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日本人に知ってほしい「鉛筆を使わない」文化の真意

 海外では、小学生が鉛筆ではなく、ボールペンを使うという国も少なくありません。

 一方、日本の小学校では鉛筆(シャープペンシル)と消しゴムが一般的に使われています。

 鉛筆やシャーペンなら何かを書き損じても、間違えても消しゴムで消して物理的には何度でも書き直せる――。小さなことと片づけられるかもしれませんが、これが日本人の間に「間違いは恥」「ミスや失敗は許されない」という空気を醸成している可能性があるとしたら?

 日本人は家事や仕事を頑張りすぎ? 教育は子どもに厳しすぎ? 「日本において常識とは考えられていないこと」が、実は「世界の常識となっていること」は意外と少なくありません。48例に及ぶ世界のシン常識をまとめた『シン・スタンダード』よりお届けします。

『シン・スタンダード』(サンマーク出版) 谷口たかひさ
『シン・スタンダード』

海外の学校では鉛筆は使わない

 キングス・カレッジ・ロンドンで客員教授を務める、認知科学者のガイ・クラクストン氏はこう言った。

〝消しゴムは「悪魔の道具」だ。
 消しゴムは「間違いは恥」の文化を作る。
 間違いを受け入れたほうがいい。
 実社会では、間違いは起きるのだから。〟

 NAPE(全国初等教育協会)で広報担当を務めるジョン・コー氏はその見解について、こう話している。

〝消しゴムを完全に禁止というのは
厳しすぎるかもしれない。

 ただ、時と場合によっては、
消しゴムを使わないほうがいいこともある。

 例えば、算数の授業では、
子どものプロセスを見ることが大切だ。
子どもが「正しい答え」だけに
固執しすぎるようにはなっては欲しくない。

 どこでどう間違えたかを含め、
どうやってその答えにたどり着いたかという、
プロセスも知りたい。〟

 実際、子どもがどこでどう間違えたかは、とても重要な学びの要素であり、教える側にとってもそれを知ることは、よりよい教育のために必要不可欠だという。

 またクラクストン氏は、子どもに間違いを受け入れさせることは、間違いが許される実社会に適応するために重要だとも。

 そういう意味で、消しゴムで消すことができないボールペンなのだ。

 ちなみに、シェフィールド大学の児童心理学の専門家であるアントニー・ウィリアムス博士も、こう話している。

〝子どもにとって、
自分の間違いを受け入れるということは、
とても大きな成長の一歩です。

 そしてそれは、大人も同じです。〟

「消しゴムひとつ(鉛筆1本)でそこまで……」

 そう思われるかもしれないが、「一事が万事」という言葉があるのも揺るぎない事実。

 何より、子どものことを考えて、大人が常識にとらわれず、常によりよい教育を検討している姿勢が本当に素晴らしいなと思う。

 今の日本は、間違いや失敗に対して、厳しさが過ぎるように感じる。

 たったひとつの失言やたったひとつのミスで、総叩きに合うのが今の世の中だから。

 そんなことから、みんながリスクを怖れ、変化や新しい挑戦を、あからさまに嫌っているような気がする。

 いわゆる波風のたたない無難な選択をし続けているのだ。

 そんなことでは、ますます「何もしない」……いわゆる「ゼロリスク思考」にこの国は突き進んでいくだろう。

 そんなの、何も面白くないし、そこにイノベーションはない。

 だいたいの失敗や間違いは、笑ってゆるす。

 そんな社会を作りたいし、そんな人間でありたいものだ。

<本稿は『シン・スタンダード』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock 


【著者】
谷口たかひさ(たにぐち・たかひさ)
1988年大阪生まれ。日本の大学在学中に留学費用の工面のため10代ながらインターネットビジネス会社を起業し、イギリスのマンチェスター大学へ留学。卒業後、チェーンストアのエリアマネージャー、アフリカのギニアでの学校設立支援、メガバンク/M&A/メディアのコンサルタント、グローバルIT企業の取締役を経験。その後、社会の課題解決を志してドイツへ移住し、起業。2019年、ドイツで気候危機の深刻さを目の当たりにし、「みんなが知れば必ず変わる」をモットーに、気候危機の発信や日本では報道されない世界情勢にまつわる講演を開始。世界中から講演に呼ばれるようになり、日本では1年で515回、全都道府県での講演を達成。2021年には国連総会の司会とスピーチも務めた。趣味は旅と勉強で、訪れた国は約80ヵ国。保有資格は国際資格や国家資格を含め30個以上。

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