「疲れがずっと抜けない」なんて、とても普通ではない
疲れがずっと抜けない――。
そんな慢性疲労に悩んでいる人は少なくありません。ちょっと疲れて横になりたい程度であれば普通のことですが、ほぼ日常的にエネルギーが湧いてこない状態は、とても普通ではありません。それは体が助けを求めて叫んでいるといえます。
そもそも疲労とはいったい何なのでしょうか、疲労をもたらす真の原因、そして克服するには?
『回復人 体中の細胞が疲れにつよくなる』より冒頭の試し読みをお届けします。
はじめに 「見えない疫病」をやっつけろ!
想像してみてほしい。
毎日毎日、なんだかわからないがおかしな理由で、自分の足にフォークを突き立てる。その後病院へ行っても、医師は痛み止めをくれるだけで家に帰される。とりあえず痛みはなくなるが、次の日また足にフォークを突き立てて、病院に行く。医師はもっと痛み止めをくれる。その次の日も、また同じことを繰り返す。
どう考えても、悪循環を断つには足にフォークを突き立てるのをやめればいいだけだ。痛み止めを飲んで痛みを抑えたって意味がない。
慢性疲労というのはそんな感じだ。
エネルギーが湧いてこないのは体の奥深くにあるなんらかの異常の表れなのに、毎日毎日、私たちは自分の摂る食事や自分の選んだ生活習慣を通して(もちろん知らず知らずのうちに)自分の体にナイフを突き立てている。
その疲れに気づかないふりをしたり、刺激物や砂糖、カフェインでごまかしたりしても、なんの解決にもならない。
真の解決策は、人の体がエネルギーをつくり出すしくみに直接働きかけることだ。
だがそれに気づいて実行していないのは、あなたのせいではない。
何が人のエネルギーレベルをコントロールしているかなんて、誰も教えてくれない。体と脳に必要な栄養を正しく与える方法や、そうする必要がある理由なんて、誰にも教わらないのだ。
その結果、人は知らず知らずエネルギーを涸(か)らす選択をし、細胞がきちんと働く力を自ら制限している。
これを解決するには、エネルギーレベルを制御しているものの科学的背景を学び、エネルギーを涸らす選択を避け、エネルギーを生み出す行動を選んでいけばいい。
ところが、私たちの文化では、疲れた状態があたりまえになっている。
みんな、それが普通だと思っている。それどころか、ステータスを誇示する名誉の勲章ぐらいに考える人もいる。疲れてエネルギーが湧いてこないのは、自分がいかに重要で多忙な人間かを表すサインだ、とでもいうように……。
いたるところで繰り返される「いやあ、もうヘトヘトでさ」「忙しすぎて困っちゃうよ」というセリフは、「自分は超やり手の野心家で、仕事でも超重要人物だから、ろくに寝ている暇もない」という自慢の裏返しだ。
私たちはみな、疲れ切って、ストレスを抱え、燃え尽き、不安にさいなまれ、落ち込み、頭がぼんやりし、記憶力が衰え、集中力をなくしている。明日のためのエネルギーを前借りして今日使い、カフェインや砂糖で自分をだまして1日を乗り切る。
人間関係や仕事や生活をすこやかに保つのに欠かせない、最も大切な要素──すなわちエネルギーを失ってしまっているのだ。
44%が「集中力が保てない」
医学的に慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎:ME/CFS)と診断された人たちのことだけではない。ちなみにこの病気は世界人口の約1.5%、アメリカでは540万人もの成人に見られる非常に深刻な疾患で、6か月以上にわたって激しい疲労が続き、運動後の倦怠感といったほかの症状を引き起こす場合もある。
そうではなくて私が言いたいのは、その50倍から100倍にあたる人を苦しめている慢性的な疲労のことだ。
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【著者】
アリ・ウィッテン Ari Whitten
ライフスタイルとサプリメントを総合的に考えるシステム「エナジー・ブループリント」の創始者
アレックス・リーフ Alex Leaf(理学修士)
栄養学の専門家および研究者、作家、学者
【訳者】
加藤輝美(かとう・てるみ)