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「巻き肩」を放置している人に知ってほしい身体の危険信号

 肩が体の前に出て、内側に巻いている状態は「巻き肩」と呼ばれます。

 これを「からだにとって諸悪の根源」と指摘するのは、『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』の著者で整体家の宮腰圭さん。いったい何が問題なのでしょうか。

『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』

肩こりのほとんどの人に共通する「あること」とは?

 こりを根本的に改善させるには、そこの筋肉が伸ばされたり引っ張られないような「建物」、つまり、骨格をつくらねばなりません。そして、筋肉が伸ばされたり引っ張られるような姿勢を、できるかぎり長く続けないことに尽きるのです。

 こりを根本からなくす「建物」をつくること。これが、拙著『「巻き肩」を治す』をとおして私がお伝えしたいことです。

 その重要な屋台骨、それが、「背骨」と「肩甲骨」、そして「骨盤」です。これらが正しい位置にあること。これが、肩こりやねこ背を遠ざけ、健やかな生活を送るのには欠かせません。

 そのうちのふたつの「背骨」と「肩甲骨」の位置を変えてしまうもの、それは何でしょうか。

 その「黒幕」についてお伝えしましょう。

 私は整体家になってから、これまでの18年間で4万人以上の骨格を見てきました。たくさんの方々を拝見するなかで、とてもおもしろいことに気がつきました。

 それは、自然に直立の姿勢をしたとき、「手のひらが後ろに向いている人」のほとんどは、肩がこっている。

 ということです。

 手のひらが後ろに向くって、どういうこと? と思いましたか?

 これは現代の日常生活と大いに関係があります。「手のひらが後ろに向く、つまり手の甲が正面を向いてしまう」という状況は、普段のデスクワークでパソコンを操作しているときの姿勢そのものなのです。

 パソコンに向かうと、手のひらを下に、キーボードを打ちますよね。あたりまえですが、手の甲は上、手のひらは下を向いています。普通に立っているときと比べると、このとき手首は内巻きに回転しています。

 手首だけではありません。同様に、肘も、立っているときよりも少し内側に回転していませんか?

 手首と肘が内側に向いているこの状態では、肩も内側に向いてきます。

 そう、普段のデスクワークによって、手の甲が正面、手首も肘も内側に回施し、それにともなって肩も日常的に「巻き肩」となってしまっているのです。

人はこうして「巻き肩」になる

 では、歩いているときはどうでしょう。歩行のときを思い出してみてください。

 左足を前に出すと、右手が前に出ます。すると下半身が右回りに向かうのに対して、バランスをとるために、上半身は左回りに回転します。これでまっすぐ歩けますよね。

 次に前に出すほうの手を、図で見てみましょう。

 右手を前に出したとき、上半身は、左回りに動きます。肩から肘にかけても同じように、左回りに回転する、つまり、からだの中心に向かう内巻きの力が伝わります。

 すると肘から手首にかけては、それよりもさらに内巻きの力が加わります。なぜなら腕の下のほうにいけばいくほど、つまり腕の付け根から遠くにある場所ほど、回転や「てこの作用」により、向心力が強まるからです。

 手を前に出したときに、手首が内巻きになる傾向の強い人、つまり、手のひらが後ろに向いてしまう人ほど、普通に立っているときでも、手のひらが後ろを向いています。

 この状態で普段から歩いていると、パソコン操作のときと同じように、手首から肘、肘から肩へと、内側へ回転する作用が働き、立派な「巻き肩」を生んでしまうのです。

 この歩き方を一日中、さらに何年も習慣として繰り返していると、いつしか肩は内巻きになり、ともなって骨格も固定されてしまいます。

肩こり、首痛、ねこ背を引き起こす「肩甲骨」の位置

 姿勢がよくなれば、肩や背中がこらなくなるというのは、誰もがあたりまえのように知っています。背骨と肩甲骨が正しい場所にあれば、肩こりは起きません。

 それなのに、背骨には問題がなくても、肩がこっている人がたくさんいるのは、手の甲が正面に向いていると、手首からも逆行的に、肩が内巻きに強制されてしまうからです。

 物理的に巻き肩になればなるほど、肩甲骨の位置はそれにともなって外側へと移動しますから、背中側が張ってくるのは当然のことなのです。

 肩甲骨が中心から離れれば離れるほど、背中側の筋肉は引き伸ばされます。伸ばされた筋肉内の血流は必然的に悪くなり、老廃物が蓄積することで肩にまるで石でも乗せたような重だるさや、背中のどこかに張りやイタ苦しさを感じるようになります。

 背骨に異常がなくても、肩こりが起きるのは肩甲骨が外側に移動してしまっているからなのです。

 また同じように、背骨には何の問題もないのに、ねこ背に見えてしまう人もたくさんいます。一般的には背中の丸い人を「ねこ背だ!」「姿勢が悪い!」ととらえがちですが、肩が内に巻いているだけでも、肩甲骨の平面部分(三角形部分)が横に向いてしまいねこ背に見えます。

 ではなぜこのように肩甲骨が横向きになると、ねこ背に見えてしまうのでしょうか。

 それは、肋骨の形にあります。肋骨は背骨からスタートして、ぐるっと半周し胸きよう骨こつ(胸の真ん中にある骨)という骨につながります。ちょうど半円形の樽たるのような形になっています。

 肩甲骨は肋骨の上を、トロッコのように移動するので、肩が内に向けば向くほど肋骨の上を前進し、横から見ると、あたかも背中が丸まっているように見えてしまいます。

 せっかく背骨には問題がないのに、肩が巻き肩になっているだけでねこ背に見られたり、毎日肩こりで苦しんでいるのは、なんだか損な話だと思いませんか? それくらい、巻き肩は、「もったいない」ことなんです。

 このように、諸悪の根源である巻き肩を招いていた「黒幕」は、じつは、「手のひらの向き」にあったのです。手の甲が正面に向いていることが、あなたの肩こりやねこ背、姿勢の悪さを招いていたのです。

<本稿は『肩こり、首痛、ねこ背が2週間で解消!「巻き肩」を治す』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock


【著者】
宮腰 圭(みやこし・けい)
整体家/「骨と筋」代表/「アカデミー骨と筋」主宰

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