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意見・感想を伝えること、そんなに難しく考えないで

 他人に対して意見や感想を言うことは大人でも難しい場面があります。まして小学生なら?

 子どもの小学校生活における言い方、考え方を紹介している齋藤孝さんの著書『こんなときどう言う?事典』よりお届けします。

『こんなときどう言う?事典』 サンマーク出版 齋藤孝
『こんなときどう言う?事典』

<意見って何を言っていいかそもそもわからない>

基本)ちょっとでもいいところ見つけて伝えてみて

できる!)自分の「ベスト1、2、3」を話そう

これだけでもOK)正解はない。自分の気持ちが動いたことを伝えればいいのだ

<意見・感想を言うことは、「考えること」「感じること」>

 意見や感想を言うということは、「考えること」「感じること」だと、ぼくは思います。ボーッとしていたり、相手の話を聞き流したりしていては、意見なんて生まれませんからね。

 それに、意見を求められているということは、相手から「あなたの話を聞かせて」と期待されているということだよね? なのに、「意見はないです」なんて答えたら、相手はがっかりします。

 だからこそ、何かをしたときには、必ず「考える」「感じる」ってことを、意識してやってほしいんだ。

 たとえば、友だちがつくったクッキーを食べたときに、「どうだった?」「感想、教えて」と言われたら、「べつに」とか「何もない」なんて言えないよね。だから、食べている間に「考える」「感じる」をするんです。

「考える」がむずかしいなら、「感じる」だけでもOKです。歯ごたえを感じたら、「サクサクしてるね」と言えばいいし、「チョコチップがおいしい」とかでもいいよね。

 だから、意見や感想というものには、正解はないんです。自分が「考える」「感じる」をして、心が少しでも動いたものをつかまえて、それを言葉にするのが意見です。人の考えや感じ方に正解がないのと同じように、正解はないんです。

相手のいいところを探して伝えよう

 このように、「考える」「感じる」ことでわかったことを、相手の気持ちを考えたうえで伝えることこそが、コミュニケーションなんですね。だから、「考える」「感じる」の中で、相手がよろこんでくれそうなことを選んで言ってみてください。

 たとえば、どんなにほめる部分がなさそうに見えても、なんとかいいところを見つけて伝えるようにしてほしいんだ。 さっきのクッキーの話に戻るけど、もしクッキーがあまりおいしくなかったとしても、いいところを探して、「見た目がかわいいね」とか、「バターのいい香り!」なんてほめてみてほしいんだ。

 もう亡くなった方なのですが、映画評論家の淀川長治さんは、「ほめるところは、必ずある」と考えて、映画を見ていたそうです。「あのセリフの言い方がよかった」「始まり方がよかった」。だからどうしてもほめるところがなかったときには、「映画の中に出てきたトイレがきれいだった」とか、そういうところまで見ていたかもしれないよ。

自分の「ベスト3」を話そう

 「いい意見を言おう」と思うと、かえって意見が出なくなったりすると思うんです。だから、「自分的によかったところベスト3」を、心の中で勝手に決めるクセをつければ、気楽に言えるようになりますよ。たとえば、「遠足で楽しかった場面ベスト3」なんていう感じでね。

 じつはこれ、作文を書くときにも使えるテクニックなんです。作文のテーマについて、「自分的ベスト3」を考えて、順番に挙げていくと、とても書きやすくなるはずですよ。

POINT 心が動いたら言葉にしよう

【自分的ベスト3】の例
①    山のちょうじょうからの景色がきれいだった
②    つり橋がこわかった
③    おべんとうがおいしかった

<本稿は『こんなときどう言う事典』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock


【著者】
齋藤孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部教授

本とTREE サンマーク出版

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