あなたの悩みや問題は「あなたを守るために」存在している
人間関係や仕事、お金、あるいは家族の問題など、私たちはいつも多くの問題を抱えているものだ。ところが困ったことに、どれだけ苦しくても、一日も早く解決したいともがいてみても、なかなか解決には至らないことのほうが多い。要するに、「うまくいかない」ということだ。
うまくいかないと、どうしても気持ちはネガティブな方向へと進んでしまう。だから厄介なのだが、公認心理士である『わたしが「わたし」を助けに行こう ―自分を救う心理学―』(サンマーク出版)の著者・橋本翔太氏によれば、解決できないことには大きな「意味」と「目的」があるのだそうだ。
自分こそが自分自身を助けることができる
自分が抱えている問題や悩みは、「自分を守るために」存在しているというのである。だとすれば、それは自分にしかコントロールできないものだということになる。言い方を変えれば、誰に頼るのでもなく、自分こそが自分自身を助けることができるということになるのだろう。
橋本氏いわく、ナイトくんの多くは無意識の一部。つまり、「自分ではまだ意識できていない、自覚できていない」という意味だ。つまり意識できていなかったとしても、どんな人のなかにも「自分自身を守るための防衛隊=ナイトくん」がいるということである。
心の防衛隊の目的は、対象となる人、すなわち自分が「もう、これ以上傷つかないようにすること」。ところが防衛隊たるナイトくんはとても不器用であるため、自分を守ろうとするあまりに極端な行動をしてしまうのだという。だとすれば、それが日常生活において、問題となって表れてくるのは当然だ。
悩みは問題を持っていてもいい
しかもナイトくんは、人間である限り誰のなかにも存在するものなのだそうだ。たしかにそう説明されれば、日々私たちを悩ませる諸問題の根源がわかるような気もする。だがどうであれ、それらの問題は、なんとかクリアしていかなければならいものでもある。
そこで橋本氏は、「ナイトくんワーク」というメソッドを通じ、問題の本当の姿に気づくことを勧めている。そうすれば「悩みや問題を一掃しよう」という意識が「悩みや問題を持っていてもいい」というスタンスに変わるため、自然と生きることが楽になるというのだ。
「問題はゆっくり少しずつ解決していけばいいのだから、それまでは問題を持っていてもいい」という考え方。つまり「問題を持っている自分は、心がちゃんと機能している」と考えることができるわけである。
そこで、本書で紹介されている「ナイトくんワーク」の7ステップをご紹介しよう。少し長いが、これは本書において重要な意味を持つ部分であるようだ。
自分で自分の問題を解決できるように
メルヘンチックなニュアンスが強いため、若干の抵抗を感じられる方もいらっしゃるかもしれない。しかし表現はともかく、ここで橋本氏が強調しているのは「自分との対話」の重要性である。多忙な日常生活を送っていると、冷静に自分と向き合う時間は持ちにくく、そもそもそんな気分にはなれないかもしれない。
だが、悩みや問題を抱えているときこそ、自分と向き合って冷静になる必要がある。だからこそ自分の姿をナイトくんという他者的存在に投影し、自分の周囲を取り巻く状況を客観的に見つめ、「ここからどう進むべきか」をきちんと見極めることが重要だということなのだろう。
何度も取り組んでいくうちに、問題の解決や生きづらさの解消につながっていくはずだとも橋本氏は述べている。最初は気恥ずかしいかもしれないが、誰かにチェックされるわけでもなく、あくまで「自分との対話」なのだ。あまり重たく考えず、気軽に試してみればいいのではないだろうか。
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】
印南敦史(いんなみ・あつし)
作家・書評家