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もし、いまごろサムスン電子の株を持っていたら

 株価が高値で推移する中、今年からの新NISAのスタートもあいまって、投資への注目度が高まっています。株式にしろ投資信託にしろ、投資するなら短期で売買するのと、長期で取引するのはどちらがいいのでしょうか。

 希代の起業家が語る「伝説のお金の授業」を書籍化した『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』の著者キム・スンホ氏は「一生売らないでいい会社がいちばんいい」と言います。

 韓国で100万部の大ヒット、2020〜2023年に4年連続ベストセラーとなった本書の邦訳版よりお届けします。

『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版) キム・スンホ
『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』
(サンマーク出版)
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上場直後から保有していれば1063倍!

 投資家たちは、しばしばこんな泣き言を言う。

「あの株を売らずに持っていたら、いまごろは大金持ちだ」。

 あのとき持ち株が2倍にもなったので、これは儲かったと思って売ったものの、それからさらに上がりつづける株を見て、自分の売り値よりも高値で買うこともできず、諦めるしかなかったというわけだ。

 例えば、サムスン電子の株は2020年1月、6万ウォン(6000円)に迫った。同社上場直後の1975年6月12日の修正株価56ウォン(5・6円)と比べると、1063倍に上がったのだ。

 経済専門紙『イーデイリー』の情報サイト「マーケットポイント」の掲載記事によれば、1978年に分譲開始されたソウルの銀馬ウンマアパートの購入代金240万円でサムスン電子株を買っておけば、いまごろは19億2973万円に膨れ上がった計算になる。

 これに配当の再投資分を含めば、軽く20億を超えるだろう。現在、銀馬アパートの相場は2億円余りなので、10倍ほどの差があるということだ。計算してみると惜しい話だ。

 しかし、悔しがる必要はない。

 1975年当時にサムスン電子の株を買っていまだに持っている人は、創業者である故・李イ健ゴ熙ニ会長の家族以外にはひとりもいないだろう。自分がその会社の主人だと思って株を持っている人はめったにいないからだ。

 一般的な投資スタイルには短期投資と長期投資があるが、短期にも超短期投資があり、長期にも永遠に売らない超長期投資がある。

 一方、バリュー投資は買ってすぐ急に値上がりして企業価値を超えたら、保有期間に関係なく売却すべき場合もある。

 だから、株は必ずしも長く持てばいいというわけではない。しかし、長期で保有する価値のある株を長く持っていることは、立派な投資だと言えるだろう。

アンドレ・コストラニイ(ハンガリー生まれの大投機師)は波瀾万丈の生涯を送り、伝説的な長期投資家である是川銀蔵(これかわぎんぞう、株の運用で1983年の長者番付1位にもなった日本の相場師)も数度の破産を経験し、ピーター・リンチ(Peter Lynch、金融人、米フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニーのファンドマネージャー、副会長)は、不名誉退社を余儀なくされる前に賢明にも自主的に退職した。

 彼らは全員、長期投資家だが、つらい日々がなかったわけではない。

 代表的な長期投資家でありバリュー投資家でもあるウォーレン・バフェットでさえも、2020年の新型コロナウイルス感染症による株式市場の崩壊で大きな損失を被った。6銘柄が50%以上も暴落し、バフェットの伝統的なバリュー株中心のポートフォリオが大打撃を受けたためだ。11歳から数えて80年に及ぶ彼の投資人生の最後に、一生の名声を汚してしまうところだった。

駆け引きナシでも「希望価格」で買える秘訣

 私は駆け引きが得意ではない。

 駆け引きが得意でない人間は、

 駆け引きすべきではないと思っている。

 だから車を買うときも、まず適正価格を調べ、セールス窓口の担当者に諸費用を含めた乗り出し価格(Drive out Price)を一発で提示するように言う。その際、その価格が気に入れば一銭も値切らず買うし、気に入らなければそのまま帰ると言い、追加交渉はしないと付け加える。

 たいていこのやり方で最も合理的な価格で車を買うことができたし、1時間以内に買った車に乗って帰ったこともある。

 不動産の購入も、ほぼ同じやり方だ。

 価格交渉が終わったのに、別の理由を持ちだして追加費用を要求されたら、その瞬間に取引は中止だ。

 さらに交渉するより、その物件を捨てるほうを選ぶ。互いに顔色をうかがいながら駆け引きするのは、うまくもないし好きでもないからだ。

 取引が下手な人にとっては、この方法がいちばんだ。だから株をいちいち売買するのも好きではない。いったん買ったらしばらく売らなくてもいいような会社を選ぶ。

 もっと言えば、

 一生売らないでいい会社がいちばんいい。

 こんなお話がある。

 昔、隣同士に暮らしていたふたりのうち、ひとりは田畑を売ってソウルのあの町この町と引っ越しを繰り返しながら、不動産の売買でかなりのお金を稼いだ。

 その代わり、子どもたちは毎年のように転校しなくてはならなかった。最終的に貯めたお金で江南(カンナム)のマンションを買って入居し、それを最後に投資人生を終えた。

 すると、昔住んでいた町の隣人が、故郷の土地が値上がりしてその町に10億円のビルを建てたという話を聞いた。リスはどんなに走り回っても、尻の重いクマには勝てないのだ。

 事業でも人でも、
品性が高く誠実な対象を見つけたら、

 別れずに一生を共に過ごすほうがいい。

<本稿は『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
キム・スンホ
スノーフォックスグループ会長。
韓国人として初めて、アメリカでグローバル外食企業を成功させた実業家。
創業したスノーフォックス社は、世界11カ国に3900の店舗と1万人の従業員を抱えるグローバル企業。年間売り上げ1兆ウォンの目標を達成、米ナスダック上場を控えている。出版社、生花流通業、金融業、不動産業も営みながら、農場経営者の顔も持つ。
韓国中央大学校ではグローバル経営者養成コースの教授も兼務。韓国と世界を行き来しながら、最近5年間で3000人あまりの事業家を養成。「社長を教える社長」として知られる。
本書は、インターネット上で動画が1100万回以上再生された「伝説のお金の授業」の書籍化。2023年まで4年連続でベストセラーとなり、100万部に到達した国民的な「お金の教科書」。

【訳者】
吉川 南(よしかわ・みなみ)

『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版) キム・スンホ

Photo by Shutterstock

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