「会社辞めたい」と思った人は、その本音から目を背けてはいけない
転職をきっかけに人生がうまくいく人とそうでない人がいます。
「その差は本音で挑んでいるか、その本音を転職活動のステージ0で磨く必要がある」と指摘するのは、日本初かつ唯一の「退職学®︎(resignology)」の研究家、佐野創太さん。
転職希望者の多くはどこかモヤモヤしています。それはなぜなのでしょうか? 佐野さんの著書『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』よりお届けします。
小さいモヤモヤを放っておくと、フリーズしたパソコンのように心も体も動かなくなる
私は5月19日配信の「転職のスタート「とりあえずエージェントに登録」の前に考えてほしいこと」でこのように述べました。
しかし、私が数多くの転職希望者を「会社辞めたい」とモヤモヤしている段階からサポートしてきて気づいたことがあります。転職がうまくいく人は転職エージェントに登録し、転職エージェントのサポートを受ける前に、意識的か無意識的かは別にして、ある作業を終えている、ということです。
この、「意識的か無意識的かは別にして」がポイントです。
〝なぜ多くの人が「会社辞めたい」ループに陥ってしまうのか〟〝なぜ今あなたがモヤモヤしているか〟を認識することは、意識的に「会社辞めたい」ループから抜け出すための第一歩です。
(本書を読み終えると、無意識に本音にフタをしていた人が、本音モードで転職活動に取り組むことができるようになります。この記事は、本音モードに切り替えるための、思考のウォーミングアップだと思ってください)
他人のモヤモヤを知ると自分のモヤモヤの正体に気づく
ここで、実際に「本音磨き」をせずに、モヤモヤを抱え続けたある相談者さんのエピソードをお伝えします。モヤモヤの奥に隠れているあなたの〝本音〟は、自分ひとりではなかなかその正体を掴みにくいものです。
しかも、そのモヤモヤは次の記事以降で紹介する「5つの環境につかされている嘘」が原因なので、気づきにくいものでもあります。実際に多くの相談者さんも「嘘をついているわけではありませんよ」と言う方がほとんどです。そんな「自分のことはなかなかわからない」状況を解決するヒントは、シンガーソングライターの宇多田ヒカルさんの著書の中にありました。
自分の気持ちや悩みは自分だけを見つめると、かえってわからなくなることがあります。でも、他人の気持ちや悩みを知ると、「自分はどうだろう」と、モヤモヤの正体を特定する近道になるのです。
そんな「人を見て自分を知る」機会をくれた相談者さんは、外資系のコンサルティング会社に新卒で入社したAさん(女性・20代後半)です。
Aさんは最初は「仕事のときだけ感情を消して、ビジネスマシーンになればいい」と思っていたのに、プライベートでも感情が麻痺してしまいました。
「土日は何がしたいんだっけ?」と振り返ると「ゆっくり寝たい」しか考えられないようになりました。学生時代にはイラスト制作やピアノ演奏、海外旅行など多趣味だったにもかかわらず、です。
ネガティブな感情だけをオフにしたかったんですが、無理でした。「会社辞めたい」と思う本音を消していたら、仕事にあった楽しさまで感じられなくなるみたいです。全部の感情がオフになっちゃいました。
この「感情がオフになる」感覚は決して大袈裟に表現しているわけでも、特殊なケースでもありません。実は、本音を隠したままにすると「生きがいの喪失」や「神経症になる」とまで考えられてもいます。精神科医であり、母校の津田塾大学の教授でもあった神谷美恵子氏は、著書の『生きがいについて』の中でこう記しています。
「自分に嘘をつき続けること」は、身体的に危険でさえあるのです。
でも、嘘は身体に良くないなんてことは多くの人が直感的にはわかっているはずです。それなのに、どうして嘘をついてしまうのでしょうか?
実は私たちは「環境」に嘘をつかされているのです。
次回以降は「私たちに嘘をつかせる5つの環境」=「私たちがモヤモヤする5つの原因」を紹介します。
<続きの記事は後日公開予定です。本稿は『「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>
(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock
【著者】
佐野創太(さの・そうた)
日本初かつ唯一の「退職学®︎(resignology)」の研究家/生成AIを活用した情報発信のパートナー
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