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「脳の使いこなし方」目標を達成できない人と実現できる人の決定的な差

 ビジネスでもプライベートでも、大きな目標を立ててゆったりとした予定を組んで物事に取り組むと全然はかどらないのに、時間がない時ほど集中してやれることがあります。

 実は脳の仕組みにその秘密があります。これをうまく使って効率的に物事を運ぶコツとは? 『新版 自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング』よりお届けします。

『新版 自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング』 サンマーク出版
『新版 自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング』

「期限」はパワーの源

 人生の行動計画を立てようと決めて、今の自分の立ち位置を分析したり、これからどうしようかと考えだしたりすると、一般論はまったく当てはまらなくなる。

 ところで、休暇を決めると、その前日までに自分でも信じられないほど仕事が片づいたという経験はないだろうか。それは「期限」が目の前に立ちはだかったからだ。休暇の前に終えなければならない仕事があるとなれば、人はがむしゃらにそれを片づける。

「期限」はパワーの源である。期限が迫れば、今のプロジェクトを完成させないわけにはいかなくなる。

→目標にとって期限とは、銃の引き金のようなもの。

★脳には「期限に間にあわせようとする力」が備わっている

 期限を決めると、人は前進しないわけにはいかない。期限までに目標を達成できるように、一生懸命に働くようになる。期限が近づくと、結果を出すために集中して取り組むようになる。期限があれば、人はゴールに到達するまでコツコツと前進しつづける。

 並はずれた意志の力も、強力な動機も必要ない。期限に間にあわせようと突き進む力を人に発揮させるのは脳のRAS(Reticular Activating System=網様体賦活系)というほ乳類の脳幹にある「網様体」という神経の集まりで、体の生命活動を維持する働きである。

 1キロの重りを持ち上げようとしているとしよう。脳は体と筋肉に指示を送って、その重さを持ち上げる準備をさせる。40キロの重りを持ち上げようとしたときも、脳は体にその重さを持ち上げる準備をさせる。

 だが、本当は40キロの重りを1キロだと思っていれば、体は重りを持ち上げようとして筋肉を痛めてしまうかもしれない。脳は体に1キロの重りを持ち上げる準備しかさせていないからだ。

 期限を決めたときも同じ効果がある。期限を決めると、それまでに仕事を片づけられるように、脳は体に力とエネルギーを送りこみ、「緊急事態」と認識させる。

「期限(デッドライン=死線)」という言葉が最初に使われたのは一八六四年、アメリカはジョージア州のアンダーソンビル刑務所だった。ここは当時、南北戦争中で南軍が北軍の捕虜を収容していた。

「柵の内側に沿って幅20フィート(約6メートル)の範囲内はデッドラインとし、昼夜を問わず、立ち入りを禁ずる。入ろうとした囚人は撃つ」

「制限時間」が設けられたスポーツでも、同じ現象が起こる。制限時間が近づくにつれて、選手の動きはスピードが増し、激しくなり、見るからにエネルギーが高まっているのが感じられる。

 期限があると、目標への集中力が高まって結果を出そうとするので、障害があっても、周囲から批判的な意見を言われても、くじけなくなる。

→期限を決めて書きこむと、脳が体に「緊急事態」の指示を送りこみ、期限に間にあうように行動しはじめる。

 期限を決めたら、「書く」必要がある。書きこむとRASが稼働して、計画どおりに行動しようという思いが強くなり、おそれや不安、迷いがふっきれ、ぐずぐずしてはいられないという気持ちになる。

 達成しようとする目標を決めたら、見るもの、読むもの、聞くことのなかから、あらゆる情報を集めよう。目標を決めるとすぐに、それを達成するにはどうすればいいかという答えが身のまわりから見つかるようになるはずだ。

 知るべきことがいろいろとわかり、自分にとっての優先度がはっきりしたら、「Aリスト」なり「Bリスト」なりに入れて、期限を書きこもう。

★効果的に「期限」を設定するための3つの方法

 期限を効果的にする方法は次のとおりだ。

現実的であること。実際に達成できそうな期限を切る。

短めであること。期限は短めにするほうが、よい結果を出せる。

すぐに実行すること。何度も考え直してはいけない。すぐに行動を開始すること。決めた期限までに達成できそうにないとわかって、延ばさなければならないことはあるが、始めるのを引き延ばさないこと。達成できそうな期間を必ずしも正確に見積もる必要はない。

→始めるときから、うまくやる必要はない。だが、始めなければ人生はうまくいかない。

★すぐに達成できそうな「小さな目標」に切り分ける

「どうやってゾウを食べる? 一口ずつさ!」と、昔からのことわざにもある。

 目標は、すぐに達成できそうな小さな目標に切り分けよう。そうすれば、少しは気が楽になる。

 今の自分の立ち位置から目標達成までの道のりを考えすぎると、始められなくなる危険性が高い。

 ゴールまでの道のりが長ければ、1年にこれだけ、1か月にこれだけ、1週間にこれだけ、1日にこれだけ、1時間にこれだけ進むというように、小さく分けるとよい。1つの大きなプロジェクトを小さな作業単位に分けると達成しやすくなって、中止することなく最後の最後までやりきることができる。

 道のりの途中に現実的な小さなゴールをいくつも設けると、つねに少しずつ積み重ねているという感覚も生まれるので、がんばって先へ進む意欲が高まる。最終的なゴールから逆算して、たくさんの小さなゴールに分けるようにするとよい。

 小さなゴールも、そこへ到達するまでに、もっと小さくて、もっとたくさんのゴールに分けることができないかどうかを考えるとよい。すべて論理的に逆算していけば、今しなければならないことは何か、それにはどのくらいの時間を割り当てられるかがわかる。

★「頂上」ではなく「次のステップ」を見つめよう

 1981年、アルバート・バンデューラとデール・シュンクという研究者が、7歳から10歳までの子どもたちを集めて、あるテストをした。

 子どもたちを2つのグループに分け、一方のグループには、算数の問題を1回に6ページ与えて解答させ、それを7回繰り返した。もう一方のグループには、同じ42ページの算数問題を一度に与え、それを7回に分けて解答させた。

 その結果、1回に6ページずつ与えたグループのほうが、7回分の42ページを全部一度に与えたグループよりも、全問解答するまでの時間が短く、正答率も高かった。

 すぐに達成できそうな小さなステップに分けると、それだけの効果が生まれる。達成できると思えば自信を持って物事にあたることができ、目標の大きさにおじけづかずにすむ。

<本稿は『新版 自動的に夢がかなっていくブレイン・プログラミング』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by shutterstock


【著者】
アラン・ピーズ&バーバラ・ピーズ(Allan Pease Barbara Pease)
講演家、作家
ビジネスにおける人間関係を語る第一人者として、数々の著書を執筆。18冊がベストセラー入りし、そのうち10冊がベストセラー第1位を獲得。セミナーも毎年30か国にのぼる国々で開催している。日本でも『話を聞かない男、地図が読めない女』『嘘つき男と泣き虫女』などが大成功を収めた。100か国以上で出版され、55の言語に翻訳された著書の累計発行部数は3000万部を突破。各国の多数のメディアにも登場する。夫妻の著作をもとにテレビ番組9シリーズ、舞台4作、映画1作が制作されており、なかでも映画は観客動員総数が1億人を超えるヒットを記録した。

【訳者】
市中芳江(いちなか・よしえ)