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ひざが痛い人に気づいてほしい歩き方の悪いクセ

 60代から急に増え、70代女性の約7割が悩まされているとされる「変形性膝関節症」というひざの痛みや歩行のトラブルにかかわる病気があります。

ひざの軟骨をすり減らしてしまう、この病気の原因は? 一度すり減った軟骨はよみがえらないのでしょうか? ひざのスーパードクターである巽一郎さんの著書『100年ひざ』にその答えがあります。本書より一部抜粋、再構成してお届けします。

『100年ひざ』(サンマーク出版)
『100年ひざ』

「軟骨の量」が痛みを左右していた

 変形性膝関節症は、その9割でひざ関節の内側の軟骨や骨に「変形」が生じるものです。多くの場合、足がO脚に変形し、はじめは立ち上がるときにひざに痛みを感じます。徐々にひざの曲げ伸ばしに不自由さを感じるようになり、やがて歩き出しに限らず、動作中も痛みが出て、歩行が困難になっていきます。

 初期のひざの「変形」は、「軟骨の損傷」、俗に「軟骨がすり減った」といわれている状態から始まります。まもなく滑膜(かつまく)の炎症で関節に腫れが生じます。軟骨がすり減って、関節の隙間が狭くなってくると、間に入っていた半月板の損傷も生じてきます。

 ひざの痛みや歩きづらさを感じて病院にかかると、多くの場合、レントゲンを撮った後、「歳だから軟骨が減ってきましたね」と言われます。薬物治療(痛み止め)やひざ装具、湿布などを使いながら「様子を見ましょう」「ひざの負担を軽くするため、体重を減らしましょう」「運動をして太ももの筋肉をつけましょう」といった指導を受けるでしょう。

「痛み止めを使えば歩ける」では悪化する一方

「体重減」と「筋力アップ」は大事な視点です。でもこれだけでは、そもそもの原因である「軟骨が減ったこと」は補えません。また痛み止めを飲んでも軟骨が増えることはありません。逆に痛み止めを多用して動き回ると、さらに軟骨がすり減ることになります。

 やがて症状が悪化し、大腿骨と脛骨(けいこつ)が直接当たるようになると、人工関節に入れ換える「手術」などが提案されます。僕たちの人工関節センターを受診に来られる患者さんたちの、9割がこの状況の人たちです。「前の先生からは手術と言われたのですが、本当に手術しなくても治るのでしょうか?」と半信半疑の顔です。

 けれど本来、ひざは正しく使っていれば108年はもつ構造体です。

「老化」とは別に、軟骨が減る原因があるはず。それを突き止めなくてはなりません。108歳まで元気に歩ける人もいれば70歳で車イスが必要な人もいる。僕は患者さんと一緒に「老化以外の原因」を考え続けてきました。

 そして見つけた答えはシンプルなものでした。

 簡単にいえば、ひざの負担を大きくしている生活習慣があり、軟骨のメンテナンスも不十分。そこに老化が加わることで、軟骨が加速度をつけてなくなってしまうケースがほとんど──ということです。

ひざの負担を大きくしている生活習慣

 西洋では、変形性膝関節症の一番の原因は、急な体重増加ですが、日本でも最近は食事の欧米化により、急に標準体重を超える人が増えてきています。

 それでも日本でもっとも多い原因は、「姿勢」によるもの。頭が前に先に出て歩く〝ニワトリ歩き〟が元凶といっていいでしょう。この「ニワトリ歩き」と「太りすぎ」という二つの原因に、およそ8割の人が該当します。

(出所)『100年ひざ』(サンマーク出版)

 はじめは、歩くときにただ頭が前に出ているだけですが、それが次第に、「頭が前に出ないと歩けなくなる」という、タチの悪い生活習慣です。この姿勢のせいで軟骨にかかる負担が偏っていきます。

 僕らのからだは本当によくできていて、たいていのトラブルを自然に修復する機能を備えています。

「すり減った軟骨は戻らない」は誤解

 ただし、「歩き方」は別です。誰かから指摘され、自分で気がついて戻さないと、手遅れになることがあります。

 変形性膝関節症の初期から、歩き方を変えることなく、そのままの日常を送ると、軟骨はどんどん削られ、変形性膝関節症は進行してしまいます。

 こうした事態に対応するためには軟骨を減らさない歩き方があります。また、ひざ軟骨は「一度すり減ったら簡単には戻らない、自力では戻せない」などと言われることもありますが、それは誤解。自力で再生させる方法はあります。これらについては『100年ひざ』で詳しく解説しています。

<本稿は『100年ひざ』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)

【著者】
巽 一郎(たつみ・いちろう)
一宮西病院人工関節センター長

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