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「朝が苦手な人」 は 「だらしない人」と評価されるのは間違い - ウェルネスライフ

朝起きた瞬間からバリバリ行動できる「朝型の人」と、午前中はまったく調子が上がらず、午後になってようやくやる気が出てくる「夜型の人」。世間はとかく「夜型の人」に厳しいものですが、じつはこれ、遺伝的に決まっていることが多いようです。

世界では、朝型の人も夜型の人も、それぞれにあった働き方が重視されつつあります。最新の情報を『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』の著者であり、長年ニューヨークで暮らしてこられた石村友見さんが教えてくださいました。

〈解説〉石村友見
株式会社 Life is Wellness代表

劇団四季で『ライオンキング』に出演後、単身ニューヨークに渡り、ブロードウェイ・ミュージカル『ミス・サイゴン』に出演。その後ヨガスタジオを設立し、レッスンからヨガ講師の育成まで尽力。2018年に発表した著書『ゼロトレ』はシリーズ120万部の記録的ヒットとなり、『金スマ』『世界一受けたい授業』など多くのテレビ番組に出演。

その後、ハーバード大学医学部「Health and Wellness」講義にて、ウェルネスの観点から世界最先端の栄養学をはじめ運動、コミュニケーションについて学ぶ。現在は、ニューヨークと東京を行き来する生活。11歳男児の母。


「早寝早起き」は本当に正しいのか

人間には生まれつき備わっている体内時計のパターンがあります。これを「クロノタイプ」といいます。

早起きが得意で午前中からスイッチが入る「朝型」の人もいれば、朝起きるのが大の苦手で活躍できるのは夕方からという「夜型」の人もいます。朝型を「ひばりタイプ」、夜型を「ふくろうタイプ」と言ったりもします。

これは多くの場合、遺伝子で決まるとされていて、そう簡単に変わるものではありません。 たとえば夜型の人は、両親のいずれかが同じように夜型のケースが多いものです。

朝型の人の中には「目覚ましがなくても自然と起きられる」という人もいるし、起きた直後からトップスピードで仕事や家事をこなせる人も多い。これによって社会的信用を得られることもあります。

一方、夜型の人は社会的に不当な扱いを受けることが多い。社会は朝型を中心に成り立っているからです。大抵の職場や学校は朝早く行かなければならないし、午前中にだるそうにしていれば「やる気がない」と思われてしまいます。

さらに、調子が上がってきた夜に会社に残っていると「残業するな」と言われる。夜型にとってはなかなか生きにくい社会です。

ちなみに兄弟や姉妹であっても、早起きで朝からチャキチャキ用意できる子と、夜ダラダラ起きていて朝が苦手な子に分かれることがよくあります。親は後者に対して「だらし ない」と𠮟りがちですが、クロノタイプが異なるだけの可能性もあります。

動物には「昼行性動物」もいれば、「夜行性動物」もいます。人間もどちらかに分かれるということかもしれません。

始業時間を遅くしたら頭が良くなった⁉︎

世界的に睡眠研究が進む中で、子供たちを迎える「学校」にも新たな動きが出てきています。私の歳の息子が通うニューヨーク州では、最近、始業時間を30分ほど遅くした公立学校があります。

このような「Start School Later」(始業時間を遅くする)という動きが アメリカの各地で起き始めています。理由は、子供たちの睡眠時間を確保するためです。

ミネソタ州のイーダイナでは、「早寝早起き習慣」というそれまでの常識を覆し、生物学的に妥当な時間に登校させる機運が高まっています。 ティーンエイジャーの始業時間を午前7時25分から8時30分に遅らせたことで、子供たちはそれまでに比べて「43分間」多く睡眠をとることができるようになりました。すると、 驚くべきことが起こります。

成績優秀者のSAT(大学進学適性試験 / Scholastic Assessment Test)の口頭試問 (面接官からの質問に口頭で答えていく試験)の平均点が605点から156ポイントアップして761点に上昇、数学のスコアは683点から56ポイントアップして739点に上昇したのです。

スコアが上がった要因はひとつに限定できるわけではないものの、睡眠時間が長くなったことによるこの変化は注目に値します。スコアが上がることで、進学校も変わり、その後の人生まで大きく変わる可能性があります。

日本の5000人以上の小学生を追跡調査した研究では、睡眠時間が長い子供ほど全般的に成績が良く、IQが高いという結果が出ました。睡眠時間が長い子供は短い子供に比べて40〜50分長く眠っていたそうです。

「Start School Later」の動きは日本でも広まりつつあります。

Googleやナイキの「Start Work Later」

Google やナイキなどの世界的企業はいち早く「フレックス制」を導入しました。社員の働きやすさやミーティング時の時差などを考慮に入れた制度ですが、理由はそれだけではありません。

朝型の社員もいれば、夜型の社員もいるからです。これによって社員は自分のクロノタイプに合った時間をチョイスし、仕事をすることができます。

ティーンエイジャーを迎える学校が「Start School Later」の動きを活発にしているのと同じように、フレックス制は「Start Work Later」でもあります。 これによって夜型の人は、社会的に不当な扱いを受けなくて済むし、自らを「朝が弱いダメな人間」と裁く必要がなくなります。これは心理的ストレスを軽くする意味でも、とても大切なことです。

人類は昔、洞窟で添い寝して暮らしていました。皆が同時に8時間眠ってしまったら、外敵に襲われたり食べられたりするリスクが増えてしまいます。そこで、人によって眠る時間を「ずらす」ことで自分たちの身を守るようにしました。これが、朝型と夜型の遺伝子に分 かれた起源だという説があります。

自分のクロノタイプは、インターネットで「クロノタイプ 診断」などで検索すると調べることができます。夜型の人はタイプを知ることで自らを責める必要がなくなるし、 社会がそれに対して寛容であれば皆が幸せに暮らせるように思います。


*石村友見さんの著書『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』には、この記事に掲載された「睡眠」の話をはじめ、体と心をウェルネスにする詳しい情報が収録されています。以下からご覧ください。