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ChatGPTを使いこなす人が押さえている決定的なコツ

 ChatGPTが得意なのは文章校正や要約、翻訳。一方で、創造には向いてないと指摘するのは、経済学者として日本経済を観測し続け、大ベストセラー『「超」勉強法』をはじめ、独自の勉強法を編み出してきた経済学者、野口悠紀雄さん。

 では、アイディアを出してもらうのは? ChatGPTを賢く使うためのコツはあるのでしょうか。

 野口さんが「デジタル機器」「加齢」「残り時間」をも味方につける「人生100年時代の勉強法」を伝授した新刊『83歳、いま何より勉強が楽しい』よりお届けします。

『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版) 野口悠紀雄
『83歳、いま何より勉強が楽しい』

アイディアは無理だが、「問い」を聞くのは有効か?

 アイディアについてはどうでしょうか。新しいアイディア、何か問題にぶつかっていて、これを解決するにはどうしたらいいかというようなアイディアです。あるいは、「いま企業の成績がよくない、新しいビジネスモデルを開発したい。そういうビジネスモデルとしてどういうものがあるか探りたい」というようなことがあります。

 ただ、これも試してみると、大した答えは出てきません。指示のいかんによるのですが、「こういう問題があるのだが、どうしたらいいでしょうか?」というようなことに対する答えは、この程度の指示であれば、極めて当たり前のことしか言ってくれません。AIの助けを借りなくても、誰でも考えつきそうなアイディアしか出てきません。

 ただ、これも指示の与え方によります。問題を適切に指定して、そして、例えば「これまでこういうことをやったけれども駄目だった、どこを変えればいいだろうか」といったような指示を与えていくということによって問題が解決するという使い方はあり得ると思います。

「どうすればよいか」ではなく「検討すべき点はどこか」と聞く

 例えば、「このような問題を抱えていますが、何に気をつけて検討すればいいですか」という質問は、比較的うまくいきます。

 これは、会社でも活用できると思います。「現在、この商品の売り上げが伸び悩んでいますが、どのような内容を検討すればいいですか?」と聞くのです。

「どうすればいいですか」と問うだけでは、あまり具体的な答えは得られません。しかし、「何を調べればいいですか」と問うてみると、有効だと思います。例えば、「この問題がありますが、どの点を調べればいいでしょうか」というアプローチです。

 最初に思いつくのは、ごく一般的な考え方や、競合商品の状況などが挙げられます。その流れで考えを進めると、かなりよい方向に進むと思います。ただし、解決策自体は自分で考えなければなりません。

 なお、「何を調べればいいですか」という問いは、深く掘り下げるとリスクが伴う場合もあります。つまり、その商品がどのようなものかを詳しく説明しなければならないということです。そうなると、企業秘密が漏れるリスクがあります。

 解決策は出てこないかもしれませんが、どのような点を検討するかというのは、商品の詳細を明かさなくても、できることだと思います。

 このアプローチは、商品に限らず、日常的な問題にも適用できます。例えば、「この問題に直面していますが、どのポイントをチェックすればよいですか」という質問です。

 ChatGPTは、何かを教えてくれる存在ではないので、やはり、雑談が交わされる中で、「何を調べればよいか」という話をして、異なる視点からアドバイスをくれる、そういう雑談相手として使うのがよいでしょう。雑談を超えた、どのような見方が可能かという視点を提供してくれるものです。

質問が重要、キーワードは必要ない

 質問が重要です。例えば、「園芸で、できるだけ手軽にできるような、狭いところでも日当たりが悪くても育つような、そういう花はないですか?」というような質問をします。

 すると、コンピュータが、「値段は高くてもいいんですか?」などと追加質問をしてきます。こうして、対象を絞っていって、答えを出してくれるというような、そういう検索エンジンが、今後、登場してくるかもしれません。

 的確なキーワードを入れなくてもいい。これまでは、キーワードが重要でした。しかし、曖昧なキーワードでも、「あなたの問いは不明確です」というように返してくれる。質問が重要と強調しました。「検索語が分かれば勝ちだ」と思います。しかし、検索語を知らなくとも、相手がうまく誘導してくれるようになりつつあります。

指示する能力が重要に

 結局のところ、重要なのは、人間が出す指示や命令だということです。つまりクリエイティブな仕事はAIにはできない、人間でなければできません。

 ただ、人間がやる作業が変わってくるのです。つまり、人間が行う仕事の中身が変わってきたということです。

 ただし、もう少し別のこと、例えば解説記事とか評論、あるいは事実の報告、こういったようなことに関して、論文は書けないでしょうか? つまり、書くことの要点を与える。要点を与えて、そうした内容の報告書を書けということができないでしょうか?

 要は、ある種の指示です。非常に詳細に与える。先ほど論文から要旨を書かせると言いましたが、いわばそれを逆にするわけです。要旨は人間が作って、それが元になるような論文を書かせるということです。

 これを試してみますと、これはできます。少なくとも見かけ上はできます。経済評論であれば、十分に要素を与えて、これこれこういう主張であると与えれば、そして何字以内の文章を書けと指示をすれば、書けます。

 これは、ある意味では大変なことだと言ってもいいでしょう。今、世の中に経済解説文、経済評論文等々がたくさんありますが、それは別に人間が書く必要はない段階になったとも言えます。要するに、正しい要素と正しいデータがあればいい。それは人間が与える必要があります。

 しかし、それをまとめて文章にするということが、AIにできるようになった。これは、いまの段階でも既に言えると思います。

<本稿は『83歳、いま何より勉強が楽しい』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock


【著者】
野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
1940年、東京に生まれる。63年、東京大学工学部卒業。64年、大蔵省入省。72年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)。一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。経済学者としての著作のほか、大ベストセラーとなった『「超」整理法』『「超」勉強法』シリーズをはじめ、学びについての著作も多数。近著に『「超」創造法』(幻冬舎新書)、『生成AI革命』(日経BP)など。

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