親切な人ほど、脳の「幸せ指数」が高い理由 - ウェルネスライフ
誰かに優しくしたあとは、なんだか気分がよくなるものです。これはプラスの感情に変わっていく「ホルモン」が分泌されるからだと考えられます。
もしも、このホルモンを上手に分泌させて、「幸せを感じるチカラ」を増幅させていけるとしたら⁉︎
体と心をウェルネスにする『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』の著者・石村友見さんが、「親切」と「幸せ」の関係について教えてくださいました。
親切をした人の脳に起こっていること
誰かに親切にすると、なんだか気持ちがいい。じつはこれ、脳科学的にも実証されている事実です。さらに、親切にすることは単に気分が良くなるだけではなく、体にもいい影響を与えます。
相手を思いやると「脳の幸福度」が最高に高まることが、脳科学の研究で明らかになっていますし、血管が拡張して血圧が低下することもわかっています。さらに、親切はストレスレベルを下げるし、老化を遅らせることもあります。
私は20年ほどヨガを教える仕事をしています。そのため、様々な瞑想法を実践してきましたが、その中でも特に心があたたかくなるのが「慈悲の瞑想」です。
これは自分や他者を思い浮かべながら、慈悲のフレーズを唱える瞑想で、具体的にはまずはじめに「自分の幸せ」を願い、次に「大切な人たちの幸せ」を願います。こうして、自分と他者を一体化していきながら、分け隔てなく幸せを願っていく。
慈悲の瞑想は、仏教の「慈悲喜捨」(じひきしゃ)という考えがベースになっています。
これらを唱えることで、親切と思いやりの感覚が芽生え、幸福感に満たされていきます。
スタンフォード大学が驚いた研究結果
アメリカのスタンフォード大学の研究チームが、瞑想をしている修行僧たちの脳波を調査するためチベットの仏教寺院に赴いたときのことです。
脳の活動状態がリアルタイムにわかるfMRI(機能的核磁気共鳴映像)という方法を使って計測しようとしたところ、僧の脳に計測機器をつなげても、数値がきちんと読み取れませんでした。文字盤の針が動かなくなってしまったのです。
チームは大学に連絡をとり、計器が故障したため新しい部品を送ってほしいと伝えます。ところが、届いた新品の機器を使っても、脳波がきちんと測れない。そこで、研究者のひとりが自分の脳につなげてみると、正常に動いたのです。
機器は故障などしていませんでした。
瞑想中の僧の脳波は出力が高すぎて、針が振り切って最高値で動かなくなっていたのです。幸福度を高める「セロトニン」を分泌する部位の活性度が最大になっていました。
僧の脳から高い測定値が得られた原因は、脳内の様々な部位に密度の高いネットワークができているためだと考えられました。瞑想中、僧たちはとても幸せそうで、よく笑っていたことも注目されました。
『親切は脳に効く』の著者・デイヴィット・ハミルトン博士は、この現象を次のように書いています。
親切の「見返り」は期待しないこと
親切にすることは、相手の存在そのものを尊重する行為でもあります。あなたが相手の存在そのものを受け入れることで、相手も同じようにしてくれるかもしれません。
これを「返報性の原理」と言います。返報性の原理とは、相手から何かを受け取ったときに「お返しをしないと申し訳ない」という気持ちになる心理効果です。社会心理学者によって研究され、人間の社会的行動の根本的な動機のひとつとして認識されています。
ただし、あなた自身の幸福度を上げるためには、「見返り」は期待しないことが大切です。
「親切にしてあげたのに何も返してくれない」
こう考えてしまうと、親切にすることでかえってストレスがたまってしまいます。
こう意識して行っていると、あなたは自分自身のことを「やさしい人でありたい」 と思うようになるし、つねに誰かに「やさしくしたい」と感じるようになるでしょう。それを実行することで、相手に喜ばれ、その様子を見てあなたもうれしくなるでしょう。
自分が親切の「はじめの一滴」になって、その優しい波紋を広げていく。それができれば、あなた自身の心も、幸福感で満たされるようになるはずです。
*石村友見さんの著書『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』には、この記事に掲載された「親切」の話をはじめ、体や心をウェルネスにする方法が詳しく掲載されています。以下からご覧ください。