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「金利」を実はわかってない人に知ってほしい超基本

 日本銀行は今年3月、金融緩和の一つとして進めてきた「マイナス金利」政策を解除して、長期金利を抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)を撤廃しました。

 というニュースを見て、「いったいなんのことやら?」と思った人も少なくないでしょう。

 それもマイナス金利やイールドカーブの話の前に、そもそも「金利」について、実はわかっていないという人も少なからずいるのではないでしょうか。

 ベストセラー『すみません、金利ってなんですか?』よりお届けします。

『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版) 小林義崇
『すみません、金利ってなんですか?』

金利は「良い」「悪い」どっち?

梅田直希 サンマーク出版編集部(以下、梅田):ズバリ「金利」について教えてください。これ、本当によく聞くんですけれど、いいヤツなんですか? それとも悪いヤツなんですか? いまいちわからずどっちなんですか?

小林義崇(以下、小林):そ、そう来ましたか(笑)。えっとですね、金利にはいいも悪いもありません。

梅田:って、みんな言うんですよ! でも、その割にはよく「金利がいい」とか「悪い」とかって言ってません?

小林:では、「立場によって、いい金利もあれば悪い金利もある」と言い換えてみましょうか。いい金利か悪い金利かというのは、梅田さんが何をするのかによって変わります。

梅田:僕次第で、金利の意味合いが変わってくるんですか?

小林:たとえば「金利=利子」と言い換えてみると、どうですか。借金を取り立てる金融系のドラマなどをイメージしてみてください。まさにこのとき、立場によって、いい金利か悪い金利かが決まります。では、梅田さんがお金を借りる場合、いい金利というと、高い金利か低い金利か、どちらだと思いますか?

梅田:えっと、僕が借りる立場だったら、利子があまりつかないほうがいいということは「低い金利」がいい金利?

小林:正解。借りるほうからすれば、金利は低ければ低いほどいい金利です。金利が低ければ、その分返すお金は少なくなりますからね。反対に、貸すほうからすれば、金利が低いと返ってくる額が小さくなるので「低い金利=悪い金利」となります。

梅田:たしかに、借りる側と貸す側で、金利に対するとらえ方は真逆になりますね。

小林:では、梅田さんがお金を貸す場合。いい金利というと、高い金利か低い金利、どちらですか?

梅田:僕が貸す立場だったら、金利が多くついたほうが返してもらう金額が増えるということは「高い金利」?

小林:その通り。このような二面性をもつことこそ金利の本質なんです。

*本書では原則「利子=払うもの」「利息=もらうもの」として記載しました

「預金」すると金利が上乗せされる

梅田:でも、僕は金利をつけてお金を貸したことなんてないですし、これからもきっと起こらないですよ。人に貸せるほどのお金持ちでもないし。

小林:いえ、梅田さんは今までもお金を貸してきたはずですよ。だって、1つくらい銀行に口座をもっていて、そこにお金を預けているでしょう? それって、銀行に「貸している」ことと同じ。だって、銀行に預けたお金には、必ず金利をつけてもらっているんですから。

梅田:えっ、金利、ついていたんですか!

小林:はい。じゃないと銀行に自分のお金を預けるメリットはありませんよね。

梅田:そ、そうなんですかね?

小林:まあ、預けたほうが安全、という理由もありますが。

梅田:(それしかないと思ってた)

小林:とにかくまとめると、梅田さんが銀行からお金を借りるときは金利が低いほうがいい。梅田さんが銀行にお金を貸す、つまり預けるときは金利が高いほうがいいということになります。

ただし、これはあくまで理論上の話。最近は事情が変わってきています。「銀行に預けるだけで得」できたのは過去の話。今は、銀行に預けたときにつけてもらえる金利が安くなりすぎているんです。

梅田:安くなりすぎているって、いったいどれくらいですか? ついていることすら知らなかったのに聞くのもあれですが

小林:同じ銀行であっても、私たちが「借りるときの金利」と「預けるときの金利」は、ケタがまったく違うんですよ。例としてわかりやすい数字を挙げてみますね。

梅田:お願いします。

小林:まず、私たちが銀行から借りるときの金利として、「住宅ローンの金利」を見てみましょう。住宅ローンとは、住宅を買うために銀行からお金を借りるシステムのことだと思ってください。

たとえば、みずほ銀行で変動金利方式の住宅ローンを2024年5月に借りた場合、1年間につく金利は0.375~0.725%。実際にどの金利になるかは自己資金などによって変わりますが、ひとまず1%と考えておきましょうか。ちなみに「変動金利方式」というのは、「市場の金利に連動する」という金利のつき方のひとつです。

まあ、野菜の値段が日々変わるように、金利のパーセンテージも世の中の状況によって変わるとイメージしてください。

梅田:「住宅ローンの金利が1%」というのは、「住宅ローンとしてお金を借りたら、1年間で1%上乗せして返していく」ということですか?

小林:その認識でOKです。次に、銀行に「預けるときの金利」を見てみましょう。同じみずほ銀行の普通預金の場合、1年間につく金利は0.02%です(2024年5月)。あ、普通預金とは、期限を設けず銀行にお金を預け、いつでも好きなときに引き出せるもっとも一般的な預金の仕組みだと、ここではとらえておいてください。

梅田:ちょっと待ってください。借りるときは1%、預けるときは0.02%って、差がありすぎじゃないですか? えっと50倍? というか、0.02%って少なすぎませんか?

小林:はい、でも今は大手の銀行でも「0.02%」というのが通常です。普通預金の平均的な金利ですよ。

梅田:ということは、銀行にお金を預けても、金利はほとんどつかないってこと?

小林:その通りです。だから梅田さんは、預けているお金に金利がついていることを実感できなかったのかもしれませんね。

梅田:そうですね、増えたと思ったことないです。

「定期預金」は少しいい金利がつく預金

小林:このように銀行は、お客さんに貸すときは高い金利をとり、お客さんからお金を預かったときは低い金利をつけています。この差から銀行は利益を得ているというわけですね。実は、景気がよかったバブルの頃、普通預金の中には2%もの金利がつくものがありました。「定期預金」の場合、約6%もの金利がついたこともあります。

梅田:あ、すみません。今、出た定期預金ってなんですか?

小林:一定の期間は引き出せない代わりに、普通預金よりも金利が高い預金のことです。預け入れ期間は1か月や3か月もあれば、1年、3年、5年、10年と様々です。途中で引き出すと利率が下がったり、解約手数料を取られたりするリスクがあります。

梅田:普通預金よりも金利は高いけど、決めた期間は基本引き出せない。「長い期間、貯めて増やす」タイプの預金、ということですね。

小林:その通り。話を元に戻すと、昔は2%をマークしていた金利が、今は普通預金は0.02%、定期預金でも0.02〜0.3%くらいですから、同じ預金の話とは思えませんよね。具体的な数値でいうと、100万円を1年間預けたときにつけてもらえる金利が、普通預金の場合、2万円から200円に減ったということです。

梅田:そ、そんなに。そういえば、「銀行の金利、安すぎませんか」って聞いて「どういうこと?」となった記憶があります。正しく言い直すと、「銀行に預けるときの金利って安すぎませんか」って意味だったんですね?

小林:その言い方でバッチリです。事業でもしていない限り、一般的に銀行からお金を借りることってなかなかないですからね。普通に生活していて銀行でお金を借りるといえば、住宅ローンや子どもの学費のために教育ローンを組むときくらいでしょう。

ただし、預けるときの金利が安いと借りるときの金利も安い傾向があり、両者はある程度連動しています。これを踏まえると、今住宅ローンでお金を借りている人にとっては、自分の預金よりも借金のほうが多いわけですから、今の「金利が安すぎる状況」が「よかった」となるんです。

梅田:預金したときの金利が低いとはいえ、その預金残高より多い借金の金利も低いわけですもんね。

小林:その通り!

なぜ銀行は、預金に金利をつけるのか?

梅田:ひとつ疑問なのですが、なぜ銀行はわざわざ預金に金利を載せてくれるんですか? だってそれって、銀行からすると損じゃないですか。

小林:一言でいうと、お金を集めたいからですよ。「ちょっとでも多くして返すので、預けてくださいね」ということです。

梅田:集めてどうするんですか?

小林:えっとですね、銀行の仕事というのは、ざっくり言うとお客さんからお金を多く集めて、それを元手にさらに増やしていくことなんです。

預金してもらったお金を、さらに増やす?

小林:まず大本にあるのは、お客さんからお金を集めること。預金はそのひとつの手段です。他にも、ドルやユーロなど、外国の通貨を両替する「外国為替かわせ」で手数料をとって利益を出したりもするのですが、とにかくかき集めたお金で株や土地などを買い、それをうまく売り買いしたり、企業にお金を貸して利息をもらったりして、稼いでいるんです。

梅田:預金はあくまでお金を集める一手段。ほかにも色々な方法でお金を集めてそれをさらに増やすことに使っていく、というイメージですか?

小林:ものすごく簡単に言うとそうです! 銀行が保有するお金、つまり軍資金って、額が大きくなればなるほど有利になるんです。まとまったお金が無ければ、株や不動産などを買うこともできませんからね。これだと、レースに参加することさえできません。

だから、銀行は多くのお客さんにお金を預けてほしいんです。多少金利をつけてでも、とりあえず預けてほしいというわけです。

梅田:たしかに、お金を大量に集めて、それを株や土地、企業に回してさらにお金を生む、って銀行にしかできなそうですよね。

小林:その通り。ちなみにこれを難しい言葉で「資金の運用」といいます。金利を上乗せすることを謳うたってお客さんからお金を集める。そして、それで株や土地を買って売ったり、お金を必要としている人に自分たちがもっているお金を貸し、そのとき上乗せした金利で自分たちの利益を出す。これが、銀行のビジネスモデルといえます。

<この記事の続きは後日配信します>

<本稿は『すみません、金利ってなんですか?』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock


【著者】
小林義崇(こばやし・よしたか)
元国税専門官、フリーランスライター、Y-MARK合同会社代表。
1981年、福岡県出身。西南学院大学商学部卒業後、2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、東京国税局を辞職し、フリーライターに転身。マネージャンルを中心とする書籍や雑誌、ウェブメディアの執筆活動に加え、税やお金に関するセミナーを行っている。


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