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16歳で両足を失った車椅子モデル・葦原海さん(26)が退院後すぐディズニーに行って悟ったこと

 16歳の時に事故で両足を失い、車椅子で生活するモデル・インフルエンサーの「みゅうちゃん」こと葦原海さん(26)。
 
 SNSの総フォロワー数は70万人を超え、ミラノコレクション、パリコレクションのランウェイを歩き、 MISIAさんのアリーナツアーではバックダンサーも務めたことも。
 
 両足をなくしても、やりたいことにまっすぐに、ハッピーに毎日を楽しみ尽くす彼女の姿は、幸せとは、何かが「ある」とか、「ない」とかでは決まらないことを教えてくれます。
 
 今回は葦原さんの著書『私はないものを数えない。』より、両足を失う事故のあとに「退院してすぐにレンタル車椅子でディズニーに行った話」をお届けします。

『私はないものを数えない。』(サンマーク出版) 葦原海
『私はないものを数えない。』

「理想どおりじゃない自分」は嫌い?

「自分らしさってなんだろう?」

「ありのままの自分を受け入れて、自分を好きになろう」

 これってどうやら、永遠のテーマみたいだ。

「自分に自信なくて、自己肯定感もてなくて」という子もたくさんいる。

 私はそういう悩みがあまりない。

「いつも人気者で、かわいいからでしょ?」と、すてきな誤解をしてくださる人もいるけど、そんなことはない。

 人気者じゃなかったし、マイペースで、人と違う行動を普通にしていたから、目立つつもりはなくても目立ってしまい、「何? あの子」と陰口を言われたりした。

 モデルのお仕事で「かわいい」と言ってもらうのはうれしいし、何回でも言ってほしいけど、私の理想の顔は自分と全然違う系統だから、特に自分をかわいいとも思わない。

 涙袋がないことも、上唇の山がないこともコンプレックスだ。

 だけど、これが私だから、私は私のままでいい。

 自分のよさは生かしつつ涙袋を描いて、濃いめのリップで唇の山をつくって、いつも「かわいくなりたい」と研究してる。

「理想どおりじゃないから自分が嫌い」で終わるのはもったいない。

 だって、自分は一人しかいないよね?

 理想に近づく努力をしつつ、「まあいいやん」とマイペースで明るくいく。

 そのほうがかわいくいられる気がするし、私はいつも、そういうふうに過ごしている。

人狼ゲームと車椅子のプチ冒険

 小児科に入院していたのは、最初に手術をした病院。そのあと、リハビリ病院に移ると個室ではなくなった。

 相部屋には、20代初めからアラサーのメンツ。病院はどうしても年配の方が多いから、偶然とはいえ、比較的歳としが近い人たちと一緒になったのがうれしくて、仲よくしていた。

 7時の夕食を終え、歯磨き・洗面を早めにすませれば、みんなが集まるデイルームに行ける。大きなテレビがあって、おじさん、おばさんの患者さんはくつろいでいたけれど、若めチームは男子も女子も人狼ゲームで盛り上がる。

 一度だけ、正面玄関の横の坂道まで出たこともある。

「車椅子で坂を登る練習はしてないけど、押してもらえばイケる!」

 一緒に行ったのは脊髄損傷の子たちだからみんな歩けないけど、男の子の車椅子につかまって、引っ張ってもらった。

 手動でも、さすが男子は力が強い! ささやかな夜の冒険に、ワクワクした。

 誰かの退院の前日には、お菓子で「退院パーティー」。

 カナブン、トッシー、普通に社会にいたら出会うことがなかった人たちとあだ名で呼び合い、私のあだ名はなぜか「姫」。

「姫、また食堂の冷蔵庫に私物入れたでしょ! ジュースとチョコ!」

 ごめんなさい、16歳の頃の私は、まるっきりクソガキでした!

 それでもみなさんに、よくしていただいた。ナースステーションによく行っておしゃべりをしたりして、仲よしの看護師さんが増えていった。

最終ミッションは筋トレ

「床トラ」という言葉を、知っていますか?

 車椅子ユーザーならおなじみの「床トランスファー」の略で、床から車椅子に乗ったり、車椅子から床に降りる乗り換え(トランスファー)を、自分でできるようになるということ。

 たとえばお風呂に入るなら、車椅子から床に降りて、洗い場でシャワーをして、そのあとまた、床から車椅子に上がらなきゃいけない。

 退院後はヘルパーさんなしで生活したい、いずれは一人暮らしをしたい。

 日常生活は床に降りることがいろいろある。「一人でトイレに行く」が早めにクリアできた私にとって、「床トラ」が退院のための最終課題となった。

 今は毎日やっているから余裕の床トラだけど、最初は怖かった。

 車椅子は高さがあるから、ペダルのところに一回降りて、次に床に降りる。なんとか降りられても、上がるのが難しい。

 床に降りたあとも、人間は頭が重たいから、頭の位置が傾いていると、ぐらっとくる。腕だけじゃなく背筋も鍛えてバランスをとらないと、前に倒れがちだ。

 車椅子の座面のクッションも、高さをその人ごとに調整する。

 体重がかかるから、クッションが低くて薄すぎると沈んで痛い。

 高くて厚すぎると床トラのとき、高く体を持ち上げることになり、しんどい。

 クッションの中身の素材もいろいろで、脊髄損傷の人はジェルが多い──足はあっても感覚がないので褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)になりやすいから。その点、自然に中身が動くジェルなら、ずっと同じ姿勢でも皮膚がただれる危険が減る。

 私の場合は逆で、感覚があって足がないので、自然にジェルが動くとバランスがとれなくなる。低反発クッションやらいろいろ試して、クッションは膨らませて調整できる空気タイプに決定。厚みが必要で、わりと高めになった。

 床に置いたクッションから訓練を始めて、徐々に高さを上げていく。風船バレーをしてくれた訓練士さんたちと一緒に、がんばった。

 筋力がない私にはしんどかったけど、やり通すと決めていた。

レンタル車椅子でスタバへ、ディズニーへ

 ついに、ついに、ついに! 退院が決まった。

 車椅子はユーザーに合わせてオーダーするものだ。

 たとえば私が今使っている外出用の車椅子は、電動アシスト。手動だと筋力がないからきついし、かといって電動にしたら、せっかく動かせる上半身の筋肉がおとろえてもったいない。

 両足がないぶん重心が後ろに傾きやすいから、バッテリーを前につけてバランスをとれるようにした。

 一人で外出したときも小回りが利いて、いろんな色の服を着てもコーディネートの邪魔にならない黒一色。でも、さりげなく紫ラメが入っている……つまり、私仕様の特注品だ。

 でも、退院したときは、特注品の仕上がりまで、外出を我慢できなかった!

「えええっ、もう外出するの?」

 親は心配と驚きで、怒るのを通り越して呆然としていたけど、私は平気。

 とりあえず使うことになったレンタル車椅子で、まず向かったのはスタバ。

 生クリームが苦手なのであまり魅力を感じていなかったけれど、初めて行ったとき、友だちに無料でできる裏ワザを教わった。

「キャラメルフラペチーノの生クリーム抜き、キャラメル多め」

 飲んでみたら、完全にハマった!

 高いからしょっちゅうじゃないけど、バイト代が入ったときに友だちと行ったり、ケンカして仲直りのタイミングで彼氏におごってもらったり。

 たかがスタバかもしれないけど、今までの自分が普通にしていたことをしたかった。病院にいても、親に買ってきてもらうことはできたんだろうけど、フラペチーノは溶けてしまうし、なんと言っても自分で行って飲みたい。

 退院後、初めて飲んだキャラメルフラペチーノは、めっちゃおいしかった!

 プリクラも撮りに行った。

 今なら携帯のカメラアプリがめちゃくちゃ発達しているからプリクラよりずっといいけど、高校生の頃はしょっちゅう撮りに行っていたから。

 そして、メインイベントは、ディズニー行き。

 行きたくて、行けるなら、仮の車椅子だろうとなんだろうと行く!

 それが私だ! 退院後、初めて行ったディズニーは、本当に夢の国だった。

 退院してすぐ、自分の車椅子もできていないのに、ディズニーに行くなんて無謀? スタバやプリクラは「たかが」?

 全然、そんなことはないと思う。

 車椅子ユーザーになっても、私は私だ。

 私はそれを確かめたかったのかもしれない。

 ううん、確かめるまでもなく──葦原海は葦原海のままだった!

 ポジティブとかネガティブとか、そんなことは別に考えていない。

 無理に明るくしようとは思わないし、落ち込むことだってある。

 ただ、落ち込んだままでいるのは退屈。とことん落ち込んだら、あとは上がるだけだと考えてる。

 私は一度、命が危うくなる経験をした。その後、車椅子ユーザーになって、2度目の人生を違う目線で体験している。そんなおもしろい感じもある。

 両足があってもなくても、やっぱり私は私。やりたいことは、やりたいから。

<本稿は『私はないものを数えない。』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
葦原海(あしはら・みゅう)
モデル・SNS総フォロワー数70万人のインフルエンサー・観光アドバイザ





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