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死んでも書きたくなかった文章術の本を本気出して書きながら考えたこと


■"かんそう"さん、初の顔出し!トークイベント開催!

エンタメ系のトップブロガー“かんそう”さん 初の本『書けないんじゃない、考えてないだけ。』の発売に合わせて、6月21日に「青山ブックセンター本店」でサイン会も兼ねた初のトークベントが開催された。

予約を開始するやいなや申し込みが殺到したほどで、会場は超満員。総勢100人のファンが集まった。というのも、著者のかんそうさんが人前に出るのは今回が初めてで、門外不出ともいえる文章術を披露するのも初めてなのだ。初めて尽くしということもあって注目度も抜群だった。

イベントのタイトルは「死んでも書きたくなかった文章術の本を本気出して書きながら考えたこと」

 ステージには、かんそうさんと、サンマーク出版の担当編集・尾澤が登壇。誰もが初めて見るかんそうさんの姿に、会場からは「おおっ!」と歓声が上がった。かんそうさんは開口一番「……どうでしょうか?」とファンに問いかけ、いきなり笑いを誘った。初のトークショーなのに、さすがは百戦錬磨のかんそうさん、掴みはばっちりである。

トークイベントは担当編集の司会で進行。今回の本が生まれた経緯から語られた。何を隠そう、担当編集はかんそうさんの大ファンで、昨年の6月頃にコンタクトしたのが始まり。ところが、一度は断られたのだという。かんそうさんは、「(一般的な)文章術とはかけ離れた文章を書いているのに依頼が来るとは……衝撃でした。どういうつもりなんだろう(笑)?」と、戸惑ったそうだ。

それでも諦めきれない担当編集は、もう一度連絡。すると、数日後にかんそうさんから「仕方ない、やります」と返事があったそうだ。はじめは若干消極的だったかんそうさんだが、「書いてみたら、ベストアルバム的な一冊になった」と語るように、ブログを書き始めて10年目、その集大成にふさわしい本に仕上がったそうだ。

イベントでは初めて顔出ししたかんそうさん

■Amazonのレビューで「めっちゃ引用多い」

続いてのトークテーマは、「あなたのかんそうはどこから?」というもの。ご存じのように、かんそうさんは幅広いテーマで記事を執筆している。音楽、ドラマや映画、漫画、そして日常の悪口…… ファンは、何をきっかけにかんそうさんを知ったのだろう。挙手で回答してもらったが、驚くことに会場からは満遍なく手が上がり、改めてかんそうさんの守備範囲の広さが実感された。日常の悪口を楽しみにしているファンも、どうやら相当数いるようだった。

トークは今回の本のテーマ、文章術の話題へ。そもそも、本はかんそうさんのこだわりが随所に活かされた内容になっている。ところが、こんなエピソードも。

「説得力を持たせるために、過去のブログの記事を引用したんですよ。他の文章術の本にはなく、独自のものができたと思いました。ところが…… Amazonのレビューでは『めっちゃ引用多い』『買う必要なし』と書かれてしまった(笑)。ちなみに、そのレビューを書いた人は、キングコング西野亮廣さんの『革命のファンファーレ』に★5をつけていました」と、得意の毒舌で会場を沸かせた。

 また、かんそうさんのブログを読むと、すらすらと思いつくままに書いているイメージを抱く人も多いだろう。特に、日常の悪口は奔放に書き殴っているように思える。しかし、かんそうさんはこのように話す。

「日常的に頭の中で考え、組み立てている作業の方が長いんですよ。それに、『この言葉や表現は使わないようにしよう』というNGワードも実はあるんです。一言で言えば、『行き過ぎた下ネタは言わないようにしよう』というものですね」

この言葉にはすかさず担当編集からツッコミが入ったが、かんそうさんは露骨な下ネタを書くのではなく、いつも“ギリギリ”を攻めているそうだ。

右:かんそうさん
左:尾澤さん(サンマーク出版編集部)

■実は考え抜いて書いているのです

かんそうさんは、自身が編み出したテクニックを惜しげもなく公開。例えば、起承転結の文章で、敢えて“起”と“結”だけを最初に書いてしまう、その間を埋めていくテクニックを紹介。これはノウハウ本から得た知識ではなく、書きやすい形を模索した結果、生み出した文章術という。

また、あるテーマについて書き始めてからも、面白くない、あまり書けないと思ったら、潔くボツにしているとのことだ。かんそうさんの文章は、たくさんのボツの積み重ねの上に生み出されている。初めて公開された、陰で行われていた試行錯誤や目に見えない努力に、会場から歓声が上がった。

読まれる文章を書くコツも紹介。「たくさんの人に読まれるためには、タイミング、ブーム、フォロワーの数のかけ合わせだと思います。そういったタイミングを掴むには、とにかく数を打つこと。あきらめずに書いていくことが大事です」とアドバイスした。ちなみに、かんそうさんが最初にバズったのは、2019年に書いた『ミュージックステーション』の感想だったという。

「アップしてから一瞬で、100万人くらいに読まれたんですよ。内容はただの番組への不満ですが、同じことを考えている人がたくさんいて、共感が得られたんでしょうね。それまでは2日に1回はブログを更新して、地道に書き続けていたんですよ」

■“闇属性”の獲得は、中学時代?

 後半は、ファンからの質問にかんそうさんが応える形で進行した。まさに、ファンによってかんそうさんのすべてが丸裸にされる、そんな濃密な時間であった。

北海道釧路市で過ごした、幼少期や少年時代はどうだったのだろう。かんそうさんは、「クラスで好きな子が後ろの席に座っていたら、前の男子と大声でしゃべるふりをして、その子に向けて話しかけているような子だった」と思い出を語り、本心はブラックなのかピュアなのかという核心に迫る質問には、「(恋人と)付き合っている人には内心クソ、みたいな感じに僻む」タイプと明言した。

フォトセッション中のかんそうさん

 どうやら、かんそうさんのルーツは学生時代の部活動にあるようだ。小~中学時代はサッカー部に所属。経歴だけを聞くと、どう考えても爽やかなスポーツ男子だったと推測してしまう。しかし、その実態はというと、「明るく爽やかなイメージとは真逆の、“闇サッカー部”だった」と告白。現在に繋がる“闇属性”はこの頃に獲得したという事実が、明らかになった。

ブログで普遍的な人気を誇る、音楽への愛を語る場面も。「今後の人生で音楽、映画、漫画、ドラマの中からひとつだけを選ぶとしたら?」という質問には「音楽」と即答。「音楽は人間のすべて」とコメントした。ちなみに、ポルノグラフィティや藤井風の楽曲内の“叫び”を文字にするテクニックは、繰り返し曲を聴いて違和感のない表現を探っているのだという。

また、言うまでもなく、かんそうさんはブロガー界でも屈指のドラマ好きでもある。そんなかんそうさんに向けて、「恋愛小説を書くとしたら、どんなあらすじでタイトルにするのか。主人公の名前と、キャスティングも考えてほしい」という、かなりぶっ飛んだ無茶ぶりな質問も登場。

しかし、そこはドラマに精通するかんそうさん。その場で即興で考えたのは「1秒先の君に贈る物語」。余命1秒のヒロイン“しらとりかえで”の死を回避するために、主人公の“ガシュウインヒカル”が奮闘するという、どこかで聞いたことがある物語だ。ちなみに、かんそうさんのキャスティングは、ヒカルはムロツヨシ、カエデは黒木瞳だという。

■楽屋でサインを練習するおちゃめなかんそうさん

 ブログそのままの毒舌と、過去の名作記事にまつわる裏話も紹介し、会場を爆笑の渦に巻き込んだかんそうさんのトークイベント。この会場でしか話せない、ブログにアップできないお蔵入りした悪口ネタまで披露され、約90分に及んだトークイベントはお開きとなった。濃密すぎる時間にファンも大満足の様子だった。

最後はサイン会で幕を閉じたが、実はかんそうさんがサインを書くのは今回が初めてなのである。楽屋では、「サインってどんなふうに書けばいいんですかね?」と編集者にアドバイスを求め、スムーズにサインすべく、繰り返し練習する、何とも愛らしいかんそうさんの姿があったことを紹介して、今回のレポートを終えることにしよう。

かんそうさんのサインは最終的にコチラに決まりました ↑

■かんそうさんに直撃インタビュー!

 文章を書き始めた知られざる原点、そして唯一無二で誰も真似できない、常軌を逸した味わい深すぎる文体を生み出す秘訣に迫りました ↓

(文・構成=山内貴範・編集=サンマーク出版 Sunmark Web編集部)