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社会が求めるが入手法のわかってないモノを提供する人が得る果実

「ただ楽しいから何かをするときにこそ、最高の仕事ができる」

「社会が求めているがどうやって手にいれるかがわかっていないプロダクトやサービスを考えよう」

「富める者と貧しい者、ホワイトカラーとブルーカラーの区別はもう古い。今や、レバレッジを持つ者と持たざる者の区別だ」

 アメリカ・シリコンバレーで生きる伝説とされる、ナヴァル・ラヴィカントは、こう説きます。ナヴァルの投稿記事、ツイート、対談を集めた本『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』よりお届けします。

『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』 サンマーク出版
『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』

「レバレッジ」を効かせてインパクトを最大化する

 無限のレバレッジが手に入るこの時代、純粋な知的好奇心がかつてないほどの莫大なリターンを生むようになっている。だから今儲かっているものを追いかけるよりも、君の純粋な知的好奇心を追求したほうが、キャリアの基盤としてはずっといい。

 不思議なことだが、君だけ、または君を含む少数の人だけしか知らない知識は、君の情熱や趣味から生まれるんだ。知的好奇心が高じた趣味を持つ人は、そういう情熱を育むことが多い。

今は楽しくても
いつか飽きてしまうものは、
気晴らしでしかない。
探しつづけよ。

 私は何かをやるときは、純粋にそれ自体を目的としてやりたい。

 これは芸術の定義の一つだね。運動、恋愛、友情など何であっても、それ自体を目的として行うことにこそ、人生の意味があると思っている。

 不思議に思えるけれど、ただ楽しいから何かをするときにこそ、最高の仕事ができる。たとえただの金儲けだったとしても、楽しいからやるときに最高の成果を上げられる。

 私が個人として人生最大の富を生み出した年は、最も働かず、未来のことを最も気にかけなかった年だった。ただ楽しみのためだけにいろんなことをやっていた。「もう引退したよ、働くのはやめた」なんて触れ回っていた。

 すると目の前のプロジェクトの中で、自分にとって一番価値のあるものに取り組む時間ができたんだ。そしてそれ自体を目的としてやることで、最高の結果が出せた。

 何かを求めなければ求めないほど、君はそのことを考えなくなり、執着が薄れて自然な方法でやるようになる。君自身のためにそれをやる。君が得意な方法でやりつづける。そのうちに、君の仕事の質が高まったことが誰から見てもわかるようになる。

 だから何であれ今流行りのものを追いかけるより、君の知的好奇心を追求しよう。君が好奇心のおもむくままたどり着いた場所が、社会が向かおうとしている場所と一致したそのとき、君は莫大な見返りを手にできるはずだ。

 君がこの方法で身につけたスキルは、どうやって訓練するかを社会がまだ知らない可能性が高い。訓練する方法を社会が知っていれば、社会は誰かに君の代わりをさせることができる。代わりがいる限り、君は大した報酬を得られない。どうやって身につけるかまだ知られていないスキルを、世の中が必要とするそのときに活用する方法を考えよう。

人を訓練して
やらせることができるなら、
やがてコンピュータを訓練して
やらせるようになる。

「社会が求めているがどうやって手に入るか知られていないもの」という金脈

 社会が求めているがどうしたら手に入れられるのかを誰も知らないものを君が提供すれば、社会は君に見返りをくれる。学校に行けば金儲けの方法を学べると思っている人が多いが、実際には「ビジネス」という名のスキルなんて存在しない。

 だから、社会が求めているがどうやって手に入れるかがわかっていないプロダクトやサービスを考えよう。そしてそれを提供する人に、それも大規模に提供する人になろう。

 これこそが、金儲けの最大の難関だ。

さて問題は、何であれ
「それ」を提供する方法を
どうやって磨くかだ。
「それ」は世代によって変わるが、
テクノロジー界にあることが多い。

 世界に何かが起こり、何かのスキルセットが必要になり、それを提供できるのが世界中で君だけしかいない──そんな瞬間を君は待っている。

 その瞬間が訪れるまでの間、ツイッターやYouTubeで、または仕事を無償で提供することによって、君というブランドを築いておこう。君の名前を売り、その過程でリスクを取るんだ。

 そしてとうとうその瞬間がやって来たら、レバレッジを──最大限のレバレッジを──効かせながら、君にしかないスキルを思う存分発揮しよう。

 レバレッジには大まかに分けて次の3種類がある。

 第一が、「労働」だ──君のために働くヒトだ。これは最古のレバレッジだが、現代社会ではありがたみが薄れている。

 私に言わせれば、労働は利用可能な全形態のレバレッジの中で最悪のものだ。人を動かすことはとんでもなく難しい。とてつもない統率力が必要だ。一つ間違えば反乱を起こされ、餌食にされ、暴徒に引き裂かれてしまう。

 「カネ」もレバレッジの一形態だね。君が何かの決定を下すたび、その効果をカネで増幅させるということだ。資本は扱いに注意を要する、より現代的なレバレッジだ。20世紀に莫大な富を築くために利用されたのが、このレバレッジだった。20世紀にはこの形態のレバレッジが主流だった。

 大富豪を見ればそれがわかる。銀行家や、腐敗した国でカネを印刷する政治家といった、大金を動かす人たちだ。テック企業を除く巨大企業や多くの老舗企業のトップを見れば、CEOの仕事は実質的に資金管理だとわかる。

 お金はとても簡単にスケールできるんだ。資金運用のスキルがあれば、動かすヒトをどんどん増やすより、動かすカネをどんどん増やすほうがずっと簡単にできる。

 レバレッジの最後の形態は、まだ生まれて間もない、そして最も民主的なもの。それは、「限界費用ゼロで複製できるプロダクト」、つまり追加の複製コストがゼロに近いプロダクトだ。本、メディア、映画、プログラミングコードがこれにあたる。

 コードは非許可型(パーミッションレス)のレバレッジの中でおそらく最強だ。必要なのは、コンピュータだけ──誰の許可も必要としない。

富める者と貧しい者、ホワイトカラーとブルーカラーの区別はもう古い。今や、レバレッジを持つ者と持たざる者の区別だ。

一人で発揮できる「力」が高まっている

 これらの中で一番興味をそそる、一番重要な形態のレバレッジが、「限界費用ゼロで複製できるプロダクト」という概念だ。これが新形態のレバレッジだ。

 発明されてまだ数百年しか経っていない。活版印刷に始まり、放送メディアによって加速し、現代ではインターネットとコーディング[プログラミングコードを書くこと]によって爆発的に拡大している。今や他人を介さずに、他人のお金も使わずに、君の取り組みを何倍にでも拡大できるんだ。

 この本もレバレッジの一種だね。大昔なら講堂に座って一人ひとりに語りかけなくてはならなかった。数百人に言葉を届けられたかもしれないが、せいぜいそれが限界だった。

 新たな富を生み出し、新たな億万長者を生み出しているのは、すべてこの最新形態のレバレッジだ。ひと昔前は、資本が巨万の富を生み出した。莫大な富を築いたのは、世界のウォーレン・バフェットたちだった。

 でも新世代の富はすべて、コードかメディアを通じて生み出されている。ジョー・ローガンはポッドキャストで年に5000万ドルや1億ドルを叩き出している。それにユーチューバーのピューディーパイがいるね。彼がいくら稼いでいるかは知らないが、ニュースメディアをしのぐ影響力の持ち主なのはたしかだ。

 ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・ペイジ、セルゲイ・ブリン、ビル・ゲイツ、スティーヴ・ジョブズは言うまでもない。彼らの富は、すべてコードというレバレッジが生み出したんだ。

 これら新形態のレバレッジの一番おもしろい点は、非許可型という点だろう。これを覚えておいてほしい。それを使って成功するのに、誰の許可もいらないということだ。

 労働力のレバレッジは、他人に従ってもらう必要がある。資本のレバレッジは、他人から投資やプロダクト生産のための資金の提供を受ける必要がある。

 でもコーディング、本の執筆、ポッドキャストの収録、ツイート、YouTube動画の作成──こういったことは非許可型だ。誰の許可も必要なく、だからとても平等主義的なんだ。レバレッジの強力な平等化装置だ。

 優れたソフトウェア開発者は、今やロボット団を従えているようなものだね。コードを書いてしまえば、あとは夜寝ている間もロボット団がせっせと働いてくれる。

<本稿は『シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント』(サンマーク出版)』から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock


【著者紹介】
エリック・ジョーゲンソン(Eric Jorgenson)
プロダクト・ストラテジスト、作家

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