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腹囲91cm「自分の糖尿病に気づけなかった」医師の戦慄

  予備軍も含めると日本で約2000万人が罹患している糖尿病と肥満は、じつは同じ一つの疾患です。ただ、「すべての医者がそれをわかっているとはかぎらない」と指摘するのは、全米シリーズ100万部、医学界の定説を覆したと評される『糖脂肪』の著者で、医学博士のジェイソン・ファンさん。
 
 実際に医師が自分の糖尿病に気づかなかったケースから、糖尿病や肥満の健康リスクについて本書よりお届けします。

「医師」が自分の糖尿病に気づけなかった

 2012年、マイケル・モズリー博士はTOFIだった。TOFIは〝thin on the outside, fat on the inside(隠れ肥満)〟の頭文字をとったものだ。

 モズリー博士は医者でありながら、BBC放送のジャーナリスト、ドキュメンタリー番組の制作者でもあり、国際的なベストセラー作家でもある。50代半ばの頃、彼の体は時限爆弾を抱えていた。

 彼の体重はそれほど多いわけではなく、身長180センチ、84・8キロ、腹囲は91センチだった。ボディマス指数(BMI)は26・1で、かろうじて過体重のカテゴリーに入る程度だ。

 標準的な指標からすると問題なしと考えられる。体調もよい。中年になった頃からお腹の周りが少し太ったが、少し肉がついた程度だ。

 だが、BMIは2型糖尿病のリスクを測るものとして最適とはいえない。腹囲、つまり胴まわりの脂肪のつき方のほうが、2型糖尿病の予測にははるかに役に立つ。

 モズリー博士はBBCで医療機関への取材をしたときに、磁気共鳴映像法(MRI)で自分の全身の写真を撮った。すると、なんともショックなことに、彼の器官は文字どおり脂肪のなかを泳いでいた。

 一見すると肥満ではないものの、彼の脂肪は胴まわりに隠れていたのである。

 18か月後、医者に行くと、通常の血液検査で2型糖尿病が見つかった。

 モズリー博士はがっくりと肩を落としてこう言った。「これまで自分は健康だと思っていたのに、突然、そうではないとわかった。自分にこれほど内臓脂肪があるということを深刻に受け止めなければならない」

 内臓脂肪は腹部内や、たとえば肝臓、腎臓、大腸などの臓器の周りに蓄積するもので、腹囲が増えることで気づく。ほとんどの脂肪がお腹周りにつく。こうした肥満は「中心性肥満」とも呼ばれる。

健康リスクは「脂肪がつく部位」で変わる

 脂肪がどこについているかで健康リスクが変わってくる。肥満の大人のおよそ30%が代謝に問題がないのは、それが理由だ。健康的な太り方をしている人は、危険な内臓脂肪ではなく皮下脂肪のほうが多い。

 逆に、特に太っていない人が肥満の人と同じように代謝に問題がある場合は、内臓脂肪が原因であるといえる。

 2型糖尿病と診断される患者のボディマス指数の範囲は幅広い。グラフで示すと正規分布となり、〝やせている〟糖尿病患者の数が特に多いわけではない。新たに糖尿病と診断される患者の36%は、25未満の標準的なボディマス指数だ。

 図4-2をご覧いただきたい。糖尿病発症の鍵となるのは、明らかにボディマス指数で表される体脂肪の量ではないことがわかる。むしろ、臓器の周りに蓄積した内臓脂肪や臓器の内部にある脂肪こそが問題なのである。

 中心性肥満は体重ではなく代謝の異常とおおいに関係があり、心血管リスクが高まったり、2型糖尿病を発症するリスクが高まったりする。内臓脂肪を減らせば、2型糖尿病の進行を防ぐことができる。

 一方、皮下脂肪は2型糖尿病や心臓疾患とはあまり関係がない。脂肪吸引によって外科的に皮下脂肪を10キロ近く取り除いても代謝にはほとんど変化がみられないことから、皮下脂肪は2型糖尿病の発症にはほとんど関係ないと考えられる。

ウエスト値は「身長の半分」未満が理想

 腹囲と身長の比率を計算して得られる「ウエスト・身長比」は、中心性肥満を測定する簡単な方法だ。ボディマス指数よりもはるかに寿命の予測に役立つ。ウエストが身長の半分未満であるのが理想だ。

  たとえば、平均的な身長の178センチの人であればウエストは89センチ未満であることが望ましい。中心性肥満の度合いが高くなると、メタボリック症候群のリスクも一気に高くなる。

 内臓脂肪のタイプによっても違いがある。たとえば肝臓や膵臓などの臓器の中の脂肪は、臓器の周りに蓄積された脂肪よりも危険だ。臓器内部の脂肪は、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎(または脂肪性肝疾患)、心血管疾患など、肥満による代謝性合併症のリスクが高まる。一方、臓器の周りにある内臓脂肪を外科的に取り除いても、代謝に改善はみられない。

 肝臓内脂肪は、インスリン抵抗性を引き起こす大きな要因である。また、中心性肥満は肝臓内脂肪の量とおおいに関係がある。膵臓内の脂肪も2型糖尿病の発症に大きく関わっている。

<本稿は『糖脂肪』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
Photo by Shutterstock

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)

【著者】
ジェイソン・ファン(Jason Fung)
医学博士。減量と2型糖尿病の治療にファスティングを取り入れた第一人者。その取り組みは『アトランティック』誌、『フォーブス』誌、『デイリー・メール』紙、「FOXニュース」などでも取り上げられた。ベストセラー『The Obesity Code』(『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』サンマーク出版)の著者。カナダ・オンタリオ州のトロントに在住。

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