リッチになるにはカネでも地位でもなく富を求めよ
アメリカ・シリコンバレーで生きる伝説とされる、ナヴァル・ラヴィカントという人物をご存知でしょうか。エンジェル投資家とスタートアップを結ぶ「AngelList」創業者であり、彼の出現以後、全米のスタートアップ創業スピードは飛躍し、法律までをも変えてしまいました。
彼の語る成功論・人生論は、Twitterやポッドキャストで話題を呼び、世界中の挑戦者がメンターとして彼を信奉するまでになっています。
インドで生まれたナヴァルは、幼い頃に移民としてアメリカへ。当時から移民の境遇は厳しく、貧しい暮らしのなか、家族は離散。持たざる者から、彼はいかに逆転したのか――。
そのすべてが、ナヴァルの投稿記事、ツイート、対談を集めた本『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』に詰まっています。世界の挑戦者に火をつける言葉の数々。ナヴァルが「カネでも地位でもなく富を求めよ」と説く理由は? 本書より一部抜粋、再構成してお届けします。
金儲けは「する」ものではない
――身につけるスキルだ。
「努力量」は勝負を決めない──「方向」を探り、定めよ
よく思うんだが、もしも私が全財産を失って、英語圏のどこかの通りに置き去りにされたとしても、5年か10年すればまた富を得ているだろうね。
なぜなら富を生み出すことは私が身につけたスキルセット[知識や能力]であり、誰でもそれを身につけられるのだから。
努力は富とはほとんど関係ない。週80時間食堂で働こうが、リッチにはなれない。リッチになるということは、「何をするか」「誰とするか」「いつするか」を理解するということなんだ。
努力するより、理解するほうがずっと大事だ。もちろん努力は大事だし、おろそかにはできない。でも努力は正しい方向に向けなくてはならない。
もし君が取り組むべきことをまだ見つけていないのなら、それを見つけるのが先決だ。取り組むべきことが見つかるまでは、身を粉にして働きすぎてはいけない。
私が(以下の)連投ツイートで紹介した原則を思いついたのは、まだ本当に若い頃、たしか13、14歳の頃だった。それを30年間守り、実践してきた。そうするうちに、本当に得意なことが見つかった。
それは(幸か不幸か)、事業を分析して、富を生み出すための最大のレバレッジポイント[テコ(レバレッジ)のように、小さな力で大きな成果を得やすい場所]を探し当て、そして実際に生み出された富の一部を獲得することだ。
これが、あの有名になった連投ツイートで私が語ったことだ。もちろん、一つひとつのツイートについて1時間でも話すことができる。君もこの連投ツイートを出発点にするといい。
情報満載、簡潔明瞭で、インパクトの高い、時代を超えた教えになるように心がけた。
必要な情報と原則は、すべてここにある。これを吸収して10年頑張れば、君の望むものが得られるはずだ。
(運に頼らずに)リッチになる方法
<※以下はナヴァル本人の連投ツイートより>
カネではなく、地位でもなく、富を求めよ。富とは、君が寝ている間も稼いでくれる資産だ。カネとは、時間と富を人に与えるための手段だ。地位とは、社会階層内での君の立ち位置だ。
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倫理的な富の創造は可能だと理解せよ。富を密かに蔑さげすむ人から富は逃げていく。
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「地位のゲーム」をする人は無視せよ。彼らは「富の創造ゲーム」をする人を攻撃して地位を得ている。
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時間を切り売りしていてはリッチになれない。経済的自由を得るには、エクイティ──事業の一部──を所有せよ。
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リッチになるには、「社会が求めているが、手に入れる方法がまだ知られていないもの」を提供せよ。それも大規模に。
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長期的な人と長期的なゲームができる業界を選べ。
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インターネットはキャリアの可能性をとてつもなく広げた。ほとんどの人はまだそのことに気づいていない。
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「同じゲーム」を何度もくり返せ。富であれ人間関係であれ知識であれ、人生の見返りはすべて複利で殖(ふ)える。
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知性、エネルギー、そして何より倫理観にあふれる仕事仲間を選べ。
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皮肉屋や厭世家とは組むな。彼らの思いは現実になる。
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売る方法を学べ。つくる方法を学べ。両方できれば無敵だ。
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「特殊知識」「説明責任」「レバレッジ」を武器にせよ。
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特殊知識とは、訓練では身につけられない知識のことだ。もし君が訓練できる知識しか持っていなければ、訓練された別の人に取って代わられる。
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特殊知識を見つけるには、何であれ今の流行を追いかけるより、君の純粋な好奇心と情熱を追い求めよ。
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特殊知識を身につけるプロセスは、君には遊びのように思えるが、傍目(はため)には仕事をしているように見える。
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特殊知識を教えることができるとすれば、それは学校ではなく、徒弟制や見習いを通じて教えられる。
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特殊知識は専門性や創造性が非常に高い場合が多い。ゆえに外注や自動化ができない。
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説明責任を引き受け、君の名のもとに事業リスクを取れ。社会はその見返りとして、君に責任、エクイティ、レバレッジを与えてくれる。
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「われに十分長いテコと足場を与えよ、されば地球を動かしてみせよう」
──アルキメデス
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レバレッジなくして富はない。事業にレバレッジをもたらすのは、資本、人、そして限界費用ゼロで複製できるプロダクト(コードとメディア)だ。
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資本とは、カネだ。カネを集めるには、説明責任をもって特殊知識を活用し、優れた判断を示せ。
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労働力とは、君のために働くヒトだ。労働力は最古にして最も激しく争奪されてきたレバレッジだ。ヒトをたくさん従えれば親は喜ぶが、それを追い求めて人生を無駄にするな。
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資本と労働力は、許可型のレバレッジだ。資本を得るには、誰かに与えてもらう必要がある。労働力を得るには、誰かに従ってもらう必要がある。
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コードとメディアは、非許可型(パーミッションレス)のレバレッジだ。これが、新興の富裕層を支えているレバレッジだ。ソフトウェアやメディアをつくって、君が寝ている間も働かせよ。
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君が自由に利用できるロボット団がある──熱効率と空間効率のためにデータセンターに詰め込まれている。コードを書いてこれを使え。
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コードが書けないなら、本やブログを執筆し、ビデオやポッドキャストを収録せよ。
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レバレッジは、君の下す判断の効果を何倍にも増幅させる。
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判断は経験を積むことで得られるが、基礎的スキルを習得すればもっと早く身につけられる。
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「ビジネス」という名のスキルは存在しない。ビジネス誌やビジネス講座は避けよ。
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ミクロ経済学、ゲーム理論、心理学、説得術、倫理学、数学、コンピュータを学べ。
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聴くより読んだほうが速い。見るよりやったほうが速い。
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予定表が空(から)でも「お茶」などしている暇はない。
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自分に強気な金額の時給を設定し、それを押し通せ。自力で解決しても時給以下の金額しか節約できないような問題は放っておけ。時給以下でできる仕事は外注せよ。
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死ぬ気で働け。ただし、どれだけ努力するかより、誰と働くか、何をするかのほうが重要だ。
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君のやっていることで世界一になれ。そうなるまで、君のやっていることを微調整しつづけよ。
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うまい儲け話などない。君をカモにしようとしているだけだ。
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特殊知識にレバレッジを効かせよ。そうすればいずれ君にふさわしい結果が得られる。
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とうとう富を手に入れたとき、君の求めていたものが富でなかったことに気づくだろう。だがそれについてはまたの機会に。
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要約:自分をプロダクト化せよ。
「自分」と「プロダクト化」の2語に集約できる
Q)あなたの要約には
「自分をプロダクト化せよ」とありますね
──どういう意味ですか?
「自分」と「プロダクト化」の要素があるということだ。
「自分」は独自性を表している。「プロダクト化」はレバレッジを表している。
「自分」は説明責任を表している。「プロダクト化」は特殊知識を表している。「自分」も特殊知識を表しているね。
つまり一連の全ツイートが、この2語に集約できるんだ。
もし君が「富を得る」という目的を長期的にめざすなら、「今やっていることは自分らしいのか? 自分らしさを発揮しているか?」と考えなくてはならない。
それから、「プロダクト化しているか? スケール[規模を拡大]しているか? プロダクト化の手段はヒトか、カネか、コードか、メディアか?」と考えなくてはならない。
「自分」を「プロダクト化」する──これが簡単便利な記憶法になる。
簡単なことじゃない。だから何十年もかかると言った──実行するのに何十年もかかるとは言わないが、君にしか提供できないことを見つけるまでに、10年近くかかるかもしれない。
「富」とは寝ている間も稼いでくれる資産だ
Q)富とお金の違いは何ですか?
お金は富を人から人へ移すための手段だ。お金は社会への「貸し」だ。他人の時間を貸し借りする手段だ。
君が君にしかできないことをやって、社会のために価値を生み出せば、社会はこう言うだろう。「おお、ありがとう。君が過去にこれをやってくれたから、君に未来の借りができた。ほら、借用証書を受け取ってくれ。これをお金と名づけよう」
君が欲しいのは、富だ。富とは、君が寝ている間も稼いでくれる資産だ。モノを量産する工場やロボットは、富だ。夜間に稼働して顧客にサービスを提供するコンピュータプログラムは、富だ。他の資産や他の企業に再投資される銀行預金も、富だ。
家も、賃貸に出せるという点で富の一種だね。ただ、営利事業に比べると土地の生産効率は低いだろう。
つまり私の言う「富」とは、寝ている間も稼いでくれる事業や資産の意味に近い。
<本稿は『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』(サンマーク出版)』から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
【著者】
エリック・ジョーゲンソン(Eric Jorgenson)
プロダクト・ストラテジスト、作家。2011年に住宅所有者と信頼できるサービス提供業者をつなぐ会社、ザーリー(Zaarly)の創業チームに参画する。ビジネスブログ「Evergreen」を運営し、100万人を超える読者に、ためになる情報や楽しい情報を提供している。
エリックは完璧なサンドイッチをつくること──そして食べること──をめざしている。ミズーリ州カンザスシティに世界一すばらしい女性ジニーンと暮らしている。Xで @EricJorgensonをフォローするか、ブログ https://www.ejorgenson.comで彼の新しいプロジェクトをチェックしてほしい。
【訳者】
櫻井 祐子(さくらい・ゆうこ)