まれました(笑)。僕はスーパー銭湯が好きでよく行くのですが、こっちは風呂に入りに来ているのに、店側はサウナをめっちゃ推し出しているんですよ。そこで、「別にこっちは整いに来ているわけじゃない!」と書いたんです。

――まさにそれ、私も同じことを考えていました(笑)。ものすごく共感します。

かんそう:そもそも流行る前からサウナが好きだった人は、おしゃれな趣味になっていることに少なからず不満があるのではないでしょうか。サウナブームに対して、うっすらとむかつくよね、という気持ちがみなさんの間にあったのでしょうね。

■共感を得られるか否かは3行で決まる!?

――共感が得られる文章を生むテクニックについて伺いたいです。かんそうさんは文章を書くうえで、心がけているポイントがあるそうですね。

かんそう:初めの“つかみの部分”、そして“タイトルのつけ方”、あとは“導入部分の3行の書き方”がポイントだと思います。特に導入部分は大事ですね。僕は導入部分を読むだけで全体の内容がわかるように、意識して書いています。

――この先に何を言いたいのか、序盤で明確にしているというわけですね。

かんそう:あと、文章の長さはかなりポイントですね。僕はあまり長い文章が好きではないので、基本的に2000文字くらいでコンパクトに収めるようにしています。それなら1~2分で読み切れる長さですし、飽きさせないために何行かごとに小ネタを挟むように工夫しています。

――実際、かんそうさんの文章はテンポがいいですし、考えて書かれているとわかります。

かんそう:そして、大事なのは最後のオチ。最後に「読んでよかった」と思ってもらえるように、読後感には気を配りますね。先ほどのサウナの話だと、「整う」ではなく「乱れる」と表現したり、ダジャレで締めるのもいいなと思っています(笑)。

――他のブロガーやライターが書かれた原稿を読むことはあるのでしょうか。

かんそう:もちろん他の人の記事も読みますよ。そのとき、上手い点だけをただ真似するのではなく、この人のこの文章は好きではない、面白くないな……という点を真似しないように、気をつけて読んでいます。こういう言い方を避けようとか、考えさせられることは多いんですよ。

■街を歩きつつアンテナを張る

――札幌市に住みながら、仕事ができるのもブロガーの大きなメリットですよね。

かんそう:ものすごく大きなメリットだと思います。今では、東京の方ともこうやって繋がれてお仕事ができますからね。「東京にいたほうが流行を追いやすい」という意見もありますが、日常のことを書くのであれば、サウナのように誰でも経験できることや、テレビ番組の話題を書いたりするので、特に困るようなことはないですね。僕は生活しているなかで、自分の感性に刺さったことを書いていますから。

――でも、かんそうさんのフィルターを通すと、日常の些細なことでも面白くなる。面白いものを面白いと感じたり、変なものを変だと感じるような感受性は高いですよね。

かんそう:それはあるかもしれません。あと、なんだかんだで、自分でも考え過ぎかなと思うくらい周りを見ていますね。街を歩いているときも、アンテナを立てながらネタを探そうとしてしまう。なんでも面白がることは大事だと思うし、興味のないネタでも深掘りしてみることは文章を書くうえでも大切だと思います。

――読者の中には、「かんそうさんのような文章を書いてみたい」と思う人も多いと思います。例えば、ドラマやアニメを見て感動して、活字にして周りに伝えたい人はたくさんいます。人の心に響く文章を書くコツは何でしょうか。

かんそう:僕はまず、頭の中である程度書くことを決めてから、書き始めるようにしています。パソコンの前に座り、さあ書くぞと思って書き出すのではなく、寝ているときも頭の中で悶々と整理してしまうんですよ。だから、パソコンに打ち出す前にはもう文章の骨格ができているんです。

――あらかじめ整理されているからこそ、テンポのいい文章ができるのですね。

かんそう:文章って、ゼロから書こうと思って、パソコンに座ったら書けるようなものではないと思うんです。ただし、書くぞ決めたら集中して一気に書きますね。内容によりますが、1本仕上げるまではどんなに長くても6時間くらい。その間も、合間を挟みながら進めていきます。

■素人でもいい文章を書くためには?

――文章をこれから書きたいと思った人が、スムーズに書けるようになるにはどうすればいいのでしょう。

かんそう:書いたことがない人には、起承転結の“起”と“結”と友達になろう、とアドバイスしています。つまり、最初に言いたいことと最後のオチを決めてしまい、その2ヶ所を書いてから、間を埋めて結んでいくのです。これをマスターすれば、結構誰でも文章が書けるようになるかもしれないですね。

――本の中でもいろいろなテクニックが紹介されていますが、まさにかんそうさんが培ったノウハウの宝庫ですね。ところで、最近は配信も流行していますよね。動画ではなく、文章だからこそ伝えられるものはありますか。

かんそう:なんといっても、ブログは修正が効きますよね(笑)。配信だったら、言ったら言いっぱなしですから。あと、文章はじっくりと考えてから出せることですね。

――文章だからこそ思いを込められる部分もありますよね

かんそう:表現の仕方が本当に自由ですよね。語尾も「です」「ます」「である」……なんでもいいですし、内容によって細かく表現を変えられるのも利点かな。配信者は顔が見えている方だと、どうしてもフィルターがかかって見られると思います。文章は、男性なのか女性なのかわからないし、男性なのに女性のように書くことだってできるのが面白いですよね。

■文章術の本を書いたワケ

――それにしても、かんそうさんはずっと顔出しもしてこなかったし、本も出してこなかったわけですよね。とにかく面白い文章を書くのに、ヴェールに包まれた謎の人物でした(笑)。このタイミングで本を出そうと思ったのは、何があったのでしょう。

かんそう:サンマーク出版の担当さんからメールが来て、文章術の本を書かないかと打診されて受けたのが始まりですね。

――ここまで手の内を公開したことは……

かんそう:初めてです。むしろ、ブロガーにとっては、手の内を明かさないほうがいいと思うくらいですから。だって、「そういう風に考えているんだな」と読者が先入観を持って読む可能性があるわけでしょう。

――それでも、出版しようと思ったのはなぜですか。

かんそう:10年くらい活動をしてきたので、その区切りになる、形に残る本を出したかったというのがひとつ。それに、編集さんが声をかけてくださったのなら、その気持ちに応えて書こうかなと思いました。過去のブログからたくさん引用しているので、いわば活動の集大成であり、ベストアルバムみたいな感じになっていると思います。

――タイトルもいいですね。

かんそう:タイトルは、しっくり来たので良かったですよ。提案されて、すごくいいなと思いました。書店ではいわゆる文章術のくくりの本になると思うのですが、ありがちな「●●文章術」みたいなタイトルにいかないのが、サンマーク出版さんらしくてすごいと思いました(笑)。僕の文章をずっと読んできた方も、文章の仕事に興味のある方も、気軽に手に取っていただけると嬉しいです。

■死んでも書きたくなかった文章術の本を本気出して書きながら考えたこと

6月21日にサイン会も兼ねた初のトークベントを開催したかんそうさん!イベントの様子を余すところなくお届けします ↓

(文・構成=山内貴範・編集=サンマーク出版 Sunmark Web編集部)