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堀江貴文×深津貴之「ChatGPTに感情はあるの?」

2023年に一気に広がったChatGPT。生成AIが私たちの生活に入り込んでくる中、私たちは機械と対話し、その応答に感動したり、助けられたりしています。今や機械が人の心を映し出す時代。そんなAIに感情は存在するのでしょうか。

著者の堀江貴文さんを中心に、4人の識者(深津貴之さん、緒方憲太郎さん、佐藤航陽さん、茂木健一郎さん)の知見を踏まえ、まとめた『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』の第1章「結局、ChatGPTで仕事はどう変わるのか――クリエイター×エンジニア 深津貴之さんと考える」より一部抜粋、再構成してお届けします。

(※冒頭写真は左が堀江貴文さん、右が深津貴之さん)

『ChatGPT vs. 未来のない仕事をする人たち』 (サンマーク出版) 堀江貴文 
『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』

Q)人とAIの違いはどこにあると思いますか?
・AIに感情は理解できるか?
・人間は知的な活動をしていそうで、意外とそうでもない
・人とAIの違いは記憶の容量

AIも感情をアウトプットできる

堀江貴文:AIの議論で必ず出てくるのが、「AIには人間のような感情がない」という意見だ。私としては情緒面でも、AIは人間と見分けがつかなくなりつつあると思う。

 以前、ある会社の社長と、ChatGPTは感情を理解できるのか試してみたことがある。

 たとえば、「H3ロケットの打ち上げに失敗しました」といったニュースをChatGPTに入力したうえで、「この文章を読んでどんな気持ち?」と聞いてみる。そうすると、「悲しみ7・怒り3」といった具合に感情をアウトプットしてきたのだ。

 外側から感情を解釈できているように見えるのであれば、どうして「AIに感情はない」と言い切れるだろうか? ChatGPTとのやりとりを「人間同士のやりとり」として提示しても、誰も気づかないのではないだろうか。

 感情があるとされる人間だって、中身はAIと同じくブラックボックスに他ならない。

 自分は意識的に動いていると思っていても、ホルモンバランスが崩れれば、感情的になったり性格が変わったように見えることもある。あれは脳からパラメーターを変化させる指令が出ているようなものだ。

 実際人間がどこまで意識的に動いているかというと、微量のパラメーターをいじられながら、無意識の自動運転をしているようなことが多いのではないだろうか。

人間とChatGPTは何が違うのだろうか?

 私は若い頃、よくヒッチハイクをやっていたのだが、その時に知ったのは、長距離運転のトラックドライバーがほとんど寝ながら車を運転していたことだ。危ないと思って「起きてくださいよ」と言っても、彼らは意外と普通に運転できている。運転手に限らず、多くの人は様々な場面で無意識の自動運転を行なっているはずだ。

 他にも、女性同士が集まり、オチのない会話を次々に展開する光景を見たことがあるだろう。あれだってほとんど無意識に話しているはずだ。そばで見ていると、「オチがない会話が楽しいんですか?」と思ってしまうのだが、本人たちはお互いにツボを押し合っているような感覚でどうやら心地よいらしい。

 つまり、人間は高度で知的な活動をしているようでいて、意外と何も考えていなかったり、思考のいらない言葉のキャッチボールをしている時間のほうが多いのかもしれない。

 だとすれば、ChatGPTと何が違うだろうか。

人間とAIの違いは「記憶の容量」

深津貴之(インタラクションデザイナー、株式会社note CXO):堀江さんは「AIはすでに感情を持っているのではないか」と言っています。僕も、ChatGPTを使って感情を分析するマシーンを作ったことがありますが、感情っぽいものの推測まではしてくれるように思います。外から見て感情を解釈できていれば、内側が何であっても、観測上は人間と一緒という考え方もできます。

 現状、人間とAIの大きな違いは、いわば「短期記憶の容量と更新性」でしょう。その点が今のChatGPTの最大の弱点です。GPT-3.5までは、人間でいう記憶容量に制限がありました。

 データを分割する最小単位のことを「トークン」(ChatGPTでは言葉を記憶する最小単位)といいますが、そのトークンを十分に記憶しておくことができないため、受けとれる単語や句の数に限りがありました。

 しかし、バージョンがアップデートされるごとに、記憶できるトークン数も増えているので、将来的に本1冊分程度の記憶まで拡張されれば、いよいよほとんど人間と区別がつかなくなるかもしれません。

 今後、AIを支えるデータストレージと処理速度が改善されれば、AIは記憶容量を順調に伸ばしていき、振る舞いもどんどん人間に近づいていきます。もはや知性の面で人間と区別することはほとんどできなくなるでしょう。

 ChatGPTは、「続きを書く」マシーンですが、僕ら人間だって会話をしているときは、ChatGPTの仕組みとほとんど同じように、前の単語を聞いて反射的に会話を組み立てていたりします(「むかしむかし」と言われたら反射的に「あるところに」が出てくるように)。

 頭をフル回転させながら回答を捻り出すほうが稀で、ほとんどは反射で成り立っているのではないでしょうか。

 おそらく2~3年以内には、Slack(スラック)やメールのレスポンスにAIが入り込んでも、それに気づかない、という状況が生まれてくるかもしれません。

アバターの向こう側にいる相手が人かAIかわからなくなる

 いつの時代も新しいテクノロジーを使いこなすのは、凝り固まった価値観を持たない子どもたちです。外見では大人のフリをするVチューバーの中で、実は子どもが操縦していた、といった事例が今後出てきても不思議ではありません。

 すでにVチューバーの世界では、アバターの向こう側にいる人がどんな人かを問うてはいけないというマナーが確立しつつあるかと思います。そうなると、中身の人間は国外の人かもしれないし、老人や子どもかもしれない。さらにいえば、すでにAIが自律的に動いている可能性すらあります。

 アバターの中身がわからなくなれば、年齢や性別、その他あらゆる属性に関係のないコミュニケーションが当たり前になる社会に変わっていくかもしれません。

 今後、人格を持ったAIは私たちの生活の中でどんな存在になっていくでしょうか。僕としては身近に溶け込み、仲良しな存在として自然に受け入れるか、やはり受け入れることはできずにモノ扱いするか、その両極に分かれると見立てています。

AIは人間にとっての相棒になる

 昔、車がしゃべりかけてくる『ナイトライダー』というアメリカの特撮テレビドラマがありました。主人公は人工知能が搭載されたスーパーカーに乗り、難事件を解決していくというドラマです。いわば、スーパーカーに搭載されたAIが相棒というわけです。

 将来、AIがパーソナルアシスタント化して僕たちの生活に馴(な)染(じ)んでいくとすれば、そのドラマで描かれていた世界観に近くなる気がしています。このドラマに出てくる自動運転車ナイト2000に搭載されている人工知能K .I .T.T.は、あたかも感情を持った人間のようなコミュニケーションをとります。

 『ナイトライダー』が最初に公開されたのは1980年代ですが、現代の私たちの感覚からするとGoogle Homeをずっと肩に載せている感覚に近いかもしれません。

 ちなみに、AR(拡張現実)は一般的に現実の風景の中に3D映像やキャラクターなどのデジタルコンテンツを表示するユースケースが想定されがちですが、僕の見方は耳一択です。スマホ、会話AI、ChatGPTが組み合わされば、目に映像を投射するより、耳元で情報をささやかれたほうが、本来ARが目指していたゴールに到達できると思うのです。

 骨伝導マイクを介して即座に知りたいことや、聞きたいことを教えてもらえる。たとえば、動画の収録や撮影の時に台本の内容を耳元で教えてくれたり、「もっとこっちに目線をちょうだい」と指示する時にも使うことができます。

 収録以外でも「あの人誰だっけ?」と思った時に、すぐに名前を教えてくれて、しかも「こんな話題を振ると喜びますよ」と提案してくれる。普段のコミュニケーションでも役立ちます。

 こうしたAR2.0的な使い方は、技術的には今すぐにでもできるはずです。

 あえて障壁を挙げるなら、グーグルとアップルにスマートイヤホンを握られてしまっていることくらいです。VR(仮想現実)はゴーグルでいいと思うのですが、ARの解は耳だったのではないかというのが僕の見解です。

<本稿は『ChatGPT vs.未来のない仕事をする人たち』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

【著者】
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年10月29日、福岡県生まれ。 現在はロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙する等様々な分野で活動動する。 会員制オンラインサロン『堀江貴文イノベーション大学校(HIU)』では、1,000名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開している。
ビジネス系に特化した起業家向け会員制コミュニケーションサロン『neoHIU』でも会員とともに様々な事業を展開している。著書『不老不死の研究』(予防医療普及協会と共著。幻冬舎)、『信用2.0』(朝日新聞出版)、『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』(徳間書店)など。

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