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【ドライアイ】スマホを見すぎる人ほど要注意な訳

もはやスマホなしの生活を送れなくなっているという人は少なくありませんが、スマホの見すぎが目に与える影響をご存じでしょうか。

慶應義塾大学医学部眼科学教室特任准教授の綾木雅彦(あやき・まさひこ)さんは、著書『視力防衛生活』の中で、まばたきがきちんとできてないことで、現代人の涙の量が減っていることの弊害を指摘しています。

現代人の目の表面がデコボコになっている現実や、目の不調の典型例である「ドライアイ」、見える力を高める「完全まばたき」など、目の大事なことについて解説します。

『視力防衛生活』(サンマーク出版) 綾木雅彦
『視力防衛生活』

現代人は「まばたき不足」

 じつは現代人は、まばたきの回数が減って涙が不十分になりやすい状況に置かれています。

 この状況を引き起こしているのが「ストレス」、そして「スクリーン(デジタル画面)」の凝視です。

 ストレスがかかって緊張しているときは、自律神経のうち交感神経が優位になり、目が見開き、まばたきの回数が不十分になります。また、涙の分泌量もおのずと減る仕組みになっています。

 加えて、画面を凝視するなど集中してものを見ると、まばたきが減ります。あなたもスマホを見ているとき、目が乾いた感覚を覚えたことはありませんか?

 スマホはつい見すぎてしまうもの。結果、まばたきが減り、目からうるおいがなくなっているのです。

 角膜は「黒目を覆う膜」で、透明な組織。視覚の情報となる光を目に取り入れる最初の部位なので、とても大事な目の入り口です。

 そんな角膜の表面は、基礎分泌される涙でつねに覆われ、守られています。

涙の量が減ると「目がボコボコ」に

 私たちはこの涙のベールを通して、ものを見ています。目の表面が適切にうるおっていることで、光がうまい具合に屈折してものがよく見える仕組みです。

 ですが、涙の量が減ると、角膜上にあるごみをうまく取り除けなかったり、角膜表面からなめらかさが失われてデコボコになったりしてしまいます。

 すると、光をうまく取り込めず、鮮明に見えなくなります。

 目が乾いたり涙の分泌量が減ったりする原因でよくあるのは、まばたきの減少や、エアコンの風にあたりすぎたりすること。

 そんな目の不調の典型例が「ドライアイ」です。ドライアイがあると、目のピント調節能力が落ち、老眼の進行が早まりやすくなります。

「ドライアイ? 自分は関係ない」と思ったならストップ!

 目の乾きや痛み、見えにくさなどを自覚していなくても、ドライアイの可能性があります。「隠れドライアイ」 です。

「(隠れ)ドライアイ」と診断すると、「軽い症状でよかった」と安堵する患者さんが多いのですが、じつはドライアイはさまざまな目の問題を引き起こす〝トラブルの温床〟。軽く見ると危険な眼病です。

「オフィスワーカーの6割がドライアイ」との試算も

 日本に2000万人、世界に10億人以上いるとされる身近な目の病気で、オフィスワーカーの約6割がドライアイとの試算も。眼痛や頭痛など目に近い部位の症状のほか、肩こり、腰痛、全身の痛覚をつかさどる神経や末梢神経の障害、さらには睡眠障害やうつまで併発することがあります。

「ドライアイの女性は老眼になりやすい」 ことも、私の研究で判明しました。

 目を覆う涙の大切さが、おわかりいただけたのではないでしょうか。

 私自身、「デコボコな目」について、2015年から患者さんのデータを取り、研究を続けてきました。

 2015年は全体の約5割、2022年は全体の約7割の人の目がデコボコになっていることが判明。つまり多くの人がまばたき不十分などの原因で、自分の「長く・よく視る力」を発揮できていない可能性があります。

 実際、私の診察室には「文字が読みづらくなった」「視力が下がった」という患者さんがよく来られます。

 でも、『視力防衛生活』が提唱する視力防衛術の一つ、「完全まばたき」をそれから1か月ほどしてもらうと、「よく見えるようになった」、そう喜んでくださる患者さんが多くいらっしゃいます。

「目をいつもどおりに使いながら、うまく休ませ、機能を回復させられる」

 それがまばたきの特徴です。

まばたきがちゃんとできている人は少数

「完全まばたき」はいつもの暮らしのなかで、視力防衛と回復がかなう方法です。

「いまさら目はよくなる?」とお思いかもしれません。ここで、視力防衛効果を一瞬で体感してみましょう。 

 上まぶたを完全に下ろしきって、下まぶたとしっかり1秒、くっつけてみてください。そして、目をあけてみてください。

 手元や遠くが、くっきり見えたのではないでしょうか?

 この見え方の変化こそ、「完全まばたき」 の効果。正しいまばたきにより、目の表面が涙でしっかり整ったため、視界が明るく鮮明になり、「見える力」が高まったわけです。

 どんなに高性能の望遠鏡でも、レンズに傷や曇りがあると、視界は暗く、見えにくいですよね。それと同じ理屈です。

「まばたきしているけれど、私は目がわるい」

 じつは、まばたきをきちんとできている人は少数。「8割しかまぶたがとじていない人」「まばたきが速すぎる人」をよく見かけます。

上まぶたと下まぶたが、バチリとくっついて初めて、視力向上・防衛効果が期待できる「完全まばたき」となるのです。

 完全まばたきのコツは、『視力防衛生活』で詳しく解説しています。そのほか近視、ドライアイ、眼精疲労、老眼、緑内障まで、目の不調を日々のなかで予防・改善する方法をお伝えしています。

<本稿は『視力防衛生活』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>


【著者】
綾木雅彦(あやき・まさひこ)/慶應義塾大学医学部眼科学教室特任准教授、おおたけ眼科院長
1982年、慶應義塾大学医学部卒業。1994~1997年、ハーバード大学に留学(医学部研究フェロー)。昭和大学医学部眼科准教授、国立病院機構埼玉病院眼科医長、国際医療福祉大学三田病院眼科准教授などを歴任。慶應義塾大学眼科学教室の研究者として世界最先端の知見を深めながら、「患者さん第一主義」を貫き、地域に高度な医療を提供。後進の指導にあたるほか、日本抗加齢医学会評議員などの要職も数多く務める。「ブルーライト研究の第一人者」としても知られ、とくに子ども世代の視力を守る啓蒙活動に力を入れている。シニア世代からの信頼も厚く、その悩みに伴走した経験を、学術論文(英語約100、日本語約200)に結実させている。最近は老眼とドライアイについての論文も多数執筆している。

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