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magazineの語源が「雑誌」ではなかったという事実

 英語が苦手でも「マガジン(magazine)」と聞けば「雑誌」という意味だとすぐにわかるでしょう。それほどメジャーな英単語の一つです。ただ、その語源をたどると意外な事実に突き当たります。

『アッと驚く英語の語源』よりお届けします。

『アッと驚く英語の語源』 サンマーク出版
『アッと驚く英語の語源』

magazine/倉庫

 「雑誌」は英語でmagazineです。「少年マガジン」や「SFマガジン」など雑誌のタイトルにもなっているので、日本人にとってもお馴な染じみの英単語です。

 それではperiodicalという単語を知っていますか? 英語の中級者以上が覚える単語でちょっと難しいのですが、「定期刊行物」という意味です。

毎日発行の「日刊」がdaily

「週刊」はweekly

「月刊」がmonthly

1年に4回発行の「季刊」はquarterly

「年刊」はyearlyあるいはannual

 では日本語の“発音”は同じですが、「年鑑」は何と言うかご存じでしょうか? これはyearbookあるいはalmanacと言います。

 ふだん何気なく使っているmagazineという単語ですが、実は最初から「雑誌」という意味だったわけではありませんでした。アラビア語の「蓄える」から派生した「倉庫」「貯蔵庫」からきているのです。それがイタリア語の「magazzino」、フランス語の「magasin」(*)などを経て英語になりました。

(*現在のフランス語の「magasin」には「倉庫」の他に「商店」という意味もあります)

「雑誌」という意味が加わったのは18世紀

 最初は単に物を保管しておく場所・建物という意味だったのですが、次第に「弾薬や武器など軍需品の倉庫」というニュアンスが強くなりました。

 例えばpowder magazineと言えば「火薬庫」のことになります。powderは「粉」ですが、「火薬」という意味もあるのです。やがて自動小銃などに補充用の銃弾を装塡しておく「弾倉」の意味になり、さらにカメラや映写機にフィルムを瞬時にはめ込む「カートリッジ」もmagazineと呼ばれるようになりました。

 「倉庫」という意味のmagazineに「雑誌」という新しい意味が加わったのは18世紀のことでした。1731年に“The Gentleman’s Magazine”というタイトルの刊行物が発行されたのです。

 キャッチコピーは“A Monthly Collection to treasure up, as in a Magazine, the most remarkable Pieces”「もっとも注目すべき記事の数々を『倉庫』のように記憶にとどめる月刊コレクション」。興味深い物語や知識、情報などが数多く収載された刊行物を“知識の倉庫”になぞらえたのです。

 発行人はエドワード・ケイヴという商売人でした。知識人が興味を持つような読み物を集めて定期的に発行したらおもしろいと考え、このアイディアをロンドンの出版社や書店などに売り込んだのですが、ことごとく断られてしまいます。しかたなく自分自身で発行したところ売れに売れて巨万の富を築きます。

 この雑誌は1922年まで190年の間、一度も途切れることなく発行が続きました。サミュエル・ジョンソンという文学者もこの雑誌への寄稿がきっかけで世に出て、“文壇の大御所”と呼ばれるまでになったのです。

 日本で初めて「雑誌」という言葉が使われたのは、1867(慶応3)年に洋学者の柳河春三(やながわしゅんさん)が創刊した「西洋雑誌」。オランダの雑誌の翻訳版で、西洋事情や最先端の科学技術などを紹介したものでした。

<本稿は『アッと驚く英語の語源』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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【著者】

小泉牧夫(こいずみ・まきお)
英語表現研究家、英語書籍・雑誌編集者