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「起業にはリスクがある」と考えて、ためらう人に知ってほしい視点

 会社勤めのサラリーマンにとって「起業」とはリスクを伴う決断に映るかもしれません。ただ、それが危険なのかというと、そうでもありません。

『起業マインド100』より20日連続でお届け。

 19日目は「リスクは危険ではない」

『起業マインド100』(サンマーク出版)  ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
『起業マインド100』

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著者:ケヴィン・D・ジョンソン(Kevin D. Johnson)
ジョンソン・メディア社の社長、連続起業家。数百万ドル規模のマーケティングとコミュニケーション企業を数年率いており、フォーチュン100に選ばれる最も重要な企業との仕事も多い。革新的なリーダーとしてABCの番組〈グッドモーニングアメリカ〉、CBS、オプラ・ラジオに出演。ニューヨーク・タイムズ、ウォールストリート・ジャーナルにも取り上げられる。さらに、CNNにも度々出演している。
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リスクは危険ではない

リスクは、自分が何をしているのかわからないことから生じる。

(ウォーレン・バフェット 実業家、投資家、慈善家)

「起業家」の定義の中には、話にならないほどひどいものもあれば、実に的を射たものもある。それでも、「起業家」という言葉には「リスク」がつきもののようだ。「リスク」こそ起業家を定義する言葉だ。ウェブスター辞典によるシンプルかつすばらしい定義が以下だ。

「起業家とは、事業や企業のリスクを系統立て、管理し、引き受ける人」

 そうなると重要なのは、リスクを理解することと、それをいかにして起業家としての要素に含めるかになる。同辞書の定義によると、「リスク」とは「損失の可能性」とある。この定義の最も興味深い点(これは一般的に信じられていることとは正反対だ)は、ネガティブな価値判断ではないことだ。この定義は単に損失を被る可能性を示しているにすぎない。

 つまり、ある取り組みにおける損失の可能性は1%かもしれないし、99%かもしれない。このふたつのリスクレベルに対する対応と解釈が大きな違いを生む。

 起業して事業を運営するとなると、起業家は一般人よりもはるかにリスクを許容する。カウフマン財団によると、起業して5年後、存続している事業は80%もないという。さらに、サラトガ・ベンチャー・ファイナンスによると、そのうち株式を公開する事業は1%にも満たないそうだ。

 このように、怖じ気づいてしまってもおかしくない勝算にもかかわらず、起業家は目標を追い求めるのを思いとどまらない。

成功のためのあらゆる障害を取り除く

 とはいえ、起業家のリスク許容度が高いことがすべてを物語っているわけではない。たしかに起業家は高い確率で失敗する可能性を引き受ける。だが、必ずしもギャンブルが好きなわけではない。

 そうではなくて、起業家は自分に有利になるよう画策しながら、リスクを計算して引き受けるのだ。成功する確率を上げ、失敗する可能性を最小限におさえるために、事業のリスクを最小限にしたり分散したりする方法を探す。起業家には、専門知識や強固な人間関係や個人資産さえ使っても、巨大な損失を生むような障害を回避したり、乗り越えたりする自信があるのだ。

 たとえばメディアでは、不利な条件を乗り越えて大成功したCEOのサクセスストーリーがよく取り上げられる。しかし、そうしたストーリーをつぶさに見てみると、こうしたCEOはリスクを見積もり、それに備える計画を周到に練っていたとわかることが少なくない。

 マイケル・マスターソンは『臆病者のための科学的起業法──起業の超プロが実践する絶対に失敗しないための10の技術』(ダイレクト出版)の中で、マイクロソフトを始めるためにビル・ゲイツが大きなリスクをとって大学を中退したことが、度々取り上げられる点に触れている。

 しかし、マスターソンはこうした見方を批判し、きわめて実務的なゲイツ像を描いている。几帳面で優秀な若者だったゲイツは、新規事業がうまくいかなかったら大学に戻ることをいつも考えていたという。

 もしゲイツがそれほど賢明でなく、裕福な両親から支援してもらった多額の資金もなかったとしたら、ハーバード大学を中退する決断はリスクが高かったので、メディアが取り上げるべき価値がもっとあったかもしれない。

能力があればリスクはチャンスにできる

 要するに、あらゆるリスクは危険なものではなく、起業家はこのことを心得ている。つまり実際のところ、起業家になるうえでは、失敗する可能性やリスクの高さではなく、そうした確率を乗り越える能力の問題が大きい。皮肉なことに、世界中がこの教訓をリーマンショックなどの世界的な景気後退(グレート・リセッション)から学んだ。

 また、この法則の反対もあてはまる。つまり、人々が安全だと思っていたことは、思っていたほど安全ではないのだ。大学を卒業したからといって、学んだ分野で高給が得られる職業に就けるとはかぎらない。会社に勤めていても解雇されないという保証はない。会社の企業年金制度に加入したからといって、加入したときより銀行の残高が増えるかはわからない。

 世界中で景気後退が継続するなら、起業家として夢を追う方が就職するよりリスクが低いだろう。

 そして、それはそれほど悪いことではない。

<本稿は『起業マインド100』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
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