見出し画像

ミスを1つも犯したくない人にフッと肩の力を抜いて考えてみてほしいこと

「仕事でミスをしてしまった」

 誰しも落ち込む瞬間です。そんな事態に陥らないように、できるだけミスをしないような準備を常日頃からしておきたいし、振る舞いたいと考えている人は少なくないかもしれません。しかし、ミスを100%防ぐのは無理。では発想を転換してみると?

 史上最年少で世界トップクラスに君臨するメガバンクの「全米No.1」営業成績を残した酒井レオさんによるロングセラー『全米No.1バンカーが教える最強の気くばり』よりお届けします。

『全米No.1バンカーが教える最強の気くばり』
『全米No.1バンカーが教える最強の気くばり』

「いかにミスしないか」より「いかにミスに対処するか」が大事

 日本人の働き方を見ていると、特に失敗を嫌って、ミスしないように万全の準備をする傾向が強いように思います。

 でもどんなに準備をしても、ミスは起きるものです。「ミスしないこと」に力を注ぐよりも、「ミスが起きたとき、どうカバーするか」に力を注いだほうが、より身軽にチャレンジでき、行動を起こすのも早くなります。

 それを知ったのは、バンク・オブ・アメリカ(通称バンカメ)に在籍する以前、ある日系の銀行に勤めていたときでした。

 その銀行にいたころの私は、まさに「ザ・ジャパニーズ」ともいうべき働き方でした。仕事は速く、ミスはしない。機械のような正確さを追求していました。それこそが、自分が有能な人間だと示す要素だと、信じて疑わなかったからです。

 そんな思い込みがくずれたのは、当時の私の部署に監査が入ったときのことです。そのころ私は優秀社員の育成プログラムの一環で、コンプライアンスの業務に携わっていました。

 社内に法令を守らせる部署なのに、監査で何か引っかかったらしゃれにならない、と私は思いました。「絶対にミスを出してはいけない」──私はオフィスに残り、それこそねじりはちまきで、夜を徹して作業をしたのです。

 翌朝、上司が出勤してくると、私はまっ青な顔をして、ヘロヘロになりながらデスクに向かっていました。上司が驚いて「どうしたんだ?」と聞くので、「いや、今日監査があるので、ひと晩中、書類を点検していたんですよ」と答えました。

 私は当然ほめられると思いました。なぜなら部署のためにこんなにがんばったのですから。ところが上司の反応は予想外のものでした。

人間は失敗する生き物

「は? 何やってんの?」

 そしてこう言ったのです。

「いいか、おまえ、わかってないな。ひとつ大切なことを教えてやるよ。人間は失敗する生き物なんだ。だから失敗することが大切なんだよ。監査でミスが見つかったら、むしろ歓迎すべきじゃないか。どこを改善すべきかわかるんだから」

 徹夜して何十時間もがんばった私はガッカリしてしまいました。そればかりか、いざ監査が始まってみると、あんなに私が一生懸命チェックしたのにもかかわらず、やはりいくつかミスが発見されてしまったのです。

 上司がどうするのかと見ていると、まず監査の人たちにはっきりと謝罪の言葉を伝えました。そして指摘されたミスについて、「こんなふうに改善します」と対応策を述べたのです。

 すると、監査の人たちはいとも簡単に「そうですか。それなら、けっこうです」と許してくれたではありませんか。

「なるほど」と私は思いました。どんなにがんばっても、監査の人たちはミスを探すプロですから、必ず何か見つけてきます。そこを否定したり、隠したりしないで、まずは謝る姿勢を示す。そして謝るだけではなく、「今後はこういうことがないように、こんな改善策をこうじます」と方向性を明確に示せば、それで済むのです。

 ミスをなくそうとひと晩費やした私の努力はムダになりましたが、その代わりにひとつ、大事なことを学びました。

 人間には必ず失敗があります。いくら徹底してもミスは生じます。だから大切なのはミスをしないことよりも、ミスを謙虚に反省する姿勢と、「今後はもうしません」という対策をどう伝えられるかです。

「失敗をしないこと」に重きを置いてしまうと、隠蔽やごまかしが生まれてしまいます。そうではなくて、ミスが出たら出たで素直に認めて、そこから対策を立てたほうが、結果的に未来のミスも少なくなります。

 失敗を恐れずに、正面から明らかにして、改善しながら前へ進む文化のほうが、イノベーションも生まれやすくなるのではないでしょうか。

<本稿は『全米No.1バンカーが教える最強の気くばり』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>


(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部) 
Photo by shutterstock

【著者】
酒井レオ(Leo Sakai)
ニューヨーク生まれ、ニューヨーク育ちのバイリンガル日系アメリカ人。

◎関連記事


この記事が参加している募集