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「朝食抜き、三角食べ」が体にいいとは言えない理由

ランチの後、しばらくして「眠くなる」「だるくなる」。あるいは十分に食べたはずなのにすぐに小腹が減る、集中力が途切れる、イライラする、首の後ろがずんと重くなる――。

こんな症状が出ている人に対して警鐘を鳴らすのは、北里大学北里研究所病院副院長・糖尿病センター長で『糖質疲労』の著者、山田悟医師。山田さんは食事をとった後に、血糖値の上がり幅が大きい「食後高血糖」、その後に急激に血糖値が下がる「血糖値スパイク」の影響で、食後に感じている体調不良を「糖質疲労」と名づけています。

糖質疲労の段階ではまだ病気とは言えず、今すぐに薬を飲む必要があるわけではないものの、放置しておくと、いずれドミノ倒しのように糖尿病・肥満・高血圧症・脂質異常症に至る可能性があるといいます。

こうした糖質疲労から逃れるために心がけたいことの1つが、食事。朝食をぬいたり、ごはんとおかず、汁物などを交互に食べる「三角食べ」をしていたりする人は注意です。本書から一部抜粋、再構成してお届けします。

『糖質疲労』

朝食ぬきは昼下がりの「糖質疲労」に直結!

 若い方たちの朝食欠食率の高さが問題になっています。摂取するカロリー量で健康や体重の管理を考える人にとっては、それは大きな問題ではないかもしれません。

 しかし、問題にすべきは、摂取するカロリー量よりも、食後高血糖です。その点では、朝食はしっかり食べたほうがよいのです。

 以前報告された研究の結果です。1日「3食きちんと食べる」「朝食ぬき」「朝食と昼食ぬき」の3つのパターンで、血糖値の上下動を比較した研究では、血糖値がもっとも安定していたのは3食を食べたグループでした。

 一方、朝食などどこかの食事をぬくと、次の食事の後の血糖値が急激に上昇していました。

 朝食ぬきは昼食後の食後高血糖(すなわち昼下がりの糖質疲労)を招くということです。

 しかも、別の研究の結果では、朝食のメニューだけ糖質を控えるようにレシピを届けるだけで、脂質を控える朝食メニューのグループよりも1日の血糖変動が安定していました。

 また、レシピ指導を受けたのは朝食のレシピだけで、それ以外の食事は自由に摂取してもらったのですが、1日のカロリー摂取も、糖質を控えたグループで少なくなっており、とくに異なっていたのが昼食のカロリー摂取だったのです。

 朝食のレシピは糖質を控えるレシピも脂質を控えるレシピも同じカロリーになるようにしてありましたので、1日のカロリー摂取に違いが出たのは、「朝食のたんぱく質・脂質が多いと、満腹感が続いて、昼食を中心にカロリー摂取がおのずと少なくなるから」ということだったのです。

 つまるところ、朝食はたんぱく質と脂質でしっかり食べる。ただし、糖質は軽めにする。それが1日の糖質疲労を解消する朝食スタイルなのです。

食後血糖値スパイクを起こす「三角食べ」

 聞くところでは、ごはんとおかず、汁物などを交互に食べていく「三角食べ」が、行儀がよく、消化もよく、栄養バランスもとりやすいとされていたそうです。

 一方、最近では、血糖値の吸収をゆるやかにするためとして、食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」を実行する人が増えているようです。
 確かに、献立の「食べる順番」は血糖値の上昇に影響します。そして「三角食べ」や「ベジファースト」より、糖質疲労の解消には「カーボラスト」です。

「カーボラスト」とは、糖質を最後に食べる、という食べ方です。ごはんやパンなど糖質に手をつけるのは早くても「1口目を食べ始めてから20分後」を推奨しています。

 食べる順番で血糖値の上昇に抑制をかけられることを最初に示した論文は、「米→野菜」「野菜→米」において「野菜→米」のほうが血糖値上昇を抑制していたというものでした。ここから「ベジファースト」という言葉が生まれたのですが、その後、「米→肉」「肉→米」「魚→米」の中で「肉→米」「魚→米」が同等に血糖値上昇を抑制したことが報告されています。

 これまでのところ、「野菜→米」「肉→米」で比較した研究がないので、これらの研究結果からわかることは、「野菜であれ、肉であれ、魚であれ、いずれが先でも構わない。米が最後であることが大切だ」ということです。必ずしもベジファーストである必要はなく、ミートファーストやフィッシュファーストでもよいのです。これらを私たちは「カーボラスト」と呼んでいます。

 さらに、「カーボファースト」「カーボラスト」「三角食べ」で血糖値の上がり方を調べたデータで、違いを確認すると、「カーボラスト」のパターンで食事をとった人だけ、血糖値の上下動がゆるやかで、食前から食中、食後を通じて概ね140㎎/㎗を下回っています。食後高血糖は起こらず、望ましい血糖値が保たれました。

「カーボファースト」と「三角食べ」は食事を始めて約30分で140㎎/㎗を超え、60分後のピーク時に血糖値が200㎎/㎗に迫った人もいました。そしてその後、反動で血糖値が急降下し、3時間後「カーボラスト」の人より低下していました。つまり、血糖値スパイクが発生しているのです。

 こうした血糖値の変動の背景には、たんぱく質や脂質をとることによって分泌される「インクレチン」というホルモンが、血糖値の上昇を抑制する作用をもっていることが関係しています。

 知っておいていただきたいことは、血糖値を上げるのは糖質だけだということです。糖質を後回しにし、たんぱく質や脂質を先にとれば、糖質が入っていく頃にはインクレチンが作用し始めている、というわけです。

 インクレチンの分泌が始まるのは、食事を始めた20〜30分後と考えられます。「早食い」は避けるべきで、糖質を食べるのは食事の1口目から早くても20分後と申し上げたのは、こうしたことが理由です。

<本稿は『糖質疲労』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>


【著者】
山田 悟(やまだ・さとる)
医師。医学博士。北里大学北里研究所病院副院長、糖尿病センター長。
1994年慶應義塾大学医学部卒業。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、2009年米医学雑誌に掲載された「脂質をとる食事ほど、逆に血中中性脂肪が下がりやすくなる」という論文に出会い衝撃を受ける。現在、日本における糖質制限のトップドクターとして患者の生活の質を高める糖質制限食を積極的に糖尿病治療へ取り入れている。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医、日本医師会認定産業医。著書に『糖質制限の真実』(幻冬舎新書)、『運動をしなくても血糖値がみるみる下がる食べ方大全』(文響社)など。「ロカボ」という言葉の生みの親でもある。

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