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記憶に自信のない人は「とにかくメモ」を意識しよう

「本を読んでも、映画を見てもすぐに内容を忘れてしまう」

「仕事でうっかりミスが多くなってきた」

「資格試験や昇進試験の勉強をしても、全然覚えられない」

あなたもこんなふうに思っていませんか? 物事を意識して暗記することは、なかなか難儀な話。覚えるためには、とにかく「書く」ことが基本。そしてメモを残しておくことが大事です。

脳の仕組みを研究した精神科医・樺沢紫苑さんが「記憶」と「学び」について20年以上の試行錯誤をわかりやすくノウハウとしてまとめた『記憶脳』から一部抜粋、再構成してお届けします。


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★書くことはつまり、記憶すること

 電車に乗っていると、チェックペンで真っ赤に染まった教科書に、緑のチェックシートをのせて、必死に暗記事項のチェックをしている高校生を見かけます。赤で塗った部分にチェックシートをかぶせると見えなくなるので、教科書が即席の問題集になるのです。

 電車の中で復習するときは、頭の中で答え合わせをするのもしょうがないのですが、家で勉強するときは、必ず書きながら復習しないと、その効果が弱まってしまいます。

「書く」ということは、運動神経を使って、手と指の筋肉を動かすということです。単なる脳内に存在していたデータが、「行動」に影響を及ぼしたわけです。

 脳は「行動に影響を及ぼさないデータ」と「行動に影響を及ぼすデータ」の、どちらを重要なデータだと判断するでしょう? 当然のごとく「行動に影響を及ぼす」ほうが、重要度は高いと判定します。

「アウトプットした」ということは、そのまま「行動に影響を及ぼした」ということになります。アウトプットすれば記憶に残るわけですが、「書く」という運動をともなうアウトプットは、「頭の中での復唱」と比べて、はるかに効果が高いのです。

「何かを覚えたい」と思ったのなら、それを書いて、書いて、書きまくればいい。「書く」ことが、「記憶する」ことそのものと思ってもいいくらいです。

★ メモをとるだけで忘れにくくなる3つの理由

「最近、物忘れが増えてきました。認知症じゃないでしょうか?」という相談は、精神科ではよくある相談の1つです。認知症の検査をひと通り行っても、軽度の認知症の場合は、認知症かどうか診断するのに迷う場合もあります。

 そんな場合は、「忘れないように、何でもメモをするようにしてください」と指示を出します。それから、1ヶ月して様子を尋ねたとき「メモのおかげで、物忘れが減りました」という患者さんは、認知症ではない可能性が高い。

 メモをすると物忘れが減る。記憶力が衰えている高齢者でも、「忘れる」のを阻止することができるわけですから、そうでない人がメモの効果を上手に活用すれば、さらに大きな記憶効果が得られるはずです。

 例えば、私の前著『読書脳』(サンマーク出版)でも、本を読みながら本の余白にドンドン、メモをしていこう! といったことを書きました。実際にやってみるとわかりますが、本の内容を忘れづらくなることを実感するはずです。

 なぜメモをすると忘れづらくなるのでしょう。それには、以下の3つの理由が考えられます。

(1) メモは、復習1回分に相当する。
(2) メモもアウトプットになる。運動神経を刺激して、記憶を強化する。
(3) メモは、「記憶の索引」を作る。

 どうして、メモをすると忘れづらくなるのか。

 それは、「メモをする」こと自体が、アウトプットになる、つまり復習1回分に相当するからです。手帳やスケジュール帳にメモすると、後から見直すことができます。それらを開くたびに過去の書き込みもついでに見直せば、これも復習1回分に相当します。

 メモすることで、ただ聞いただけでは忘れてしまうかもしれない情報に、何度もアクセスすることができるようになるのです。

「1週間に3回復習すれば忘れなくなる」という記憶の法則がありますが、メモするだけでその1回分に相当するわけです。

 メモするだけで記憶に残る。忘れたら困ることは何でもメモしまくる。そんな習慣をつけたいものです。

★ 紙orデジタル? メモはどこにするのが効率的か

 紙とデジタル。メモはどこにするのが効率的か、という議論がよくあります。

 私の考えとしては、「いつも持ち歩いているものに今すぐに書き込める」のであれば、紙でも、デジタルでもいいと思います。スマホをいつも持ち歩いているならスマホにメモするのもいいでしょう。

 私は、仕事中は基本的に常にノートパソコンの前にいるので、ノートパソコンの「付箋」アプリを使っています。「付箋」アプリを使うと、パソコンのデスクトップ上に、「付箋」のようなメモスペースが常にある状態になり、書いたり、消したり、はがしたりが自由にできます。

 何かメモをしたいときは、デスクトップを表示するだけ。「付箋」アプリに1秒でアクセスできるのでとても便利です。

 デスクトップ上に何枚も付箋が貼られていると、それによって注意が分散してしまうので、付箋はデスクトップの右上に1枚だけ貼り付けて、全てのメモを1枚の付箋に書いていきます。

 デスクトップを開くたびに、「付箋」に書いたメモが自然に目に入ってきますから、「復習」の効果も得られ、自然に記憶に刻み込まれていきます。

 時間のあるときに「付箋」を整理して、終了した案件は消去。長期に保存したいアイデアは内容を分類しつつ、別のファイルにコピペするか、ノートに書き写します。

 このメモの「見直し」と「整理」のプロセスがとても重要です。時間を置くことで「一瞬のたわいのないひらめき」が「熟成されたかけがえのないアイデア」に変化している場合もあります。

 紙の付箋に書く場合もありますが、紙に書く場合は「今日中に処理すべき案件」に限定されます。机の前に貼って、何とか当日中に処理して、破ってゴミ箱に捨てます。

 紙の付箋がたまってきて、何枚も貼られていると注意が散漫になり、仕事効率も下がる可能性がありますので、「日をまたぐ案件」「数日後に確認を要するアイデア」などは、デジタル付箋に書くようにしています。

<本稿は『記憶脳』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

【著者】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家。1965年札幌生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年から米国シカゴのイリノイ大学精神科に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信によるメンタル疾患の予防」をビジョンとし、YouTube(48万人)、メールマガジン(12万人)など累計100万フォロワーに情報発信をしている。著書46冊、累計発行部数240万部のベストセラー作家。シリーズ累計90万部の『アウトプット大全』(サンクチュアリ出版)をはじめ、『神・時間術』(大和書房)、『ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)、『言語化の魔力』(幻冬舎)、『読書脳』(サンマーク出版)など話題書多数。

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