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認知症を正しく知らないのに、恐れすぎる人が早合点しがちなこと
「認知症になると別人のようになる」
そんなふうに思っている人は少なくないでしょう。ただ、そんなに単純な話ではありません。進行にはグラデーションがあり、治療できる場合もあります。認知症の周囲には「早合点」がたくさんあり、それが早期発見・治療の機会を奪い、本当の意味で怖い結果を招いているのです。
全国の医師たちが診断法を学びに来る認知症専門医が、最新の知見と現場での経験から、「認知症の診断」「治療」「周囲のかかわり方」「社会の取り組み」などを徹底解説した『早合点認知症』より冒頭の試し読みをお届けします。
![『早合点認知症』(サンマーク出版) 書影](https://assets.st-note.com/img/1737002146-qBVF1aYfMNl952j6Db7AOzWx.jpg?width=1200)
はじめに
世界の国々のなかでもトップクラスの高齢化率とスピードで、日本は2007年に「超高齢社会」に入りました。超高齢社会とは、人口の約5人に1人は65歳以上ということですから、人々の関心が高齢者の暮らしや、高齢期の健康、エイジングなどに向くのは当然ですね。
なかでも「認知症」は関心の高いトピックで、中高年だけでなく幅広い世代が、「認知症にだけはなりたくない」と恐れます。
そんな不安を背景に、認知症予備軍(グレーゾーン)から戻れるなどとうたう「脳トレ」が流行したり、予防にいいとされる「サプリ」がもてはやされたりします。
そんな話題に触れるたび私は、脳トレやサプリの前に、取り組むべき肝心なことがあるのに、と感じてきました。やみくもな不安や心配に振り回される前に、考え、備えるべきことがあるのに、と。
それは一般の人だけでなく、医療や介護に携わる人においてもそうで、認知症に偏見をもち、誤解している人はとても多く、肝心なことが知られていない、そう痛感しています。
肝心なこと──それは、認知症は実は治療ができる場合があること、そして、誤診の危険が身近にあること。残念ながら、多くの人の認知症観は、実際と大きくズレていて、偏見や誤解を背景に生まれた認知症観と過大な心配を、私は「早合点認知症」と呼ぶことにしました。
たとえば治療ができる認知症なのに、認知症だから仕方がない、治療法はないと早合点されていたり、ほとんど意味のない予防法が流行ったり、認知症の状態にある人の症状に対し、不適切な対応が行われていたり……「早合点認知症」とは、そんな現状に、みなさんに気づいてもらうための造語です。
そして本書は、これまであまり伝えられてこなかった認知症の「実際」や「正しい知識」をお伝えし、治療できる認知症の見逃しや誤診を防ぎ、実効のある予防や備えをしていただくために書きます。
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私は「たろうクリニック」(福岡県福岡市)という在宅診療を中心としたクリニックの院長で、日々、主に福岡市内の自宅や施設で過ごす高齢者の診療に当たっています。当院は私も含め精神科医を中心に、内科医や外科医と協働して、患者さんの健康と暮らし、そしてお看取りを支える体制です。
患者さんの約8割は認知症と診断されている人で、重度認知症の人を対象としたデイケア施設「うみがめ」も併設していますので、主に認知症の人の診療と、生活支援をしている医師だとご理解ください。
そんな私の臨床感からも、確かに、認知症と診断をされる人は増えていて、これからの社会には認知症の人が増えていくと言えます。ただし同時に、認知症を誤解したまま、必要以上に認知症を恐れている人も増えていると感じます。
たとえば、「認知症」とは病名ではなく、状態を示す言葉で、認知症の状態になる病気には、「治療ができるものがある」ことをご存知でしょうか?
また、認知症の診断後も、さまざまな支援や身近なテクノロジーを利用して、仕事や趣味に生きがいを感じながら、自分らしい生活をしている方がいることをご存知でしょうか?
ある軽度認知症の方は、記憶に不安を覚えるようになってから1冊のノートに「今日すること」と「今日したこと」などをこまめに記録する習慣をもち、自力でもの忘れを補っています。
忘れること、できないことが生じてきても、できることのほうを見ていて忙しく、元気に多趣味のマイライフを謳歌し続けている。認知症で生じやすい記憶のエラーと対処のコツを理解していれば、それは可能です。
もし、このようなことをよくご存知でなかったら、ぜひ本書をお読みいただき、認知症に対する不安は、「誤解していたからだった」と、安心していただきたいと思います。
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この続きは、サンマーク出版の公式LINE『本とTREE』にご登録いただくと実際の本と同じレイアウトで目次を含み「はじめに」「第1章 認知症はこう「誤解」されている」まで冒頭49ページをすべてお読みいただけます。ご登録は無料です。ぜひこの機会に試し読みをお楽しみください!
![サンマーク出版が運営する公式LINE「本とTREE」での『早合点認知症』の試し読みページはこちら](https://assets.st-note.com/img/1737002102-Ye1Uc6gbS9vtVPFfXMAriQmk.png?width=1200)
【著者】
内田直樹(うちだ・なおき)
認知症専門医。医療法人すずらん会たろうクリニック院長、精神科医、医学博士。1978年長崎県南島原市生まれ。2003年琉球大学医学部医学科卒業。2010年より福岡大学医学部精神医学教室講師。福岡大学病院で医局長、外来医長を務めたのち、2015年より現職。福岡市を認知症フレンドリーなまちとする取り組みも行っている。日本老年精神医学会専門医・指導医。日本在宅医療連合学会専門医・指導医。編著に『認知症プライマリケアまるごとガイド』(中央法規)がある。