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本の運命を変える!売れるPOP、売れないPOP ~BOOK TALK vol.4

Sunmark Web 「BOOK TALK」は、サンマーク出版のPR戦略室で働く新井俊晴と杉本耕亮が、「本の世界」で働く人たちの奮闘記をお届けする対談記事です!隔週月曜日に配信しています。

「ベストセラーの表紙の法則」を前号で見いだした2人。おかげさまで、多くの方に「記事見たよ!」と声をかけていただきました!これからも皆さんのお役に立てるようにがんばります!

BOOK TALK vol.3
「売れる本の表紙デザインに法則はあるのか?」
はこちら!

年間で7万冊近く出版されている「新刊」。書店さんに在庫している本は、1坪あたり400~500冊とも言われています。

その膨大な「本の森」から選んでもらう「運命の1冊」になるためには、お客さんの「心をつかむしかけ」が必要です。そのために営業・広告の2人は日々どんな努力をしているのか⁉︎

それではBOOK TALKスタートです!


お客さんの心をつかむPOPとは⁉︎

新井俊晴
みなさん、こんにちは!「BOOK TALK」へようこそ!サンマーク出版PR戦略室、”ひとり広告代理店”の新井です。

杉本耕亮
同じくPR戦略室、兼営業部、”ハイブリット営業マン”の杉本です!

新井 Sunmark Web「BOOK TALK」は、本の世界で働く人たちの奮闘記をお届けする対談です。書店さんや販売会社さん、著者さん、出版社のみなさん、そしてこれから出版業界を目指す方たちのお役に立てればうれしいです!

杉本 今回は、前回の「表紙デザイン」に続き、書店さんに何万冊とある本のなかで「どうすれば選ばれる1冊になるのか」を考えてみました!

テーマは今回もマニアック!
ズバリ「POP」です。



●「選ばれる1冊」になるために

新井 こないだ書店さんに寄ったらさ、ちょっと困ったことがあったの。

杉本 なになに⁉︎ いきなり、どうしました?

新井 新刊が多すぎて、どれを買っていいかわからなくなっちゃって(苦笑)

杉本 なにそれ⁉︎

新井 いや、だってさ、年間7万冊近くの新刊が出てるわけだよね。ってことは、1日に約200冊。もしも2か月書店に行かなかったら、1万2千冊も見たことない本が…。

微減はしているが、点数は7万冊付近をキープ。
※出版年鑑/出版指標年報の数値をグラフ化

それでそのときに思ったんだよ。書店にくるお客さんは、「どうやって本を選んでいるんだろう」って。だって、書店での「平均滞在時間」は18分くらいだよね⁉︎ そんな短時間で買う本を決めるって、なかなか大変だよね。

杉本 たしかになあ。書店に行く人には主に2種類いて、「英語を勉強したい!」とか「株の本がほしい!」みたいに目的が決まってる人と、いい本ないかなあってふらりと立ち寄る人。

こないだの新井さんは後者なわけでしょ。そういうときに「これ買う!」って思ってもらうのって、確かに難しいかもですね。

新井 そうなの!ちょっとした時間の調整とか、休日中に読む本を "なんとなく" 探そうとか。そういう人が世の中には結構多いんじゃないかな。

杉本 あれだけたくさんの本から、休日に読む一冊を選ぶのって大変ですよね。

新井 うん、やっぱり「外したくない」って思うし。こないだは決め手がなくって「今日はいっか…」って買わずに帰っちゃった。

杉本 僕ら出版社は、書店店頭で「この本、読みたい!」って強く思ってもらうような工夫と努力をしなきゃですね。

●選ばれるキーワードは「推し」

新井 「この本、読みたい!」って選んでもらう工夫かぁ。書店さんに訪問する「営業」目線で一番最初に考えることって何?

杉本 すごくシンプルですけど、まずは「面数」ですかね。この写真見てもらえますか?

丸善丸の内本店さん!
ご展開ありがとうございます!

この棚って7面×3段で合計21面置けるんですよ。っていうことは、21種類の本を陳列してもいいわけですよね。でも、ここではそうなってない。

新井 たしかに。全部で4種類しかない。

杉本 そうなんです。これを見ると、書店さんがこの4種類を「推してる」のがわかりますよね。ちなみに真ん中の段の『まっすぐ考える』はサンマーク出版の本です。

新井 そうか、「推し」かあ。人が推してるものって気になるけど、それは書店さんでも同じわけだね。お客さんからしたら、そんなに推してるならきっとおもしろいんだろうって思うもんなあ。

杉本 はい、書店さんが推してる本はお客さんの目に飛び込んでくるでしょ。それがわかりやすいのが「面数」というわけです。僕らは「多面展開」なんて言うけど、その「多面」にもいろいろな工夫をしてる書店さんがいます。

新井 どうゆうこと?

杉本 さっきの例は、「1箇所に複数面を並べる」やり方でしたよね。これはとても迫力がでる。一方で、たとえば同じ本を5面置くにしても、一面ずつ5箇所に置くような場合もあるんです。

新井 あーーサブリミナル(笑)

杉本 そうなんですよ。僕は書店さんによく行くので気づくんですが、一冊の本がビジネス書コーナーに置かれていたかと思えば、生活実用書のコーナーにも置かれていることがあるんです。これは偶然ではありません。様々な場所で見つけてもらうために、書店さんが「推し本」の見せ方を工夫しているわけです。

新井 ああ、なるほど。たしかに、書店さんをふらーっと歩いていると、「あれ、この本さっきも見たな...」ってときあるなあ。

杉本 そんなときどう思います?

新井 この本、人気なのかなあって...あ!!

杉本 でしょ。知らず知らずのうちに書店さんの「推し」が心に染み込んでくるわけです。

新井 わあ、書店員さんってすごいなあ。僕らの立場からすると、そうまでして書店さんが「置きたい」っていう本を作らなきゃだね。

杉本 本当にそうなんですよ。で、いままさにそうなりつつあるうちの本の話をしてもいいですか?

新井 おっ、得意の宣伝くるのか⁉︎

●ひと目で「推し」とわかる手づくりの魔法

杉本 今まさに書店さんが多面展開をしてくださっている本がサンマーク出版にあります。ジャジャーン!

ジュンク堂書店 那覇店さんの大展開!!

新井 ひーーー!なんという展開!これはいま絶好調の『糖質疲労』。わが社のイチオシ!

杉本 声がでかいなあ(笑) 沖縄県のジュンク堂書店那覇店さんの展開です。なんと14面。本当にありがたいですよ。

それでね、新井さん。なんか気づきません?

新井 たしかに気になってた。窓の向こうに女性が...

杉本 どこ見て、何気づいてんだよ!違いますよ。ポスターです、ポスター!

新井 あーーポスターね。どーーーんって置いてくださってる。しかも、本の右側には小さめのポスターも。

杉本
 そうです。僕たちの業界では「販促物」なんていう言い方もしますよね。お客さんに注目してもらうためのポスター。主に3種類あります。

5万部突破!『糖質疲労』の店頭販促物

A POP...ハガキ大のもの
B パネル...A4.A3サイズのもの
C ポスター...壁などに貼る大きなサイズのもの

新井 たしかに、僕らもこの3種類をつくって、書店さんが使いやすそうなものを持参するものね。POPとパネルとポスター。全部ひっくるめて「POP」ね。

そもそもなんだけどさ、POPの役割ってなんなんだろう? 本の内容を伝えるだけなら、表紙が見えてればいいわけじゃん。

杉本 いい質問ですね~!

新井 (えっ!何この池上彰感)

ニューバランス(左)とナイキ(右)


杉本
 役割はこの2つだと思います。

❶補完
表紙からは読み取れないことを伝える

❷強調
他の本よりも「目立たせる」

ひとつ目の「補完」。表紙や帯に書かれている情報の「足りない部分」をPOPの言葉で補ってあげるんです。本そのものだと表紙に書ける情報は限られてるでしょ。

だから、たとえば『糖質疲労』の場合は、「これは病気にならないための予防本ですよ」ってことをきちんと伝えておきたい。

新井 そうか、だから「病気の入り口を封鎖せよ」って言葉をPOPに大きくいれてるのか。っていうかさ、この言葉自分で考えたように言ってるけど、社長の黒川さんが考えたやつじゃん!(笑)

杉本 いいんですよ、誰が考えたって。猫の手も借りたいんだから、社長だって使っちゃえばいいんです。

新井 でた、恒例の社長批判! まあでもたしかに、家電量販店なんかだと、「補完」の役割を各メーカーから派遣されてる店員さんがやってるもんね。お客さんは機能のことをすぐ聞けるし。

でも、書店さんの棚の前に出版社の営業担当が立ってるわけにいかないしなあ。

杉本 はい、それやったらいったい何社の営業担当が立つことか。たぶん、書店さんがこんな感じになりますよ。

東京の満員電車

新井 えーと、だからPOPで代弁するんだね。「補完」はわかった。ふたつ目の「強調」は?

杉本 「強調」は「この本、オススメですよ!」と、他の本よりも目立たせるという意味です。スーパーとかだと「オススメ!」「特選!」みたいなPOPがついてたりしますよね!。つまり、書店さんの「推し感」の演出というか。

新井 やはり大切なのは「推し」か。

杉本 はい、そして...書店さんの推しの最たるものが「手づくりPOP」です。

新井 あーーー!

杉本 書店を歩いていて、書店員さんが書いた「手づくりPOP」がついていたら、その本は即買いです!

新井 即買い…!

杉本 書店員さんってジャンル毎に担当がついているケースが多いんですが、みなさんとにかくお忙しいんですよ。接客はもちろん、品出しもあるし、僕みたいにうるさい営業がやってくるし(苦笑)

新井 たしかに、それは大迷惑だね。僕が書店員さんだったら、杉本くんが見えた時点で隠れるもん。

杉本 おい! えーと、書店員さんはそんな忙しいなか、どうしてPOPをわざわざ書いたり手づくりしたりするんだと思います?

新井 よほどの「推し」だから⁉︎

杉本 そうです。それしかないですよ。手づくりPOPは、「この本、本当に素晴らしいんです!ぜひ読んでください!」っていう書店員さんの心の叫びなんですよ。これ見てください!

『元カレごはん埋葬委員会』(小社・刊)の
書店さん手づくりポスター

うちの『元カレごはん埋葬委員会』という小説を読んで感激してくださった書店員さんが、わざわざ書いてくださったんですよ。デザインもかわいいし、右下にはモチーフまでつけてくださってる。

新井 これはすごい。出版社からしたら涙が出るくらいうれしい。こういう書店さんの「推し」が手づくりPOPに表れるわけだね。すごくよくわかった!

杉本 はい、僕らは書店員さんが「これなら推せる!」って本を作らなきゃいけないですよね。

●売ろうとしない。釣ろうとしない。

新井 宣伝担当としてふだんPOPをつくる立場だから、最後にこれだけは言っておきたい。つくるときの絶対条件は、お客さんと書店さんに対して「誠実」であること。

杉本 うん、本当に。むかし社長の黒川さんに言われたことを、メモに書いていまでもデスクに貼ってるんですよ。

売ろうとしない。
釣ろうとしない。

新井 わかるなあ。「売ろう売ろう」と思うとさ、ちょっと誇張したり、ありもしない「いいこと」を付け足そうとしちゃうでしょ。でも、絶対にしちゃいけない。

杉本 「釣ろう」とすると、さらに表現が過剰になっちゃう。よく「一冊売れた」みたいな言い方するけど、それは「ひとりのお客さん」が買ってくれたわけですよね。そういうお一人おひとりに「誠実であろう」とするだけで、使う言葉が変わってくる気がします。

新井 うん、でもさ、すぎもっちゃん。

杉本 はい。

新井 最後に、いいこと言おうとしてない(笑)

(バレてる…)

杉本 えーと、えーと...まあ最後の締めなんで。でもこれは本音なので、僕はとても誠実な男ですよ(キリッ)

新井 また時計見せてんじゃん。


手のひらに、一冊のエネルギー。

サンマーク出版の新井と杉本がお送りいたしました!

BOOK TALK vol.3
「売れる本の表紙デザインに法則はあるのか?」
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