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とっさに言葉が出てこない人へ「早口ことば」を強烈に推したい理由

「あの人の顔は思い出せるんだけど、どうも名前が出てこない!」
「会話の時に言葉に詰まってしまうようになった!」
「すぐ喉元まで出ているのに、どうしてもあれが思い出せない!」

 中高年以上の大人であれば多かれ少なかれ経験のある人は少なくないでしょう。特にシニア層では顕著に現れることがあります。これは脳の情報処理能力、いわゆる「頭の回転力」が低下した状態かもしれないのです。

 そんな人たちのための新しい本が生まれました。その名も『とっさに言葉が出てこない人のための脳に効く早口ことば』。脳トレ博士・東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太さんと早口ことば芸人・作家の大谷健太さんの共著で8月8日に発売を迎えました。

とっさに言葉が出てこない人のための脳に効く早口ことば

 大人の脳は衰えていくばかりではありません。やり方次第では鍛え直せます。本書の編集を務めた岸田健児・サンマーク出版編集部 統括編集長/第ゼロ編集部編集長が裏側を明かします。

おしゃべりだった60代母の口数が減ったのが企画のスタート

――とっさに言葉が出てこない。私(48歳男)もよくあります。

岸田健児(以下、岸田):私もです。ただ、切実に「とっさに言葉が出てこない人のための本が作りたい!」と思ったのは母親の存在が大きいんです。三重県の実家に帰省した時に、久しぶりに会った60代の母の口数が減っていることに気づいたんです。以前はめちゃくちゃお喋りだったからギャップがあって。「どうしたの?」って率直に聞いてみました。

母の答えは「言いたいものの映像は浮かんでいるんだけど言葉がうまく出てこなくなった」「どうも衰えている気がする」。これはなんとか力になりたい。そう強く思いました。

――編集者の個人的な悩みは、読者の皆さんが抱えている悩みと同じことでもありますからね。その解決法が、早口ことば?

岸田:共著者の1人である川島教授に言わせると、頭の回転を簡単に鍛えられる最良の手段の一つが「早口ことば」。文章を目で追いながら声に出して速く読むと脳が活発に働くからなんです。

脳の機能はコンピューターによく似ていて、優秀なコンピューターであるほど計算速度が速いんですが、早口ことばを行うことは計算速度=頭の回転力を高める強い効果があるというんですね。

早口ことばが認知症予防や物忘れ・滑舌の改善に

――川島教授といえば、2005年に登場したニンテンドーDS用ソフト『脳を鍛える大人のDSトレーニング』(任天堂)の監修を務めたことで知られる脳トレの第一人者ですから、説得力があります。

岸田:早口ことばによって認知症予防になったり、物忘れの改善になったり、滑舌がよくなったりする効果が見込まれるそうですよ!

70歳の人でも「早口ことば」を1〜2週間続けると、個人差はあるものの50〜60代くらいの脳の処理能力が得られたという研究結果も報告されているんだとか。

――共著者として、早口ことば芸人の大谷さんを起用された理由は?

岸田:「文章を目で追いかけながら声に出して早く読むと脳が活発に働く」なら、どんな文章でもいいかというと…

そうではないからです!人間って楽しくないと、なかなか続けることができない。

――「吾輩は猫である。名前はまだない」「トンネルを抜けるとそこは雪国だった」とかを早口でナレーションしても脳に効果はありそうですが、何回も繰り返そうとはなかなか思わないですね。

岸田:そうなんです。「ついつい挑戦したくなる」「ついつい達成したくなる」「ついついみんなでやりたくなる」「しかも、言いながらついつい笑っちゃう」というあらゆる“ついつい”が無理なく続けるためのポイントだと考えました。

そこで、そんな早口ことばを作れる人って誰だろう?と考えた時に白羽の矢を立てたのが、早口ことば芸人の大谷健太さんです。

大谷さんは「早口ことば」を活用したフリップネタが注目を浴び、テレビ番組等に多数出演されています。なんと、2020年の「R-1ぐらんぷり」では敗者復活ステージを勝ち抜き、準優勝を果たした実力者なんです!

その大谷さんに「楽しくて笑えてハッピーになって、一人でも大勢でも楽しめる」早口ことばを難易度4段階で63個考えてもらいました。

――63個も!

岸田:早口ことばは、成功しても、失敗しても結局笑えるので、何回もやって攻略したくなる。もちろん編集担当である私も、今回の書籍制作を通して、早口ことばを猛練習しました。披露していいですか?

これは難易度2です。

「知事(ちじ)に直々(じきじき)にひじき」。

――早い。そして早口ことばのフレーズも面白いですね。

岸田:もう1つあります。難易度3です。

「笹刺(さささ)す猿(さる)笹刺さる猿笹刺さる猿さする猿」。

――すごい。無茶苦茶早い。

岸田:こうやって言えるようになると口が回るようになるし、早口ことばができる自分に自信が持てるようになるんです。会話ができなくなる理由って失言とか失敗を恐れることにもあるんですが、そこにも効果があると考えています。

「言えたら超快感、言えなくても脳に高刺激」

――私も本書の冒頭にある特別付録をちょっとやってみます。「東京特許許可局(とうきょうとっきょきょかきょく)に勤(つと)めている角田(かくた)は、急遽(きゅうきょ)、京都特許許可局(きょうととっきょきょかきょく)への異動(いどう)を命じられた。その際、角田は過酷(かこく)な過呼吸(かこきゅう)に〜」・・・。「きょかきょく」ってうまく言えない。。。私、「か行」が苦手な気がします。

岸田:いきなり一番難しい「早口ことば小説」(難易度4)に挑戦いただいたんですね! どうですか? 確かに、達成はできなかったですが、脳を活発に働かせる実感がないですか?

――確かに、脳を筋トレしている気持ちになります。そして、噛んじゃっても逆に笑えました。本に書かれた「言えたら超快感、言えなくても脳に高刺激」のキャッチフレーズはそういう意味なんですね。この本、どんな人に読んでもらいたいですか?

岸田:やはり、「母親」に向けて作ったわけですから、認知症を心配されたり、もの忘れに悩まれるシニア層です。

――「本」という形式だと、電源もいらないし、ネット環境も必要ないからいつでも挑戦できていいですね! とはいえ、「あれが思い出せない現象」は私のようなミドル世代も他人事ではありません。

岸田:もちろんミドル世代も狙っています。それも見越して本のサイズを普通の本より小さくしたんです。

――なぜ?

岸田:カバンの中に入れやすいじゃないですか。

――なるほど! 飲み会に持って行きたくなりますね。

岸田:そうなんです。ゲーム感覚でみんなでワイワイやってたら、いつの間にか脳が健康になってた!というシーンが生まれたら最高だと思っています!

(聞き手・構成:武政秀明/Sunmark Web編集長、編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)