「ノーと言えない」あなたが断れる人になるための鉄則
「私、断れない性格なんです」
「言いたいことをハッキリ言えない性格なんで」
「ハッキリ言える性格の人がうらやましいです」
断れないこと、「ノー」を言えないことを、自分の生まれながら持っている性格のせいだと思っている人は多くいます。
これは「断れない人が抱きがちな思い込みのひとつ」と指摘するのは『なぜか印象がよくなるすごい断り方』の著者、津田卓也氏。どういうことでしょうか。本書よりお届けします。
断れないのは「性格のせい」と思っていませんか?
なぜなら、「断れない」「ノーと言えない」性格を生まれもっている人なんていないからです。だれしも赤ちゃんのときは「オギャー、オギャー」と泣いて、「この状況は不快だ!」「こんなのは嫌だ!」としっかり訴えていたはずです。
また小さな子どもには、「あれも嫌」「これも嫌」と、何に関しても嫌がる「イヤイヤ期」というものがあります。だれもが「断れる人」のときがあったのです(上手な断り方かどうかは別にして)。
ではなぜ大人になると断ることができなくなってしまうのかといえば、それは成長の過程に原因があることが多いです。
他人の気持ちを考えなさい、他の人に優しくしなさい、他の人に迷惑をかけてはいけないなど、私たちは成長の過程で数々の「他人ファースト」の教えを受けています。この教えがからだに染み付いてしまっているわけです。
それゆえ、自動的に「他人優先モード」が発動してしまう。
逆に、学校教育の中で「断り方」を教わる機会はほとんどありません。アメリカは「ディベート文化」が根付いているので、「自分の意見をちゃんと言う」や「嫌なことは、嫌と言う」といったことがコミュニケーションを取る上で大事なことだと教えられますが、日本ではそういう教育がなされることは少ないように思います。
それは、就職しても同じことです。お客様の話をよく聞き、お客様の要望を察知し、応えることが企業では大事とされます。もちろんそれは大事なことです。しかし、あまりにもお客様を神格化しすぎて「お客様の要望はすべて応えないといけない」と思っている人までいます。
具体的な方法を知らないだけ
クレーム研修で、お客様対応が苦手な人に、断り方の基本を教えたとき。
「そうやって断ればいいんですね! 具体的な断り方を教えてもらえただけで気持ちが楽になりました」
という感想をもらうことがよくあります。その感想を聞くたびに、だれも断り方を教えてくれなかったんだな、と思います。
じつは、断れない人の多くは、性格のせいではなく、具体的な方法を知らないだけなのです。
また、子どもの頃、親から過度なストレスを受けて育った人も、相手の言うことに対して、つい「はい」と言ってしまう傾向があります。
「勉強しなさい」「どうしてそんな簡単なことができないのか」「なぜそんなにダメなのか」などと、親から否定的な言葉を執拗に投げかけられたり、ヒステリックに言われ続ければ子どもは辛くなります。言葉を真正面から受け止めるのは辛いので、その辛さから逃れるために頭では他のことを考えるのです。
そして最終的には親の言うことに従ってしまう。自分のほんとうの気持ちではなくても「はい」と言ってしまう。その方がその場がうまくおさまるからです。
じつは私は子どもの頃、父親からひどい暴力を受けていたことがあります。父親は怒ると私を殴ったり、蹴ったりしました。父親の暴力は恐怖そのものでした。ですから親から過度なストレスを受けた子どもが「ノー」を言えなくなるのは実感としてわかります。
私の場合、そんな父親だったので、何かをやれと言われたら「はい」と答えるしかありませんでした。「断る、断らない」以前の問題で、それを考える余地がなかった。自動的に「はい」と答える癖がついてしまったのです。
「ノー」を言えないのは癖であり、直せる
大人になってからも、私がかつては断れない人間だったのは、このときの癖が残っていたわけです。
つまり、断れない、「ノー」を言えないのは、生まれもった性格ではなく、癖なのです。つい「はい」と言ってしまう、脳の癖といえるでしょう。
でも、癖は直そうと思えば直せます。
つい「はい」と言ってしまう癖は直せるのです。それはだれもが、「断れない人」から「断れる人」になれるということ。
癖を直すには、まずは無意識に「はい」と言ってしまう癖が自分にはあると自覚することが大切です。自覚すれば、いざ「断る・断らない」という判断を迫られたときに、少し冷静になれます。「またいつもの癖が出てしまっていないかな?」とひと呼吸置ける。そして「今回はハッキリ断ろう」と決めて実際に断る練習をしていくと、次第に「自動的にイエス」と言ってしまうような癖は抜けていくでしょう。
あなたは「ノー」を言えない癖をもっている?
ところで、あなたには「ノー」を言えない癖があるでしょうか。
それを知るには、レストランでメニューを決めるときのことを思い出してみてください。
メニューを眺めて注文するものがなかなか決められないという人は、「ノー」を言えない癖をもっている可能性が高いといえます。
なぜなら「ノー」を言えない人は、その瞬間、頭の中にさまざまな思いや考えが溢れてしまっているからです。「ここで断ったら相手は気を悪くするのではないか」「ここで断ったら二度と誘われないかもしれない」「断らないとしたら、次の休日は潰れるだろう」「でも断らないほうが相手の印象はよいのではないか」など、次々とあらゆる考えが押し寄せて決断できなくなってしまうのです。
そしてその結果、その場では無難と思える「断らない」という選択をしてしまいます。
レストランの注文の際にメニューで迷う人も同じです。
「野菜が入った料理の方がいいのではないか」「この料理はカロリーが高すぎるのでは?」「こっちは値段が高すぎる」「他の人は何を注文するのだろう?」などとさまざまな考えが頭をよぎります。ゆえに、スパッと決まらない。
脳内が、なかなか「ノー」と言えない人と同じ状態になっているのです。
このような傾向がある人は、「ノー」と言えない癖をもっているといえるでしょう。
でも、自分にはそういう「脳の癖があるのだ」と自覚することはとても大切。それが癖を直すための第一歩となるからです。
<本稿は『なぜか印象がよくなるすごい断り方』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
津田卓也
株式会社キューブルーツ代表取締役
日本トップクラスのクレーム研修講師