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起業に「失敗はつきもの」と割り切るのが近道の理由

 失敗を恐れて踏み出さない――。ビジネスの世界ではもったいないことです。

『起業マインド100』より20日連続でお届け。

 いよいよ最終日。20日目は「失敗しても死にはしない。失敗して強くなる」

『起業マインド100』(サンマーク出版)  ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
『起業マインド100』

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著者:ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
ジョンソン・メディア社の社長、連続起業家
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失敗しても死にはしない。失敗して強くなる

失敗とは単に、もっと賢いやり方でもう一度始める機会のことだ。

(ヘンリー・フォード フォード・モーター・カンパニー創設者)

 私は最近、全国ビジネス・ピッチ・コンテスト[ビジネスでいかに短い時間・簡潔な言葉で相手に提案を伝えるかを競うコンテスト]に参加できる機会があり、気まぐれに申し込んでみた。

 かなりのプレッシャーがかかるセールスの場に身を置き、優勝できるかどうか試してみるのもおもしろい挑戦だと思ったのだ。賞金1万ドルも悪くなかった。驚いたことに、私は全国から集まった100人以上の参加者の中から選ばれ、シカゴで他の9人のセミファイナリストたちと争うことになった。

重要な場面での大失敗

 ほとんどのファイナリストはよどみなく60秒間しゃべり続けたが、そのうちのひとりがプレッシャーから大失敗してしまった。まったくの大惨事だった。大きな時計が残り時間を刻む中、もう一度話し出そうとするたび、彼はさらに口ごもってしまった。回数を重ねるごとに、挽回するのがますます難しくなった。

 1000人近い観客から拍手を浴び、励まされたものの、結局ギブアップした。彼はうなだれ、自分の情けないパフォーマンスについて思いをめぐらせてステージを下りた。残り時間を15秒近く残して立ち去ったので、司会者が彼をステージ中央まで優しく連れ戻した。

 時間切れになったあと、審査員の3人からかけられた励ましとなるアドバイスが若者の救いだった。彼はわずかばかりの自尊心を胸にステージをあとにしたが、まだショックを受けているようだった。

 私たちはみなバックステージにいたのだが、この大惨事のあと他の出場者も周りにいる人も彼に近寄って励まそうとはしなかった。そのかわりに、彼がうなだれたまま通りすぎるのを見ていた。人目につかない舞台裏まで引っ込み、たったいま起きたことを考え、彼は感情が崩壊する瀬戸際まで追い込まれた。何人かが励まそうとしたが、それはどう見ても偽善的な行為に見えた。

 皮肉なことに、ファイナリストたちは起業家としての自信に満ちあふれていたが、重要な場面で失敗した同士に心から共感を示す自信はなかったのだ。

失敗にどう対処するか

 落胆したファイナリストがひとりで傷を舐めながら取り残されていることを思い、私は彼の傍に行き、励ましの言葉をかけた。彼は私より8歳くらい若そうだが、この手のイベントにあまり慣れていないのがわかった。私は言った。

「次は完璧にやるんだ。今回のことを受け入れるのはきついが、自信を取り戻すんだ」

 それから、私がコンテストで耳にしたアイデアの中でも、彼のはかなりよさそうだと伝えた。私はさらに続けた。

「ひどいピッチをしても回復できる。見込みのないひどいアイデアよりもずっといい」

 彼は同意してくれたようだったが、大きなチャンスを台なしにしてしまい、まだ落ち込んでいるのが見てとれた。この若者が立ち直って、前進し続けられるような影響を与えられたのならいいのだが。私はそれだけを望んでいた。結局のところ、起業家であるとはそういうことなのだ。

 起業家としての活動に失敗はつきものだが、失敗にどう対処するかで、最終的に成功できるかどうかが決まる。このピッチ・コンテストで仲間の大失敗を目撃して、私たちはみなこの現実を思い知らされた。

 この教訓は、3人の審査員からのどんなアドバイスよりも役立ち、優勝者の完璧なピッチよりも重要だ。結局のところ、1万ドルの賞金を勝ち取るよりも価値があるのは、その教訓だった。

<本稿は『起業マインド100』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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