
君が得意で夢中になれることこそ富を得るカギだ
アメリカ・シリコンバレーで生きる伝説とされる、ナヴァル・ラヴィカント。エンジェル投資家とスタートアップを結ぶ「AngelList」創業者であり、彼の出現以後、全米のスタートアップ創業スピードは飛躍し、アメリカの法律までをも変えてしまいました。彼の語る成功論・人生論を世界中の挑戦者が信奉しています。
ナヴァルさんは富を生む「行動」と「思考」の特徴として、「今得意で夢中になれるものが君の『特殊知識』」「君らしさで君に勝てる人はいない」「100%のめり込めないなら『大差』で負ける」と説きます。
ナヴァルさんの投稿記事、ツイート、対談を集めた本『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』より一部抜粋、再構成してお届けします。

君が富を得たいなら
<テクノロジーは消費を民主化する一方、
生産を集約化する。
何かを世界一うまくやれる人が、
その生産を一手に引き受ける。>
君が社会の求めるものを生み出せば、社会は君に見返りを与えてくれる。そして、社会はそれを生み出す方法をまだ知らない。もし社会がそれを知っていれば、君は用済みになるからだ。君はとうにお払い箱になっているはずだ。
家や職場、それに街にあるほとんどのものは、かつてある時期に「テクノロジー」だった。
かつて石油は、J・D・ロックフェラーを富豪にしたテクノロジーだった。かつて自動車は、ヘンリー・フォードを富豪にしたテクノロジーだった。
つまりテクノロジーとは、コンピュータ科学者のアラン・ケイが言ったように、「まだ完全には機能していないもの」なんだ。いったん機能するようになれば、もうそれはテクノロジーではなくなる。
社会はいつでも新しいものを求めている。だから君が富を得たいなら、社会が求めているが手に入れる方法がまだ知られていないものの中で、君にとって自然にできること、君のスキルセットを使ってできること、君の能力を使ってできることを見つけなくてはならない。
次に、スケールする方法を考えよう。1つだけつくってもダメだ。誰もがそれを持てるように、数千、数十万、数百万、数億個つくらなくてはならない。
スティーヴ・ジョブズ(とチームだ、もちろん)は、社会がスマートフォンを欲しがると考えた。電話に数百の機能を加えた、使いやすいポケットコンピュータだ。そこでそれをつくる方法を考案し、次にそれをスケールする方法を考え出した。

今得意で夢中になれるものが君の「特殊知識」
営業スキルは、特殊知識の一種だね。
「生まれながらの営業マン」という人たちがいる。スタートアップやベンチャーキャピタルに行くと必ず見かけるのが、このタイプだ。生まれながらの営業マンに会うと、一目見ただけですごいとわかる。本当に得意なことをやっているんだ。これは特殊知識の一種だ。
それをどこかで学んだのは間違いないが、教室のような場で学んだんじゃない。子どもの頃校庭で学んだのかもしれないし、親と交渉するうちに学んだのかもしれない。DNAの遺伝的要素もあるかもしれない。
でも、営業スキルは自分で伸ばすこともできる。[影響力の理論で知られる]ロバート・チャルディーニの本を読んでもいいし、営業研修に行ってもいいし、戸別訪問をするという方法もある。過酷だが、手っ取り早く鍛えられる。営業スキルは間違いなく自分で伸ばせる。
特殊知識は教えることはできないが、
学ぶことはできる。
私の言う「特殊知識を見つける」というのは、君が子どもの頃や10代の頃に苦もなくやっていたことを考えてみようということだ。君自身はスキルだとも思っていなかったが、身近な人が気づいていたことだ。君の母親や幼なじみはきっと知っている。
特殊知識の例をいくつか挙げてみよう。
→営業スキル
→音楽の才能。どんな楽器でも演奏できる
→凝り性。物事を深く追求し、すぐに記憶する
→SF好き。膨大な知識をすばやく吸収する
→いろいろなゲームで遊んだ経験がある。ゲーム理論をよく理解している
→噂話や詮索が好き。腕利きのジャーナリストになれるかもしれない
特殊知識というのは、遺伝から来る君の独自の特性と、君の独自の生い立ち、それらに対する君の働きかけが、不思議な具合に組み合わさってできたものだ。君の個性や人となりにほとんど織り込まれているものと言っていい。それを磨いていこう。
君らしさで君に勝てる人はいない
人生の大半は、君を最も必要としてくれる人やものを探す旅だ。
たとえば、私は読書が好きで、テクノロジーが好きだ。すばやく学んで、すぐに飽きる。
だからもし私が1つの分野を20年かけて掘り下げるような仕事に就いていたら、成功できたはずがないね。
私が今やっているベンチャー投資では、新しいテクノロジーを非常にすばやく吸収することが求められる(新しいテクノロジーが次々と現れるから、飽きっぽいのもプラスに働くんだ)。私の特殊知識とスキルセットにぴったりの仕事だろう。
昔は科学者になりたかった。私が考えるヒエラルキーは、主に科学を中心としている。科学者は、人間の生産システムの頂点に位置すると思っている。本当の画期的発見や貢献をした科学者は、どんな人間集団よりも社会に大きな貢献をしている。
芸術や政治、工学、ビジネスをけっして低く見ているわけじゃないが、もしも科学がなかったら、人間は今も泥の中を這いずり回って、こん棒で闘い、火をおこそうとしているはずだ。
社会、産業、金融は、
テクノロジーの下流にあたる。
テクノロジー自体も科学の下流にあたる。
応用科学[基礎科学などから得られた
成果を使用して、実社会に役立てることを
めざす学問]こそが人類の原動力だ。
ゆえに、
世界で最も影響力のある人々は、
応用科学者だ。このことは、
今後ますます明らかになるだろう。
このように私の価値体系は、科学者を中心に回っている。
私も偉大な科学者になりたかった。でも、自分にしかできない得意なことは何だろう、自分が時間を費やしてきたことは何だろうと考えてみると、それは利益を生み出すことや、テクノロジーをいじること、人にものを売り込むことだった。人に説明することや、人と話すことだったんだ。
私には営業スキルがいくらかある。これも特殊知識の一種だね。お金儲けに関する分析的スキルがある。情報を吸収し、それに執着し、分析する能力がある──これらが私の特殊知識だ。
テクノロジーを利用して工夫するのも好きだ。そしてこのすべてが、私には遊び感覚でできるが、傍目には仕事をしているように見える。
100%のめり込めないなら「大差」で負ける
こういうことが苦手な人もいて、「どうしたらアイデアを簡潔に売り込めるようになりますか?」なんて聞かれることが多い。
私の答えはこうだ。今すでに得意でないのなら、夢中でないのなら、君には向いていないのかもしれない──君が本当にのめり込んでいるものに集中しよう。
私の本当の特殊知識を初めて指摘してくれたのは、母だった。母はキッチンから何の気なしに声をかけてきた。私が15、16歳のときだよ。
宇宙物理学者になりたいと友人に話しているのを聞いて、母はこう言ったんだ。「あら、あなたはビジネスの世界に入るのよ」
私は「何、ビジネスだって? 僕は宇宙物理学者になるんだ。母さんは何もわかっちゃいない」なんて思っていた。
でも母にはちゃんとわかっていた。
特殊知識を見つけるには、君の生まれつきの才能や、純粋な好奇心、情熱を追い求めたほうがずっといい。今人気の仕事の養成所に行ったり、投資家の注目する分野に進んだりしても、特殊知識は見つからない。
特殊知識は知識の最先端にあることが多い。今ようやく解明されつつある物事や、解明するのがとても難しい物事も、特殊知識になる。
でも、君がそれに100%のめり込んでいなければ、100%のめり込んでいる誰かに負ける。しかも、僅差で負けるのではなく、大差で負けてしまう。
それはなぜかというと、アイデアの領域には複利が大きく働き、レバレッジが大きく働くからだ。
<本稿は『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』(サンマーク出版)』から一部抜粋して再構成したものです>

【著者】
エリック・ジョーゲンソン(Eric Jorgenson)
プロダクト・ストラテジスト、作家。2011年に住宅所有者と信頼できるサービス提供業者をつなぐ会社、ザーリー(Zaarly)の創業チームに参画する。ビジネスブログ「Evergreen」を運営し、100万人を超える読者に、ためになる情報や楽しい情報を提供している。
エリックは完璧なサンドイッチをつくること──そして食べること──をめざしている。ミズーリ州カンザスシティに世界一すばらしい女性ジニーンと暮らしている。ツイッターで @EricJorgensonをフォローするか、ブログ https://www.ejorgenson.comで彼の新しいプロジェクトをチェックしてほしい。
【訳者】
櫻井 祐子(さくらい・ゆうこ)

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