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子どもが「おともだちとケンカしちゃった」どうする?

 今春から子どもが小学生になった親御さんもいらっしゃると思います。

 新しいお友だちとうまくやっていけるかな?

 けんかしたり、いじめられたりしないかな?

 先生に面倒をかけてないかな?

 親も心配ですが、それ以上に、お子さんはドキドキかもしれません。

「けんかしちゃった!」「話してたら相手が急に怒り出したんだけどどうしよう!」

 お子さんのピンチを、どう助けてあげればいいのか? そこで伝えるコミュニケーションのコツは一生ものです。

 齋藤孝さんの新刊『こんなときどう言う?事典』よりお届けします。

『こんなときどう言う?事典』(サンマーク出版) 齋藤孝
『こんなときどう言う?事典』

「おともだちとけんかしちゃった……」への正解は?

A 「ごめんね」って謝ろう

B 「ねえねえねえねえ」ってケンカがなかったように話しかけちゃう

C 小っちゃい紙に「昨日はごめんね」って書いてわたす

正解)基本はA。でも、話しかけるのが苦手な子はCでも大丈夫です。Bのように話しかけて、普段通りに話せたら、それでまた仲良くなってしまうこともあります。

<ケンカした。自分は悪くないと思うけど、このまま仲違いはしたくない>

基本)「ごめんね」って謝ったほうがいいよ

できる!)「ねえねえねえねえ」って、ケンカがなかったように話しかけちゃう

これだけでもOK)ちっちゃい紙に「昨日はごめんね」って書いてわたしたら?

<「ちがう」と思ったらきちんと説明しよう)>

 ケンカしたときに、「ぼくは悪くない!」「あっちが悪いのに!」と思うことはあるよね。

 でも、相手のほうだって「自分は悪くない!」「あっちが悪いのに!」って思っているかもしれないんだ。そういう食い違いがあるからこそ、ケンカになっていると思うんだよね。

 お互いに「あっちが悪い!」と思っていると、いつまでたっても解決しないし、なんとなく気まずい状態が続きます。だったら、早めに解決しちゃったほうがいいよね。

ケンカになったことを謝ろう

 解決方法として、もっとも簡単で、もっともおすすめなのが、きみが大して悪くなくても、「この前はごめんね」と謝ってしまうことです。

「自分は悪くないのに、どうして謝らないといけないの!?」と思うかもしれないけれど、これは「自分が悪かった」と謝っているわけではないんだ。「ささいなことなのに、ケンカにまでなっちゃってごめんね」ということなんです。

 細かいことまでは言わなくていいので、そういう気持ちで「この間はごめんね」と言えば、相手も許さないことはないでしょう。もしかすると、「こっちこそごめんね」と言ってくれるかもしれないよ。だから、「ごめんね」と言うだけで、仲直りできることが多いのです。

手紙をわたしてもいい

 もし、口で「ごめんね」と言いにくかったら、「ごめんね」と紙に書いてわたしてもいいと思いますよ。この場合、紙はだれかにわたしてもらうのではなく、ちゃんと自分でわたすことが大切です。

 ケンカについては触れないで、別の話題をするという方法も、いいんじゃないかな?

 たとえケンカをしていても、お互いに話していると楽しくなる話題があると思うんです。そういった話を持ち出すと、ケンカをしているはずなのに、ついつい二人で話しちゃう、みたいなことがあるよね。そんなふうに会話をしているうちに、ケンカのことはどうでもよくなったりもするんだ。

 つまり、ケンカの原因について、あれこれ考えないということですね。「どっちが悪いのか」なんて言い出すと、またケンカになっちゃうのでね。

 じつはね、人間の気持ちの中でも、「おこっている」という気持ちは、そんなに長続きしないものなのだそうです。

 だから、あえてケンカのいかりを横に置いておいて、ほかの話題で仲よくして、ケンカのいかりが消えていくのを待つのも、一つの方法なんです。

POINT 相手も仲直りしたいと思っているよ

<朝起きたら、友達と待ち合わせをしていた時間だった!!! 会ってなんて言おう……>

基本)「ごめんね。こういう理由があったんだ」と理由をそえて謝ろう

できる!)遅刻しない癖をつけたほうがいいよ

これだけでもOK)気づいたらすぐ謝ろうね

<すなおになることがいちばん大事>

 ぼくは人々にとって一番大切なことは、すなおなことだと思っています。だから、自分が悪いと思ったら、すなおに謝ってしまいましょう。「ごめんね」「すみません」と謝って、きちんと頭を下げるんです。

 謝らないと、相手もずっとイライラしてしまうし、きみ自身も「だらしない人」「迷惑な人」というイメージを持たれて、いいことは一つもありません。

 だから、「ごめんね」と言うだけで、相手はもちろん、きみ自身も楽になりますよ。

理由を添えて謝ろう

 謝るときには、理由をきちんと言うようにしましょう。遅刻したなら、「バスが遅れてしまって」「寝坊してしまって」とかね。理由によっては相手も、「じゃあ仕方ないかな」と思えますし、おこられるにしても「今度は気をつけてね」程度で済むことが多いんです。

 失敗をしたときには、すなおであることが、もっとも大切なんです。きみに責任があるならば、正直に「ぜんぶわたしのせいです」と言えれば、そのときはきつく言われるかもしれないけれど、「あの人は自分の責任を認められる、しっかりした人だ」と思ってもらえるようにもなりますから。

 みなさんは、「すなおさ」や「正直さ」が大切だとした、アメリカの初代大統領であるジョージ・ワシントンの話を知っているかな?

 一説に子どものころのワシントンが、木を切るオノを借りてきて、何か切りたくなり、お父さんが大切にしていた桜の木を傷つけてしまったのです。ワシントンは、それを隠さず、おこられることを覚悟のうえで、お父さんに打ち明けました。するとお父さんは、おこることなく、「よく言ってくれた。お前のすなおさは、1000本の桜以上の値打ちがある」とほめてくれたという話があるのです。

 この話自体は、後世の人がつくった話という説もありますが、すなおで正直であることが、何よりもすばらしいということは、時代を超えて伝わるよね。ごまかすと、あとからバレて大変なことになったりもするし、ごまかすクセがついてしまいます。そうなると、「あいつはうそつきだ」「あの人は信用できない」と思われたりします。

どうしたら同じ失敗をくり返さなくてすみますか

 さて、理由を正しく伝えて謝ったとしても、それで終わりというわけではありません。同じ失敗をくり返さないように、気をつけることが大切なんです。

 遅刻してしまったときには、今後は遅刻しないように、待ち合わせ場所には少し早めに行ってもいいよね。寝坊するくせがあるなら、家族に無理やりにでも起こしてもらうなど、いろいろな工夫をして、失敗を防ぐようにしましょう。

POINT すなおに謝れる人は信頼もされる

Photo by Shutterstock

<本稿は『こんなときどう言う事典』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
齋藤孝(さいとう・たかし)
1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞ベスト10、草思社)がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『12歳までに知っておきたい語彙力図鑑』『12歳までに知っておきたい言い換え図鑑』(日本能率協会マネジメントセンター)、『小学生なら知っておきたい教養366』(小学館)等多数。テレビ出演多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。

『こんなときどう言う?事典』(サンマーク出版) 齋藤孝

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