日本人がパワーでMLB頂点に。名門ドジャース・シーズン最多本塁打の大谷翔平に元記録保持者が送った意外な賛辞
サンマーク出版は『L.A TIMES』公式・独占本『OHTANI‘S JOURNEY 大谷翔平 世界一への全軌跡』(L.A. Times編/児島修訳)を12月24日に全国の書店やネット書店で日米同時発売しました。
12月3日よりネット書店にて予約を開始した本書は、国内の野球ファンを中心に反響が大きく、楽天ブックスでは売上ランキング1位を獲得。日本テレビ系で12月24日に放送された『情報ライブ ミヤネ屋』(13:55〜15:50、読売テレビ制作)では、同時発売となったアメリカ版『OHTANI’S JOURNEY』とともに、アメリカ版には未収録だった『L.A. TIMES』2024年11月21日付記事「大谷翔平が満票で3度目MVP!ドジャース移籍後、初受賞」まで収録した本書日本版が紹介されました。
日本ではあまり大きく報道されていませんが、大偉業である50-50達成の裏側で、ひそかに破られていたドジャースの球団記録があります。L.A. Times記者が追ったその裏側。本書より一部をお届けします。
(マイク・ディジョヴァンナ 2024年9月19日)
ショーン・グリーンが大学1年生の末娘を車でスタンフォード大学に送り届け、オレンジ・カウンティに帰る途中、携帯電話に大量のメールが届き始めた。
「着信音が鳴りっぱなしだったよ」と元ドジャースの強打者は言った。「何が起きたかは想像できた」
2001年、グリーンは49本塁打というドジャースの球団記録を樹立した。木曜の午後、彼の車が南カリフォルニア盆地に近づいたとき、大谷翔平が右中間への2点ホームランを放ってこの記録に並んだ。ローンデポ・パークでのマイアミ・マーリンズ戦、ドジャースが20対4で勝利してプレーオフ進出を決めることになる試合の6回表のことだった。
グリーンがニューポートビーチにある自宅のガレージに到着するまでに、大谷は7回にレフトへの2点ホームランとなる50号を放ち記録更新、9回にはライトスタンド上段に届く440フィート(約134.1メートル)の特大スリーランとなる51号を放っていた。
大谷は50盗塁と51盗塁を記録し、メジャーリーグ史上初めて1シーズンで50本塁打、50盗塁を達成した選手となったこの試合で、6安打、3本塁打、2二塁打、10打点、17塁打という大車輪の活躍を見せた。
大谷が記録を破るのをリアルタイムで目撃できなかった51歳のグリーンは、帰宅後、試合のハイライトを見るためにテレビをつけた。
「記録を破られるなら、偉大な選手に破られたいものさ。そして、彼は史上最高の選手だ」グリーンは、肘の手術から回復する間、打撃に専念している二刀流のスター、大谷について語った。「このような歴史に残る形で記録が破られたのも、素晴らしいことだと思う」
「50-50は、ドジャースという枠を超えた、メジャーリーグ史上前例のない偉業だ。彼がこれまでのキャリアを通じてどれほど素晴らしい成績を残してきたかは、形容する言葉がないほどだ。特に、ドジャース移籍後の最初のシーズン、大きなプレッシャーがかかる中で彼がやってのけたことは、まさに驚異的だ」
そう語るグリーン自身、大谷と同じく、圧倒的な強さを体現した、数少ないメジャーリーガーだ。
2002年5月23日ミラー・パークでのミルウォーキー・ブルワーズ戦で、左打者のグリーンは、4本塁打、1二塁打、1単打を放ち、メジャーリーグ記録となる19塁打を達成。7打点を挙げて、ドジャースを16対3の大勝に導いた。
大谷の1回の二塁打は右中間フェンスを直撃したが、打球があと数メートル高かったら、4本塁打、19塁打のグリーンの成績に並んでいたことになる。
「とんでもない試合だった」とグリーンは言った。「だが、彼なら驚かないよ」
2002年に選手としてドジャースのセンターを守っていたデーブ・ロバーツ監督は、この日の大谷のような活躍に前例はあるか尋ねられ、グリーンが怪物のように大暴れしたあのゲームのことを思い出した。
「ショーン・グリーンが6打数6安打、4本塁打を打ったのを見たよ」とロバーツは語った。「でも、(大谷によって)成し遂げられた偉業の大きさを目の当たりにしてしまうとね。それに皮肉にも、(大谷は)このゲームでショーンのドジャース記録を破っている。ショーンには申し訳ないが、やはり今日の彼のような活躍には前例がなかったと思う」
つまり、あの日のグリーンより、今日の大谷のほうが良かったのだろうか?
「それは他の誰かに聞いてほしい」グリーンは言う。「そういうことを議論するスポーツ番組の人たちにうってつけの質問だよ。私が自分でとやかく言うことじゃない」
グリーンは、エンゼルスで2021年に46本、2023年に44本のホームランを放ち、各シーズンでアメリカン・リーグのMVPに輝いた大谷に自身の本塁打記録が破られたことに、驚いていなかった。
「一番驚いたのは盗塁だよ。私は35盗塁した年もあったが(1998年にトロント・ブルージェイズで)、本当に大変だった。私は大谷と同じ身長(6フィート4インチ/約193センチ)だが、普通、盗塁が得意なのは、リッキー・ヘンダーソンやビンス・コールマン、モーリー・ウィルスのように、小柄で素早く第一歩を踏み出せる選手だ。大谷のような大柄な選手が盗塁を50回以上も試みるのは、体に大きな負担がかかるものなんだ。走った直後にボールがファウルになった回数も含めれば、それ以上走ったことになる。盗塁をするには毎日念入りなランニング練習やウォームアップが必要で、シーズン全体を通してそれを続けると体に相当の負担になる」
大谷はこの試合終了時点で打率.294、OPS1.005、二塁打34本、三塁打7本、打点120、得点123、本塁打51本、盗塁51という成績だったが、グリーンが同じくらい注目すべき数字だと考えているのは、4回しか盗塁を失敗していないことだ。
「これはすごいことだよ」とグリーンは言う。「大谷は相手バッテリーの意表をついて走っているわけじゃない。50-50を狙っているのは誰もが知っている。だから当然、彼が塁に出れば盗塁を警戒されるし、打席に立てばホームランを警戒される。相手チームがそんなふうに神経質に対策を講じてくる中で、これだけの偉業を達成できるのは、信じられないことだ」
大谷は8月23日のタンパベイ・レイズ戦でサヨナラ満塁ホームランを放ち、史上最速で「40-40」に到達した。そして、同じように劇的な形で「50-50」に到達した。金曜日の時点で、残すレギュラーシーズンは「9試合」。
「彼は、誰もが信じられないことをやっている。もしかしたら、“60-60”を達成するかもしれない」とグリーンは語った。「絶対に見逃せないね」
<本稿は『OHTANI‘S JOURNEY 大谷翔平 世界一への全軌跡』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Los Angeles Times
アメリカ最大規模の日刊紙。1881年創刊。
142年以上にわたって地元南カリフォルニア地域を中心に取材を行い、政治や社会、文化、スポーツなどの記事を精力的に報道。優れたジャーナリズムに対して贈られるアメリカで最も権威のある「ピューリッツァー賞」を何度も受賞している。
ウェブサイト(latimes.com)のユニーク訪問者数月間4000万人以上、日曜版の読者数160万人、紙版・電子版の週間読者数合計440万人を誇る。
大谷翔平の取材にはロサンゼルス・エンゼルスへの移籍前から熱心に取り組み、2024年のロサンゼルス・ドジャースでの大活躍に至るまで、地元紙ならではの肉薄した視点で精緻に報道し続けてきた。
本書は同紙の長年にわたる大谷ウォッチングの成果を、数々の秘蔵写真を含む印象的な写真と読み応えたっぷりの記事で結実させた、集大成となる1冊。
児島 修(こじま・おさむ)
英日翻訳者。訳書に『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ダイヤモンド社)、『ペドロ・マルティネス自伝』『ダン・カーター自伝 ―オールブラックス伝説の10番―』『ジェンソン・バトン自伝 ライフ・トゥ・ザ・リミット』(東洋館出版社)、『ウルトラランナー: 限界に挑む挑戦者たち』(青土社)など。