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「モヤモヤしてたけど寝たらスッキリした!」になる脳科学的な理由-ウェルネスライフ

夜ベッドに入っても、日中に起こった出来事や、誰かに言われたひと言が気になって眠れなくなる。考えれば考えるほどモヤモヤしたり、クヨクヨしたり、イライラしたりする。

ところが、朝起きたときには、なんだかスッキリしてる。昨晩はあんなにモヤモヤしていたのに、一体どうして? じつはこれ、寝ているときに「脳」がある働きをしてくれているからなんです。

『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』の著者・石村友見さんが、そんな脳の働きについて解説してくださいました。巷でよく言われる「悩んだら、とにかく寝ろ!」というアドバイス、正しかったようです。

〈解説〉石村友見
株式会社 Life is Wellness代表

劇団四季で『ライオンキング』に出演後、単身ニューヨークに渡り、ブロードウェイ・ミュージカル『ミス・サイゴン』に出演。その後ヨガスタジオを設立し、レッスンからヨガ講師の育成まで尽力。2018年に発表した著書『ゼロトレ』はシリーズ120万部の記録的ヒットとなり、『金スマ』『世界一受けたい授業』など多くのテレビ番組に出演。

その後、ハーバード大学医学部「Health and Wellness」講義にて、ウェルネスの観点から世界最先端の栄養学をはじめ運動、コミュニケーションについて学ぶ。現在は、ニューヨークと東京を行き来する生活。11歳男児の母。


「寝たらスッキリした」が起こる理由

「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。ノンレム睡眠は深い睡眠、レム睡眠は浅い睡眠とされ、一晩眠るときにこれらを90〜120 分周期で4、5回繰り返すと言われています。

この2つにはそれぞれ異なる役割があります。

深いノンレム睡眠は、
脳の休息や体内組織の修復、
免疫力の回復を。

浅いレム睡眠は、
脳を活動させて
思考の整理や記憶の定着を。


人は眠っているときに寝返りをうちますが、あれはノンレム睡眠とレム睡眠、どちらのときかわかりますか?

脳が活動しているレム睡眠のときに体が動きそうなものですが、答えは逆。寝返りをうつのは、深いノンレム睡眠のときです。

一方、浅いレム睡眠のとき、体はほとんど動きません。思考を整理したり、記憶を定着させたりするために脳を活発にしているため、他にエネルギーを使わないようにしているわけです。

夢はレム睡眠のときに見ます。前の日に考えたことや、未来に対する不安などが夢となって現れるのは、思考や感情を整理するためだと言われています。

「寝たらスッキリした」

そんな経験がないでしょうか。前日に不安や感情の昂りがあって、あれこれ考えてもまとまらなかったにもかかわらず、寝た翌朝にはそれらが「小さなことに思える」「なるようになると開きなおれた」といった状態になる理由は、眠っている間に脳が活発に動いてそれらを整理してくれたからです。

ストレスに対する耐久性を睡眠は上げてくれます。「時間が解決する」の正体は、睡眠中の脳によるもの。だから、くよくよ考えているときは、とにかく寝ることです。

眠れないときは睡眠薬を飲むべきか

眠れないからと「睡眠導入剤」を服用するケースがあります。この是非は医師に相談することと、副作用の少ない薬を選ぶことを前提としますが、ここでは安易に飲まないほうが良いという注意喚起を行っておきます。

アメリカのスクリップス研究所のダニエル・F・クリプキ博士らは、睡眠導入剤を処方された1万529人を平均2.5年にわたって追跡調査したところ、処方量が多くなるに従って死亡リスクとがんの発症リスクが高まることがわかりました。

1年当たりの処方量別に死亡リスクを見てみると、睡眠導入剤を飲んだ人は飲まなかった人に対し、0.4〜18錠で3.6倍に、 18〜132錠で4.43 倍に、132錠以上で5.32倍に跳ね上がりました。

つまり死亡リスクは、年間18錠未満でも3倍以上になるし、毎日服用しているような人だと5倍以上になるということです。

では、なぜ死亡率が上がったのでしょうか。

通常よりも感染率が上がったためだと考えられています。深いノンレム睡眠には免疫機能を活性化して、感染症を防いでくれる役割があります。ところが、薬物によって得た睡眠は、自然な睡眠と比べて免疫回復効果が得られにくい

これは、感染症にかかりやすい高齢者にとってはとても危険です。新生児と並んで最も免疫力が弱いのは高齢者だからです。

また、睡眠導入剤を服用することで、まるで二日酔いのようにフラフラすることがあります。これによって転倒リスクや運転中の集中力低下が起こりやすくなります。

高齢者の中には、夜中に何度もトイレに行く人が多くいます。このときにフラフラしてしまうと、転倒して重篤な症状を引き起こしかねないので注意が必要です。

とはいえ、睡眠導入剤がないと眠れない人もいるでしょう。その場合は、必ず医師への相談の上で服用してください。


*石村友見さんの著書『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』には、この記事に掲載された「睡眠」の話をはじめ、体や心をウェルネスにする方法が詳しく掲載されています。以下からご覧ください。