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「記憶力が落ちた」と嘆くあなたに知ってほしい希望

「学生時代は丸暗記が得意だったのに、大人になった今、同じように勉強しても何も頭に入ってこない」

大人になってから、資格取得や昇級試験、語学の勉強など仕事で必要にかられて勉強を始めた人もいるでしょう。しかし、いざ学生時代と同じように勉強を始めてみたら、大人になった今の物覚えの悪さに愕然とし、つい「年齢のせい」にしていないでしょうか。

残念ながら、大人になってから、学生時代の勉強法をなぞるように勉強をしても、費やした時間に比例する効果は得られません。なぜ? そしてどうすればいいのでしょうか? 

累計11万部超のベストセラーで脳内科医・加藤俊徳さんの著書『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』から一部抜粋、再構成してお届けします。

『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版) 加藤俊徳
『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』

◎オススメの本


大人になると丸暗記はできなくなる

 年齢とともに、「最近、記憶力がめっきり落ちて」「物覚えが本当に悪くなった」なんていう愚痴を言ったり聞いたりする機会は多いでしょう。

 何度も言いますが、これこそが間違いのもと。

 大人になっても記憶力が衰えることはありません。

 変わったのは、記憶するための脳のシステムです。

 そのことに気づいて大人の脳のシステムに沿った勉強法に変えていけば、これからの人生で記憶力について愚痴ることはなくなりますし、勉強の効率は何倍にも跳ね上がります。

 脳の成人式は30歳です。

 聞いたものをそのまま吸収できる学校での勉強に適した「学生脳」は18歳頃から徐々に衰え始め、それ以降、10年ほどかけて対応力や創造力など、より高度な機能を備えた「大人脳」へと脳のシステムが切り替わっていきます。

子どもは知らない言葉でも記憶できる

 子ども時代にとても勉強ができた。これを脳科学的に翻訳すると「耳から聞いた情報を素直に記憶する力が強かった」ということになります。

 聴覚系から記憶系へとつながる脳番地のルートがいちばん強くて使いやすいのが子どもの脳の特性で、学生時代の勉強は暗記が主体なので、このルートがしっかりしている子どもほど勉強がよくできるという評価になりやすいのです。

 しかし、年齢を重ねてさまざまな経験や情報に触れるなかで、他のルートも開通していき、学生脳ルートは徐々に使われなくなっていきます。

 「無意味記憶」といいますが、子どもは知らない言葉でも記憶することができます。

 たとえば、子どもの頃は、読み聞かせの絵本で初めて聞く「親孝行」という言葉を、音の響きでそのまま覚えられます。そして、だいぶ時間が経ってから「おやこうこうってどういう意味?」などと聞いて親を驚かせます。

 最初に聞いて覚え(聴覚系→記憶系)、覚えてから理解する(記憶系→理解系)という順番で脳を働かせているのです。

 語彙力の少ない子どもの脳細胞にとっては、言葉の新しい響きさえも新鮮で興味の対象となり、意味のわからない言葉でもスッと受け入れられます。

「覚えよう」と思うより「理解しよう」が正解

 これが大人になると、子どもの頃より思考系や理解系が発達しているので、「忖度? それってどういう意味だろう?」と、記憶するよりも前に疑問が湧いてきて、意味を理解してから記憶するという「意味記憶」が優勢となります。

 大人の場合、単純に「記憶しよう」と思っても、悲しいことに記憶系脳番地は思ったように働いてくれません。

「忖度という言葉があるんだ。そうか、僕も上司に忖度して意見を呑み込むことがあるな」と自分だったらどう使えるか理解してはじめて、記憶できるという仕組みになっています。

 つまり、何かを覚えたいときは、「覚えよう」と思うより「理解しよう」と頭を働かせるのが正解。

 学生時代の脳には体力がありました。

 大人は学生時代に比べて体力では劣ります。

 でも、高校野球でいちばん球速が出るわけでもなく、プロになってから新記録を生み出せるもの。

 大人には大人なりの脳の使い方があり、それができれば学生時代よりも記憶力を高められるのです。

 この脳のメカニズムを無視して、ひたすら丸暗記をしようと思ってもうまくいかないのは当然で、記憶力が落ちたように感じてしまうのは必然なのです。

<本稿は『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

【著者】
加藤俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。
昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、脳活性音読法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。独自開発した加藤式MRI脳画像診断法(脳相診断)を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。脳の成長段階、強み弱みの脳番地を診断し、薬だけに頼らない脳番地トレーニング処方を行う。著書に、『脳の強化書』(あさ出版)、『脳の名医が教える すごい自己肯定感』(クロスメディア・パブリッシング)、『不安を力に変える』(扶桑社)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など多数。

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