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大人が付箋を貼っても線を引いても覚えられない訳

勉強をする際、テキストの大事なページに付箋を貼ったり、重要な言葉や文章に蛍光ペンなどで線を引いたりする人は多いと思います。

しかし、残念ながら、学生時代とは脳の仕組みが変わっているので、大人脳には効果的ではありません。いったいなぜ?

累計13万部超のベストセラーで脳内科医・加藤俊徳さんの著書『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』から一部抜粋、再構成してお届けします。

『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』


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得られるのは〝やった気分〟だけ

 大人の場合、付箋を貼ったり線を引いたりして得られるのは、〝やった気分〟だけで、しっかり記憶に残すことはできません。

 なぜなら、働いている脳番地が少ないから。

「お、ここは重要そうだな」というセンサーが働いて、忘れないようにと付箋を貼る。

 なんだか勉強した気にはなりますが、脳の働きを見てみると、文字を目で追うだけの黙読では、メインの視覚系脳番地以外はほとんど働いていません。

「いや、いや、ちゃんと覚えようと意識して線を引いているよ」と反論したくなる気持ちもわかりますが、学生脳ならともかく、大人脳の記憶系脳番地は怠け者なので、自分一人では働こうとしません。

 大人になったら線を引いた程度では記憶系脳番地に伝えるメッセージとしては弱すぎて、暗記など到底できないのです。

 大人脳で効率的に勉強するためには、一つの脳番地に頼るような方法ではダメで、脳番地のトップ3[思考系・理解系・記憶系]を巻き込みながら、さまざまな脳番地を一気に働かせることが重要です。

 脳の神経細胞は年齢とともに減少していきますが、神経細胞同士をつなぐネットワークは年齢に関係なく成長します。

複数の脳番地を同時に働かせることは、このネットワークを強化することとイコール。

 少なくとも3つ以上の脳番地を動かすことで、脳はフル回転しはじめます。ネットワークを強化すればするほど脳全体の機能も向上させることができるのです。

脳は記憶するより忘れるほうが得意

 勉強する上で強化したい記憶力について正しく理解するためにも、脳の記憶システムについてお話をしておきましょう。

 大前提として、脳は記憶するよりも忘れるほうが得意です。

 脳には1ペタバイトともいう膨大な記憶容量があると言われていますが、見聞きしたものをすべて記憶していたら、あっという間に容量オーバーになってしまいます。

 また、脳は身体の中でも膨大なエネルギーを使い、大量の酸素を消費する器官であるため、できるだけ省エネモードで働きたがるという特性があります。

 だから脳は、重要と判断したもの以外はどんどん忘れていくことで、効率よく頭を働かせたがっているのです。

 私たちが目や耳から集めた情報は、いったん、脳の「海馬」へと送られます。

 記憶は大きく「短期記憶」と「長期記憶」に分けられますが、海馬が担当するのは短期記憶。

短期記憶は、いわば、記憶の一時的な保管庫のような存在です。

 そして、保管庫であると同時に、保管庫の管理を一任された〝記憶の調整役〟としての役割も持ち、短期記憶から消去するものと長期記憶として残すものを選別しています。

脳は命に関わる重要な危機や情報を記憶

 海馬はタツノオトシゴを横向きにしたような形の小さな器官ですが、その役割の大きさは調整役と呼ぶにふさわしく、記憶力を上げていくためには海馬に長期記憶へとつながるルートの鍵を開けてもらう必要があるのです。

 ところが、海馬はすぐに居眠りしやすく、サボりやすい性格です。

本来、そんな海馬が長期記憶に残そうと覚醒するのは、自分が生き延びる上で必要な危機や命に関わるような重要な情報です。

 英文法も法令も計算式も海馬からしてみれば何の魅力も感じません。

 そこを何とかして、海馬に「やばい! 重要だ」と思わせて長期記憶へと送り込む!

 それが、大人の暗記法のヒントでもあります。

<本稿は『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです。大人の暗記法の詳しい方法は本書で解説しています>

【著者】
加藤俊徳(かとう・としのり)
脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。
昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、脳活性音読法の提唱者。14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。独自開発した加藤式MRI脳画像診断法(脳相診断)を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。脳の成長段階、強み弱みの脳番地を診断し、薬だけに頼らない脳番地トレーニング処方を行う。著書に、『脳の強化書』(あさ出版)、『脳の名医が教える すごい自己肯定感』(クロスメディア・パブリッシング)、『不安を力に変える』(扶桑社)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など多数。

(イラスト:うのき)
Photo by Shutterstock


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