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他人とうまくやれる人がわかっている「3つの衝動」

 他人と話すのが上手な人。相手の気持ちをグッとつかんで打ち解けられる人。何かと頼りにされる人。おのずと周りに応援される人――。

 これは「天性の才能」だと思っている人は少なくないかもしれませんが、後天的に磨くことができます。その第一歩として理解したいのが、誰もが持っている「3つの衝動」。人間関係に関する実用的なテクニックをまとめた『他人とうまくやっていく』よりお届けします。

『他人とうまくやっていく』 サンマーク出版
『他人とうまくやっていく』

誰もがもっている3つの衝動

❶ 「自分は重要な人間だ」と思いたい

「人間の本性がもっとも切実に求めているのは、自分が重要な人間であると実感することであり、他人から認められることであり、感謝されることだ」

── トーマス・デューイ

 自分を重要な存在だと思いたい──この人間の欲求は、空腹のような生理的欲求を上回るものだと考えられています。さらには、愛への欲求や、安全への欲求をもしのぎます。空腹は食事をとればおさまりますし、愛も成就すれば欲求は満たされます。身の安全が確保されれば、誰も安全のことなど気にしなくなるでしょう。

 しかし、自分を重要な存在だと感じたいという欲求は、そう簡単にはかなえられません。この欲求は、人間の内側から絶えず湧き上がるもっとも強い衝動であり、人間を動物と分かつ特徴のひとつになっています。

相手からポジティブな反応を引き出すには

 このような衝動があるからこそ、人はブランドの服を身につけたい、高級車に乗りたい、立派な肩書きがほしい、子どもを自慢したいなどと考えるのです。若者が不良化するのも多くの場合は同じ衝動によるものです。極端な例では、殺人やストーカーなどの犯罪に走る人さえいます。

 結婚に関する研究では、女性が長期の関係に見切りをつける主な理由は、裏切りや虐待、夫のパワハラなどではなく、感謝の欠如であるという結果が出ています。認められたい、自分が重要な存在だと実感したい、感謝されたいという思いは、どこにでも顔を出すオールラウンドな欲求なのです。ですから、相手に「自分は重要な人間なのだ」と思わせることができる人ほど、相手からポジティブな反応を引き出すことができるのです。

❷ 興味の対象は何よりも「自分自身」

 相手が関心を持っているのは、何よりも自分自身のことであって、あなたのことではありません。となると、対話の中で優先的にしなければならないのは、相手について話すことです。

 あなたが話題にすべきテーマの例を、いくつか挙げてみましょう。

相手の気持ち
相手の家族
相手の友人
相手の仕事
相手の事情
相手の意見
相手の持ち物

 反対に、あなた自身に関する事柄は、聞かれないかぎり黙っていましょう。

 要するに、人が心の底から興味を持つのは、自分自身と自分の利益に関することだけなのです。ですから、他人とうまくやっていこうと思えば、これを人間関係の原則と考えてアプローチしていくほかありません。あなたに関する事柄について、相手から話を振ってこないなら、それは端的に相手が興味を持っていないということですから、こちらから持ち出すことはやめましょう。

自分を優先することに恥じらいも弁解もない

 この「人間の本質」を知って失望する人もいるでしょう。見返りを求めずに他人に尽くすことがカッコいいと考える人にとっては、いかにも利己的で計算ずくに感じられるかもしれません。しかし、完全に無私無欲であるように見える人でも、たいていは「情けは人のためならず(人のために行動すると、巡り巡って結局は自分のためになる)」という原則に従って行動しているものです。

 実際のところ、すべての行動の根っこには自分の利益があります。地元のバザーで寄付をするのも、究極的には自分のためです。匿名で寄付をしたとしても、自分の気前よさを実感していい気分になることができれば、自分に利益が回ってきたということになります。

 マザー・テレサは全生涯を自分以外の人々に捧げましたが、それは神を喜ばせる行いであり、彼女はそのことで自分自身も満足を得ていました。これらはすべてポジティブな行為であって、決してネガティブなものではありません。

 自分の利益を優先せずに行動することを他人に期待する人は、いつも「がっかり」させられることになります。

 自分を優先することに恥じらいも弁解もいりません。それは、人の自然な生き方にすぎないからです。自分自身のために行動するのは、私たちの脳にしっかり組み込まれた機能であり、人類がこの世に誕生したときから私たちを特徴づけてきたものです。このことは、人間の自己防衛本能のもっとも基本的な形なのです。人は誰でも自分自身の利益を最優先するものだと理解することは、他人とのかかわりの中で何かを成し遂げようとする人にとって、必要不可欠と言えます。

 相手を認め、相手に感謝を示し、自分は重要な人間なのだという気持ちを相手に抱かせること──これを30日間、毎日実践しましょう。意識しなくても実践できるくらい、「習慣」として身につけば、一生もののスキルになります。

❸ 「返報性」という自然の法則

 何かをもらったら同等のものを返したいと思う──これは、人が逆らうことのできない無意識の衝動です。誰かからもらったものを気に入ったら、その人が気に入りそうなものでお返しをしたい、もしくはその人が気に入りそうなことをしてあげたいという気持ちになるでしょう。

 たとえば、クリスマスカードを受け取ったけれど、こちらからは出していないというときは、すぐにでも返事を送りたい衝動に駆られるはずです。これを「返報性の法則」といいます。

 こちらが何か力を貸してあげたときは、たいていの相手がお返しをする機会をうかがうものです。称賛の言葉を贈れば、相手はこちらを好ましく思うだけでなく、自分もほめ言葉で返そうとします。

「自分のほうが上である」という態度に注意

 逆に、よそよそしい態度を取れば、相手はこちらを愛想の悪い人間だとみなし、同じように愛想の悪い態度を取ろうとするでしょう。横柄な態度を取れば、無礼な人間だと思われるでしょうし、相手の態度もやはり横柄になります。相手が侮辱されたと感じたら、「いつか仕返しをしてやろう」という気分になってもおかしくありません。

 何かポジティブなものをこちらから差し出せば、いつの日かポジティブなお返しを受け取ることになりますが、ネガティブなものを差し出せば、それ以上にネガティブな何かを受け取ることになります。これが自然の法則というものであり、法則が覆ることはめったにありません。

 他人に気に入られたいなら、どんなときでも自分より相手を立てるようにしましょう。自分のほうが上であるかのような態度を取ってしまうと、相手は引け目を感じたり、嫉妬を覚えたりします。ポジティブな関係を築こうとしているのに、これでは逆効果です。

 日頃のトレーニングとして、レストランですばらしい食事が出されたときや、ショップの接客係にあいさつされたとき、空港で清掃係があなたの汚れた皿を下げにきたときなどはいつでも笑顔で応え、感謝の言葉をかけるのを忘れないようにしましょう。

 これら3つの「人間の本質」を理解して受け入れれば、他人の心を動かす驚くような力を手にすることができます。

<まとめ>

❶ 人間にとって最大の欲求は、自分を重要な存在だと感じ、感謝されたいと思うこと

相手に「自分は重要な人間だ」と思わせることができる人ほど、相手からポジティブな反応を引き出すことができる。

❷ 人間が興味を持つのは、何よりも自分自身

相手が何を考え、何を求めているかという観点からアプローチする。

❸ 「返報性」は自然の法則

ポジティブなものでもネガティブなものでも、何かを相手に差し出せば、それはいつかどこかで何倍にもなって返ってくる。

<本稿は『他人とうまくやっていく』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock


【著者】
アラン&バーバラ・ピーズ
Allan & Barbara Pease

アラン・ピーズはボディ・ランゲージの世界的権威。妻バーバラとの共著『話を聞かない男、地図が読めない女』(主婦の友社)は、55の言語に翻訳される大ベストセラーに。バーバラ・ピーズは、ピーズ・トレーニング・インターナショナルのCEOとして、各種ビデオの制作やトレーニング講座の運営、世界各国の企業・政府向けセミナーの開催などを手がけている。

【訳者】
藤田美菜子(ふじた・みなこ)