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運のいい人が「人に好かれる」状態を作り出せる理由

「あの人は運がいいなぁ……」と思うような人は周りにいませんか。

「運」とはその人がもともと持っていたり生まれつき決まっていたりするように思いがちですが、決してそうではありません。

 運のいい人の共通した考え方や行動パターンを脳科学的見地からつきとめて自分の脳を「運のいい脳」にするためのヒントを紹介した、脳科学者の中野信子さんによる『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』よりお届けします。

『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版) 中野信子
『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』

運のいい人は自分なりの「しあわせのものさし」をもつ

 運のいい人は、必ず、自分なりの「しあわせのものさし」をもっています。

 自分なりの「しあわせのものさし」をもつとは、どういう状態が自分は心地よいかを知っておくこと。どういう状態に、自分はしあわせを感じるかを把握しておくことです。

 たとえばカフェでくつろぎながら読書をする時間が何よりもしあわせ、という人もいるでしょう。部屋がスッキリ片づいている状態が心地よいという人もいれば、愛犬と共に過ごす時間が好き、スポーツをやっているときが何より楽しいなど、「しあわせのものさし」は人によって千差万別です。なかには仕事や勉強をしているときがいちばん楽しいという人もいるかもしれません。

 運を自分のものにするには、この自分なりの「しあわせのものさし」をもっておくことが大事なのです。

他人の尺度ではなく自分の尺度で

 このとき気をつけるべきなのは、他人の尺度でなく自分の尺度でしあわせ感を測ること。

 一般的な価値観や他人の意見に惑わされず、自分の価値観で自分なりのしあわせを把握することが重要です。

 たとえば、ナディーヌ・ロスチャイルドは、「ひとりでお茶を飲むときにも、ふちの欠けたカップではなく、いちばん上等なカップを使うべきだ」と言います。しかし仮に、ふちの欠けたカップが大事な人からの贈り物で、長年愛用してきたものであるなら、そのカップを使ったお茶の時間は心地よいひとときになるでしょう。そんなカップならずっと使いつづけてもいいのです。

 とはいっても、「仮にそうだとしても、私ならふちの欠けたカップは使いません」とナディーヌ・ロスチャイルドならきっぱり言うかもしれません。

 つまり、ふちの欠けたカップを使うかどうかはその人次第。大事なのは、自分が心の底からどう感じるか、自分の脳がどう反応するかをきちんと見極めて、それに従って行動することです。

 他人の尺度でなく、自分の尺度で行動する。他人がどう思うかではなく、自分が心の底から「心地よい」「気持ちよい」と思える行動をするのです。

「しあわせのものさし」にも人を呼び寄せる力がある

 運のいい人というのはさらに、自分のものさしで測った自分が心地よい、気持ちよいと思える状態を積極的につくり出す努力をします。

 ではなぜこのことが、運に結びつくのでしょうか。

 実は、「しあわせのものさし」にも人を呼び寄せる力があるのです。

 人間の脳の中には、「快感」を生む報酬系という回路があります。これは、脳の中で比較的奥のほうにある回路で、外側視床下部、視床、内側前脳束、腹側中脳、尾状核といった、快感を生み出すのにかかわる部分の総称です。

 この部分が刺激されると人は快感を覚えます。食欲や性欲など本能的な欲求だけでなく、人助けなど社会的な行動も含め「自分が気持ちよい行動」をとると活動する部分です。

 自分が心地よい、気持ちよいと思える状態を積極的につくり出している人は、常にこの報酬系を刺激していることになります。自分の報酬系を上手に操れる人は、自分のいまある状態にとても満足できる人である、ということもいえるでしょう。

 人がもっともしあわせを感じるのは、自分が心地よいと思える状態に心底ひたっているとき、といえます。「もっとああしたい」「もっとこうなったらいいのに」という欲を忘れ、「ああ、気分がいいな」「気持ちがいいな」としか感じない瞬間です。その瞬間には、「ああ、もう何もいらないな」とさえ思えます。

 つまり、常に快の状態をつくり出す努力をしている人(報酬系を刺激している人)というのは、心理学でいう自己一致の状態になるのです。

自分でしあわせの状態を作り出し、自分を好きになる

 自己一致の状態とは、こうなったらいい、こうあるべきと考えている理想の自分と実際の自分が一致していること、あるがままの自分を自分で受け入れていること、もっと簡単にいえば、自分で自分のことが好きな状態です。

 もっと頭がよければいいのに、もっと仕事がうまくできればいいのに、もっとスタイルがよければいいのに、などといった欲をもっていない、私はいまのままの私でいいんだ、と自分で認めている状態です。

 この自己一致の状態にある人は、人をひきつける力があります。

「もっとこうしたい」「もっとああしたい」といった、ある意味攻めの姿勢がまったくないので、一緒にいる人はとても楽なのです。また、常に快の状態でいるので、一緒にいる人も快くなってくる。

 さらに、自己一致の状態にある人は、人の話を素直に聞けるという特徴もあります。話している側の心が多少波立っても、それを吸収してしまう余裕ももっています。

 こういう人が他人に好かれないわけはありません。

 つまり、運がいい人というのは、自分なりの「しあわせのものさし」をもっている→そのしあわせの状態を積極的につくり出す努力をしている→自己一致の状態(自分を好きな状態)になる→人に好かれる、という図式が成り立ちます。

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<本稿は『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
中野信子(なかの・のぶこ)
東京都生まれ。脳科学者、医学博士。東日本国際大学特任教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。著書に『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(日経BP)、『脳の闇』(新潮新書)、『サイコパス』(文春新書)、『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『毒親』(ポプラ新書)、『フェイク』(小学館新書)など。

『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版) 中野信子

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