売れる営業マンは「自分がよいと信じたモノ」を売る
売れる営業に必要な条件は何でしょうか?
ロングセラー『営業マンは「お願い」するな!』の著者、加賀田晃さんは
営業とは、
自分がよいと信じた物を
相手のために
断りきれない状態にして
売ってあげる
誘導の芸術である。
と説きます。今回はこのうち「自分がよいと信じた物を」について解説します。
自信のない商品がなんで売れるのか
「自分が売ろうとする〝商品〟に自信はあるか?」
上のように、セミナーのときによく質問をします。
ほとんどの人は一瞬とまどいを見せる。挙手を求めると、「ある」が1割、「ない」が2割、「どちらともいえない」が七割となる。
私は言う「あほう!」と。
自信のない商品がなんで売れるのか、あるいは、いいとも悪いとも判断のつかない商品をどう説明するのか——。
こんなことがありました。平成3年といえば日本史に残るバブル崩壊のころ。日本は大不況となりました。真っ先に倒産したのはこの世の春をもっとも謳おう歌かしていたハウスメーカーであり、それを建てたゼネコン。その年から売れ残り住宅、マンションの販売依頼が来るわ、来るわ——。
1件目からご紹介しましょう。
それは西日本最大といわれた敷地3万坪の会社でした。銀行さんからのおすすめで、それじゃあ、ということではじめて建てたマンションがバブルの崩壊により3か月で1戸も売れず、顧問の私に「ぜひ指導を……」ということになったのです。
さっそく販売事務所に出向いたところ、販売を委託していた販売代理会社の部長が、私の名刺をしまう間もなくのたもうた——。
マイナスをマイナスと見るマイナス思考のせい
「ここは売れません。前の道路が狭いです。隣がパン工場です。突き当たりは川です。駅に行くのに信号はありますが、横断歩道を渡らないかんので危ないです。はじめてのマンションですので知名度がありません。バブルが弾けてまわりはみんな値下げしたのに、この会社の社長は素人で、私たちがいくら言っても下げません。だから売れません」
私はこの部長に表彰状をあげたい。
あなたは、〝売れない口実ばかりを探す〟マイナス思考の世界チャンピオンです、と——。
私は部長の言葉を聞き流して、まずは自分で売ってみることにしました。生まれてはじめてマンションを売ることに胸が高鳴りました。商品のことも頭金のことも金利の計算方法も何もわからないが、そんなことは屁へでもない。相手も知らないのだ——。
結局、興味本位の冷やかし客も含めて土、日で10組接客し、即日10組から申し込み金をいただき、その6日後までにすべての契約を終えました。
こんな売りやすいものが、なぜ3か月に1戸も売れないのか。
それは営業力云々の前に、この人たちのマイナスをマイナスと見るマイナス思考のせいでしょう。
この地球では、世界の人口すべてが総欠点だらけの人間であり、その不完全な人間が製造した商品は、満点の商品は一品もなく、そういう意味ではこれまた総欠点だらけの商品です。
完全無欠の商品は絶対に存在しないという事実、それを現実のものとして受け入れ、欠点はあったにしてもそれをはるかに超える長所の価値に心から共感できるのであれば、考えようではその商品はその人にとって日本一自信のもてる商品となる——。
どちらにしても、変わらないものや決まったものに対して、そのマイナスをあげつらうことは何の益にも解決にもなりません。
もしも、そういう場合にマイナスは歯牙にもかけずプラスだけを愛することができたら、人生が、営業がどんなに楽しくなるか、あなたに想像いただけるだろうか——。
マイナスを口にせずプラスだけを心から愛する
2例目をご紹介しましょう。
それは福岡市最西端にあり、後方は見渡すかぎりの山、前方は海、買い物の便はなしという物件で、売り出し後1年間経過するも、売れたのはたった5戸で、とうとう販売も工事も断念し、放置されたままのマンションでした。
そこの社員が、私を案内しながらひとり言のようにつぶやく「なんでこんなところに建てたんでしょうかね……」。
私はこのマンションをたてつづけに27戸売り、サラリーマンの平均年収10年分に匹敵する報酬をいただきました。
買い物の便が悪いというマイナスを除けば、駅まで遠いのも足腰の鍛錬になるし、通勤に時間がかかるというのも、またとない読書のチャンスとなるし、あとは自然の宝庫で眺めはいい、空気はきれい、田んぼや小川があり、マイナスイオンに包まれ仕事の疲れもたちまち癒いやされ、かつ子どもの教育のためにも申し分がない。
私は来場者全員に聞いた「自然はお好きですか?」。全員が答えた「はい!」と。
ある大手の課長さんは部下を2人も紹介してくれ、ポルシェで乗りつけた弁護士さんは、自分たちの分と、その女性の母親の分まで契約しました。
もう一度あなたにいいたい。変えられないものと決まったもの、もしくは自分で決めたものについてはマイナス(寒いとか、暑いとか、上司や会社が気に入らんとか、商品がどうとか)はいっさい口にせず、プラス(いいところ)だけを心から愛するようになさいませんか?
そうすれば、少年時代のように何をするのも楽しく、すべてのものに興味と意欲がもてて、もちろん商品も果てしなく売れつづけるでしょう——。
<本稿は『営業マンは「お願い」するな!』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
加賀田 晃(かがた・あきら)
営業セミナー講師