転職のスタート「とりあえずエージェントに登録」の前に考えてほしいこと
「転職しようかな」と思った人が
〝とりあえず転職エージェントに登録する〟
という行動を取ることは少なくないでしょう。しかし、それだけでいいのでしょうか?
ベストセラー『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』(佐野創太著)よりお届けします。
前回:転職でうまくいく人と「また辞めたくなる人」の差(4月24日配信)
転職のはじまりは“とりあえず転職エージェントに登録”でいいのか?
有名なタレントが出演する転職エージェントのCMは誰もが見たことがあるでしょう。第一生命経済研究所のデータによると、年間の転職者数は約300万人ですが、転職希望者は800万人を超えます。
新卒で入社した会社を定年まで勤め上げるのが当たり前ではなくなった時代に、転職を考えたら「まずは転職エージェントに登録する」ことがまるで常識のように、働く私たちの意識に植え付けられています。
しかし、私が数多くの転職希望者を「会社辞めたい」とモヤモヤしている段階からサポートしてきて気づいたことがあります。転職がうまくいく人は転職エージェントに登録し、転職エージェントのサポートを受ける前に、意識的か無意識的かは別にして、ある作業を終えている、ということです。
その作業が、〝本音磨き〟です。
〝本音磨き〟を終えた状態とは、自分の軸が定まった状態です。
この作業が終わった人は、転職エージェントからさまざまな企業を紹介されても、間違った選択をせずに、あなたの願いが叶う転職先に一直線でたどり着けます。
転職活動には多くの人が見落としている〝ステージ0〟がある
今のあなたは、書類選考用に履歴書や職務経歴書をまとめている最中でしょうか?
伸びる会社を見極めるために、企業分析や業界分析をしているところでしょうか?
転職エージェントや転職サイトから情報収集をしている段階かもしれません。
これらは転職活動の「ステージ1」と言っていいでしょう。このステージは、転職を成功させる大切なステップです。あらゆる良質な情報が人や本、記事を通して世の中に広まっています。
〝本音磨き〟はいわば、転職活動の「ステージ1」の前に行う「ステージ0」です。
「会社辞めようかな」と思っていて「転職活動はこれからかな」と思っているあなた。おめでとうございます。まさに転職活動の「ステージ0」にいて、「本音磨き」をはじめる絶好のタイミングです。
「いや、明日面接があるんだけど……もう遅い?」と心配になっているあなた。ご安心ください。「ステージ0」の本音磨きはいつでもはじめられます。むしろ、一度「ステージ0」に戻ることで本当の転職活動がはじまるのです。
3ステップで、嘘を拭き取り、本音を磨く
では、具体的にどのように本音を磨いていくのでしょうか?
〝本音磨き〟は3つのステップで構成されています。
【ステップ1】ネガティブな感情を吐き出して本音を〝把握する〟「退職成仏ノート」
【ステップ2】人間関係から本音を〝整理する〟「人間関係の仕分けノート」
【ステップ3】本音を職場や面接で伝わる言葉に〝磨く〟「明日への手紙」
本音とは、あなただけのセンサーです。転職活動のステージ0で磨いたセンサーがあなたの「ステージ1」以降の転職活動に必ず変化をもたらします。
ここで私と一緒に「本音磨き」を経験した1000人以上の方の声の一部をご紹介します。
「志望動機がスラスラ思い浮かぶようになって、応募することが楽しくなりました」
「求人ページを見る段階で〝この会社は合わない〟と判断できるようになりました」
「第1志望の面接で意見交換の空気になって、その場で内定オファーをもらえました」
本音磨きをすると、どうして目の前の転職活動から変わりはじめるのでしょうか?
その理由は、「本音磨き」が以下の4つの要素からつくられていて、誰もができる技術だからです。
①転職エージェントで働いていたときの後悔
ひとつ目は、私が転職エージェントとしてサポートしたり、求人サイトを運営したりしていたときの後悔です。このときに私は「転職〝だけ〟うまくいく人を増やしている原因」に気づきました。
②「会社辞めたいループ」に陥った経験
2つ目は、私自身が転職「だけ」うまくいく人になり、モヤモヤし続けてわかった反省です。嘘からはじまった転職活動の末に、無職になりました。
③1000人以上の退職・転職相談に乗ってきた知見
3つ目は、会社を独立後に「退職学」研究家としてはじめた「転職以前の悩みである退職の研究」の成果です。これまで1000人以上の相談者さんと、イベントやネットテレビを通じてお伝えした1万人以上の方の声が、「本音磨き」に反映されています。
④先人たちの知恵
4つ目は、先人たちの知恵です。本音磨きは私が編み出した独自のものですが、「働きがい・生きがい」「本音で生きる」などは時代も地域も超えて研究されているテーマです。本書にも多くの先人たちの言葉を紹介しながら、目の前の転職活動だけでなく、その先の人生の指針となるようなつくりになっています。
「本音磨き」は、特別な人にしかできないスーパースキルではありません。紙とペンさえあれば、誰でも、ひとりでできるものです。むしろ本音はひとりの時間にわかります。年齢や性別、職種や業界も関係ありません。実際に私のもとに来てくださった相談者さんは、男性も女性もいれば、就職活動生も50代の人生の先輩とも言える人もいます。結婚や育児などのライフイベントを控えている人もいました。
すでに何度か転職を経験している人も、転職はしたことないけど、モヤモヤとした思いがなかなか晴れない人も、気負いすることなく、本音磨きに取り組んでみてください。
どうして転職のプロなのに、転職迷子になったのか?
ここまで偉そうに転職について語ってきましたが、ここで告白させてください。
実は、私には自分に嘘をつき続けていた過去があります。
転職「だけ」うまくいく人と、転職後「も」うまくいく人がいることに気がついたのは、何より私自身が転職「だけ」うまくいく人、つまり「会社辞めたい」ループに陥った人だったからです。週4で「会社辞めたい」と思っていました。
私は新卒で入った会社は1年で退職しました。上司には「もっと社会のためになる仕事がしたい」と伝えましたが、本音は「営業が辛つらい」でした。
次の会社は1ヶ月で退職しました。表向きは「社風が合わない」でしたが、本音は「仕事のレベルが高すぎてついていけない」でした。
社会人2年目で2回の早期退職をした私は、転職エージェントに頼ろうとしますが、「早期退職を繰り返したあなたの経歴ではサービスを提供できません」と登録を断られました。今思えば、経歴に問題があること以上に、本音がわからず自分を大きく見せようとしていた私をサポートしたくなかったのでしょう。早期退職をしても復活する人はいますから。
「自分の力で何とかしよう」と思った私は、多くの面接術や転職ノウハウを学びました。企業研究や業界研究にもお金を注ぎ込みました。それでもお祈りメールは溜まっていく一方でしたし、内定をもらってもモヤモヤして辞退を続けていました。親の紹介で会った人事の責任者の人にも「落ち着いて考える時間を取った方がいい」と諭される始末です。
気がつけば私は無職になっていました。
私自身が転職エージェントとして「いい会社」を見極め、求職者のキャリア相談に乗っていた立場にもかかわらず、です。
「このままずっと転職迷子なのだろうか」と不安で押し潰されそうでした。SNSを見ては「取り残されているのでは」と焦る自分の傷を塞ぐために楽しそうな友人の投稿をどんどんミュートしていきました。大好きな音楽を聴いても、ぴくりとも心が動きません。
「一発逆転しないと、まずい」と一念発起したつもりになって、高額セミナーや副業ノウハウにお金を注ぎ込んだこともあります。心に刺さった嘘のトゲが本音を麻痺させていて、判断がおかしくなっていたのでしょう。
どん底の私を救ってくれたもの
そんな私を救ってくれたのは、ひとりになってとことん本音と向き合う作業でした。
ネガティブな感情をとにかくノートに書き出し、今までの人間関係を整理していく作業を続けました。この作業が本書で紹介する〝本音磨き〟の原型となっています。
〝本音磨き〟によって、自分が本当はどうありたいのか、明確になった私は、まず新卒で入社した人材エージェント会社の上司に連絡を取りました。無職になったことを伝え、営業が辛かったことやどんどん成長を求める社風についていけなかったことも正直に話しました。
するとその上司は「仕事はする気はあるのか?」「どんな仕事がしたいんだ?」などいくつか質問した後、「戻る気があるなら上は通すよ」と言ってくれました。当時の社長も「少し早めの夏休みだったね。しかも長めの(笑)」と出戻りを許可してくれました。
〝本音は人を動かす〟ことを実感した瞬間です。
モヤモヤループにはまり、転職迷子になっていた私にとってはどんな転職ノウハウや思考法、キャリア戦略を勉強するよりも、本音磨きをまずはじめるべきでした。転職活動の本当のはじまりは、自分の本音と向き合うことだったと今ならわかります。
<本稿は『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
佐野創太(さの・そうた)
日本初かつ唯一の「退職学®︎(resignology)」の研究家/生成AIを活用した情報発信のパートナー
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