お願いごとが上手な人「好かれる言い方」3パターン
「悪気はなかったのに、ちょっとしたひと言で相手を不機嫌にさせてしまった」
こんな苦い経験はありませんか? 対面の会話だけでなく、メール、チャット、SNSなどのコミュニケーションツールを使う場合でも同じです。
言葉というのは怖いもので、使い方を一歩間違えると人間関係にヒビが入ったり、取り返しがつかなくなったりすることもあります。でももっと怖いのは、相手をイラッとさせることを言っている自覚がない人。自分では気づかないまま、「マイナスの口癖」が習慣化していて、周囲との人間関係に不和をもたらしている可能性があります。
一方で、言いたいことを伝えつつ、相手に信頼感や安心感を与えて、好意的に受け取ってくれるような言い方があります。そんな「よけいなひと言」を「好かれるセリフ」に言いかえるパターンを141例、15章のシーン別に分けて解説しているのが『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑®』です。
シリーズ累計で51万部を突破しているロングセラーより、今回は仕事でもプライベートでも欠かせない「お願いごと・頼みごと」の言いかえパターン(×よけいなひと言、○好かれるひと言)を3つご紹介します。
「お願いごとや頼みごとをするとき、いかに相手に気持ちよく引き受けてもらえるか?」というのは、誰もが頭を悩ませる問題。どうすれば反感を買わずに、「この人のためなら」「自分のメリットになりそうだ」と思わせることができるでしょうか。
相手に軽く声をかけて時間をもらうようなケース
×ちょっといいですか?
↓
○10分ほどお時間ありますか?
「ちょっといいですか?」と声をかけることはよくあると思います。でもこの「ちょっと」は、人によって受け取り方がまったく異なります。「3分」「30分」「1時間」をちょっとだと思う人もいれば、「食事でもしながら話したほうがいいかな?」と思う人もいるでしょう。この時間感覚の違いが、人と人がすれ違う大きな原因になることが多いのです。
たとえば、事務所に電話をかけたときに、「いま担当者が不在ですので後ほどかけ直すように申し伝えます」と言われたとしましょう。この「後ほど」はあなたにとってどのくらいの感覚でしょうか?
私が企業研修の際にこの質問をすると、見事にバラバラの答えが返ってきます。短い人は「5分」「10分」、または「30分」から「数時間」。さらに「その日中」「翌日まで」という人もいて、5分から翌日までとかなり幅がでます。
つまり、「ちょっと」「後ほど」といったあいまい言葉で、相手がこちらの「つもり」をわかってくれると思ったら大間違いなのですね。
ですから、相手に時間をとってもらいたい場合や、返事をお待たせする場合は、「10分ほどお時間ありますか?」「明日のお昼までにお返事します」というように、〝具体的に〟期限や期日を伝えてください。また、もしその約束を守れなくなった場合は、〝事前に〟変更のお詫びとお願いをして約束を破らないことも大事です。
お願いした仕事の納期を併せて伝えるケース
×できれば早めにお願いします
↓
○月末までにお願いします
対面でのやりとりだけでなく、メールやチャットでお願いするときも、多くの人が無意識のうちによく使っているのが、「できれば」「可能だったら」というよけいなひと言です。これは、お願いするほうが相手に配慮するつもりでも、言われたほうは「できたらでいいのかな」と思って優先順位を下げてしまう言葉です。
反対に、忙しい人だとスケジュールの優先順位を常に考えるため、いつまでにやらなくてはいけないのか明確にわからず対応を迷わせてしまう、迷惑なフレーズでもあります。
ですから、「今月末までにこの案件をお願いしたいのですが、難しい場合はご相談ください」と、はっきりと希望を伝えましょう。下手に相手に遠慮していると、「『できれば』とあったので、仕事が立て込んでいたため手をつけていません」と、平然と言い返してくる人もいます。
「なるべく早めに」も、「なるべくと言うなら、すぐやらなくてもいいんだな」と受け取られる可能性があります。「早めに」も、人によって受け取り方が違うあいまい表現で、トラブルのもとになりやすいので避けたほうがいいでしょう。
この場合は、「この案件を、今週、金曜日の17時までにお願いすることはできますか?」と具体的に聞くことです。そして、相手から「イエス」か「ノー」ではっきりと返事をもらうところまでやりとりすること。そうすれば、「そんなつもりじゃなかったのに」の行き違いがなくなり、スムーズに話が進むのです。
お願いした仕事の要望や期待を伝えるケース
×ちゃんとしっかり徹底的に
↓
○この作業はここまでやってください
細かい作業が必要なときに「徹底的にお願いします」という言い方をすることがあると思います。これも次の「ちょっと」と同じあいまい表現なので、注意が必要です。
わかりやすい例として、建設現場や工場でよく聞く話をしましょう。危険をともなう仕事に関わる人たちに対して、「徹底的にしっかりと安全確保してください」と指示する場合があります。「徹底的に」というのはとても強い言葉ですし、基本的な理解があればそれで問題ないように思いがちです。
ところが現場は、外注や下請けも多く、本来の業務内容を理解していない人もいます。その人たちが自分の感覚で「このぐらいでいいだろう」と自己判断して、ケガや事故を招いてしまうケースが多いのです。
こういう事態を避けるためには、「この作業はここまでやって安全確保をしてください」と、誰が聞いても理解できる具体的な数字などを入れて「細かい指示」をしなければいけません。
「徹底的に」と似た言葉で、「ちゃんと」「しっかり」「きちんと」も一般によく使われていますが、言ったほうと言われたほうの間で、「何をどこまでやるのか」を確認していないとトラブルにつながります。
自分の要望や期待は、1から10まで説明しなければわかってもらえない。そう思って面倒でもひとつひとつ相手に伝えることが、結果的に物事をスムーズに進めるコツなのです。
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
<本稿は『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑®』サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
【著者】
大野 萌子(おおの もえこ)
日本メンタルアップ支援機構 代表理事
法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで6万人以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。