疲れが抜けない人に知ってほしい「食事」の超重要度
たくさん寝ているはずなのに毎朝ベッドからなかなか出られない。何をしても不安と疲れが消えない――。こんな慢性疲労に悩んでいる人がいます。対処法はあるのでしょうか。
生物学的に”疲労”とは、エネルギーの供給と需要のバランスが崩れた状態のことを言います。そして、エネルギー不足の要因がいくつかある中で重要なのは「疲労はミトコンドリアを中心として発生する」ということです。そのメカニズムを理解しなければ、疲れに強くなる身体はつくれません。
「私たちの体が『疲れを感じる理由』を知っていますか」(2月29日配信)、「『だるい』と感じた時に私たちの体で起きていること」(3月11日配信)に続いて、新刊『回復人 体中の細胞が疲れにつよくなる』より一部抜粋、ミトコンドリアの秘密に迫ります。
ミトコンドリアの「過剰反応」を止める
ミトコンドリアは、炭鉱で危険を知らせるカナリアのような存在だ。あらゆる種類の脅威や危険、生物学的ストレス要因に、恐ろしく敏感に反応する。
その脅威には次のようなものがある。
・ウイルスや細菌による感染症
・重金属、殺虫剤、その他数千もの毒物
・体脂肪過多
・腸内毒素症やリーキーガット(腸管壁浸漏)などの腸の不調
・外傷や組織の損傷(たとえば日焼けなど)
・睡眠不足や概日リズム(体内時計)の乱れ
・心理的、感情的ストレスやトラウマ
・栄養不良
・がんばりすぎや運動のしすぎ
・不健康な食事
ではミトコンドリアは、これほど多岐にわたるさまざまなストレス要因をどうやって検知するのか?
それが比較的簡単にできるのは、ストレス要因が最終的に次の3種類の細胞への攻撃に集約されるからだ──つまり炎症、酸化ストレス、細胞破壊だ。
実質的にほぼすべてのストレス要因が、この3つの経路の1つ、あるいは複数を使って細胞にストレスを与えたり攻撃をしかけたりする。
たとえば、不健康な食事、微生物叢の質の低下、睡眠不足、過度の運動、体脂肪過多などはすべて、炎症の増加を引き起こす。炎症性サイトカイン(体内の炎症を誘発する分子)ができるとミトコンドリアは即座に反応し、それを「危険信号」と解釈する。
また酸化ストレスは基本的に抗酸化物質と反対の働きをもち、細胞内の酸化物質(フリーラジカル)が増えすぎて細胞に損傷を引き起こす状態をつくる。生物学的ストレス要因の大部分は、酸化ストレスを引き起こす。ミトコンドリアはこの酸化ストレスも即座に検知する。
また細胞は損傷を受けると、血流中にある種の化合物を放出する。これも「危険信号」として、ほかの細胞中にあるミトコンドリアに即座に検知される。こうした分子の存在こそが、「体がストレス下にある、または損傷を受けている」という信号を発し、ミトコンドリアを細胞危機反応へと導いて、エネルギーモードから防御モードへの切り替えを促すのだ。
不健康な食事であれ、睡眠不足や体脂肪過多であれ、概日リズムの乱れ、高血圧、心理的ストレス、その他どんな要因であれ、すべてのストレス要因は、体内で炎症性サイトカインや酸化ストレスや細胞損傷のマーカーを増やす。それを受けて、ミトコンドリアは防御モードへと働きを切り替え、エネルギー産生のボリュームを下げる。
これが疲労の根本にある原因だ。
多くのエネルギーを得るには、ミトコンドリアに危険信号を送っているストレス要因を減らし、脅威を取り除かなければならない。
目玉が飛び出るような高価な薬を飲んでもいいし、最先端の治療を受けることもできる。だが、あなたの環境や生活習慣のなかにある原因を取り除く、あるいは大幅に減らす努力に時間とエネルギーをつぎ込まなければ、どんな高額な治療をしたところでたいした効果は期待できないだろう。
口にするもので細胞にアプローチできる
幸いなことに、世間で最もよく見られる細胞危機反応の原因に対処するには、ちょっとした行動と口にする栄養に気をつけるだけでいい。
(本書では世間で最もよく見られる細胞危機反応の要因を詳しく説明し、エネルギーを最大限に引き出すのにすぐ役立つプランを詳しく紹介しています)
毎日あなたが口にする食べ物は、ミトコンドリアに養分を与えるか傷つけるかのどちらかだ。養分を与える食べ物はエネルギーレベルを上げ、傷つける食べ物は破壊工作をしろという信号を出す。正しい栄養プランがなければ、自分が望む人生を生きるのに必要なエネルギーをつくり出せない。
概日リズムの乱れと睡眠障害、体脂肪過多と筋肉量の低下、腸の健康の不調と腸内毒素症、インスリン抵抗性と血糖値調節異常、ニューロン機能不良、主要ホルモンと神経伝達物質のアンバランス、栄養素毒性と栄養不良──これらが細胞危機反応を引き起こす要因で、ミトコンドリアの健康およびエネルギーレベルと密接にかかわり合っている。
このひとつひとつに食事を通して働きかければ、生き生きとしたエネルギーを取り戻すことができる。
よくない信号は消すことができる。
脅威とストレス要因を減らし、もう周囲は安全だからエネルギー産生をもとに戻して細胞危機反応のスイッチをオフにしようと、ミトコンドリアに思わせればいいのだ。
あなたのミトコンドリアを強化し、増やしていこう。さらに、「ミトコンドリア発生」と呼ばれるプロセスを通じて、ミトコンドリアを1からつくり出していこう。
そうすれば、いつかまた脅威が襲ってきたときに──そのときはいずれ必ず訪れる──より強く、しなやかで、エネルギーあふれるミトコンドリアがあなたを守ってくれるはずだ。
<本稿は『回復人 体中の細胞が疲れにつよくなる』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
【著者】
アリ・ウィッテン Ari Whitten
ライフスタイルとサプリメントを総合的に考えるシステム「エナジー・ブループリント」の創始者。「エナジー・ブループリント」は、より健康的でエネルギーにあふれ、能力を発揮できる人の実現を目指すプログラムを通じて、200万人以上(さらに増加中)を助けてきた。著書にはベストセラー『The Ultimate Guide To Red Light Therapy』があり、世界中の自然医療の専門家が登場するポッドキャスト『エナジー・ブループリント・ポッドキャスト』のホストもつとめている。2020年には、自然医療と機能性医学の世界最大のコミュニティである「マインドシェア」が実施した投票で、健康インフルエンサーの第1位に選ばれた。25年以上にわたって、人間健康科学の研究に取り組んでいる。人間栄養学および機能性医学の修士号、運動生理学の学士号をもち、全米スポーツ医学アカデミーから矯正運動スペシャリストと運動能力強化スペシャリストの認定を受けており、さらに臨床心理学の博士号取得に向けたコースも修了している。アリの主催するポッドキャストやプログラム、サプリメントに関しては、https://theenergyblueprint.comを参照。
アレックス・リーフ Alex Leaf(理学修士)
栄養学の専門家および研究者、作家、学者。ウェスタン・ステイツ大学で人間栄養学および機能性医学を教えている。「エナジー・ブループリント」でコンテンツ・クリエイターおよびリサーチ・ライターとしても活躍している。ホームページはhttps://alexleaf.com
【訳者】
加藤輝美(かとう・てるみ)
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