「私はコーヒーを飲んでも夜眠れる」がとっても危険なワケ - ウェルネスライフ
あなたはコーヒーを1日に何杯飲みますか? ICO(国際コーヒー機関)の調査によると、日本人は1週間に平均10杯のコーヒーを飲むとされていますから、1日平均は1.5杯ほどになります。
コーヒが苦手な人もいるでしょうし、毎日5杯は飲む!という愛好家もいることでしょう。このコーヒー、「健康にいい」とされる報告も多数ありますし、「飲み過ぎには注意」と警鐘が鳴らされることもあります。
ここでは「睡眠」と「カフェイン」の関係についてお話しをします。『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』の著者・石村友見さんが教えてくださいました。
コーヒーで眠気が消える不思議
仕事のパフォーマンスを上げるために「カフェイン」に頼る人がよくいます。私も仕事中、眠気が襲って来たときブラックコーヒーに頼ることがあります。
ただ、これには注意が必要です。なぜならコーヒーに含まれるカフェインは、精神活性刺激物質であり、中毒性が極めて強いからです。
カフェインと聞くとその代表格はコーヒーですが、それ以外にもいろいろな食品、医薬品に含まれます。紅茶、チョコレート、エナジードリンク、コーラ、鎮痛剤など。
カフェインには中枢神経を覚醒させることで集中力を向上させたり、倦怠感を抑制させたりする効果があります。なかでも、多くの人が頼るのが眠気を覚ますこと。では、なぜ、コーヒーを飲むと眠気が去っていくのでしょうか?
眠気をハイジャックする
カフェインには「アデノシン」をブロックし、眠気を閉じ込めてしまう作用があります。
アデノシンは、体内の細胞で生産され、エネルギー代謝や睡眠、血管拡張、免疫向上などの生理的な働きに重要な役割を担う物質です。特に「睡眠物質」として知られており、アデノシンは筋肉や脳が活動すると蓄積されて眠気を引き起こす「睡眠圧」の働きをしています。
「眠い」という感覚をハイジャックし、どこかに連れ去っていってしまうのがカフェイン。これは疲労が回復したわけではなく、一時的に眠気が連れ去られたに過ぎません。
ところが、本人は疲れや眠気が飛んで「快調」だと錯覚してしまう。こうして疲れたときや眠いときにカフェインを摂ることが常態化し、やがて「カフェイン中毒」になっていきます。
日本中毒学会の調べによると、日本国内でカフェインを多量に含む眠気防止薬やエナジードリンクの急性中毒者は、2011年からの5年間で101人が救急搬送され、そのうち7人が心停止、うち3人の死亡が報告されています。
人によっては1グラム(1000mg)程度の摂取で中毒症状が出始め、2グラムの摂取で多くの人に中毒症状が見られ、5グラムで重篤な副作用が現れ、7グラムで致死量になります。
通常の生活をしていれば過度に恐れる必要はありませんが、「カフェイン」はそれくらいの危険性を孕んでいることも知っておくといいでしょう。
「1日3杯以上飲む」が睡眠に悪影響を及ぼす
欧州食品安全機関(EFSA)は、健康な成人における1日のカフェイン摂取量の上限を「400mg」にしています。
コーヒー1杯(150mℓ)に含まれるカフェインは約90mg、紅茶は45mg、玉露のお茶は240mg、その他チョコレートやコーラ、エナジードリンクにも含まれているので、 コーヒーを数杯飲んでチョコレートを食べたり、エナジードリンクを飲んだりすれば、 1日の上限にわりとすぐ届いてしまいます。
通常、カフェインの効き目のピークは摂取してから15分ほどでやってきます。
このようなリズムです。摂取したカフェインが体内から50%程度排出されるのには5〜7時間かかり、脳から完全に浄化されるのには約12時間かかります。つまり、完全に消えるまでになんと半日かかるわけです。
私の周囲にも「1日3杯以上コーヒーを飲む」という人がいます。その人の1日のルーティン(日課)は次のようなものです。
だるかったり、眠かったり、集中したいときにコーヒーを飲む。コーヒーがチョコレートやエナジードリンク、コーラなどに置き換わっても同じことです。このルーティンを繰り返す人たちは、大抵こう言います。
しかし、つねにカフェインでアデノシン(睡眠圧)をブロックしている状態なので、 深い眠りにはつけず、夜中に起きてしまったり、日中も倦怠感と闘ったりすることになります。
つねに体内にカフェインが残った状態で過ごすことになるので、良質な睡眠をとるのが難しくなるでしょう。
NASAの「蜘蛛の巣」実験
カフェインについてのユニークな実験があります。1980年、NASA(アメリカ航空宇宙局)は蜘蛛にLSD、スピード、マリファナなどの強力な薬物と、カフェインを与えて、それぞれによってノーマル時と比べて「蜘蛛の巣」のつくりがどう変わるかを実験しました。
その結果、最も乱れた(混乱した)蜘蛛の巣になったのはカフェインを与えたときでした。つまりカフェインは、他の依存性薬物よりも、蜘蛛の巣を作る能力をかなり深刻に阻害することがわかったのです。
カフェインを排出する力は加齢とともに衰えてきます。良質な睡眠のためには、たとえば「コーヒーは午前中に1杯だけ」と決めるのがオススメです。
*石村友見さんの著書『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』には、この記事に掲載された「カフェインと睡眠の関係」をはじめ、世界の最新研究をベースにした睡眠法が詳しく掲載されています。以下からご覧ください。