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2分で片づく仕事を「後に回す人」と「すぐやる人」に生まれる圧倒的な差

 メールを返す。電話を入れる。会議室を予約する。休暇を申請する――。

 こうした小さな仕事をためこんでしまうのはオススメできません。パソコンの中のメモリと同じように、ためこんだタスクによって脳の効率が下がってしまうからです。

 精神科医・樺沢紫苑さんの著書『記憶脳』より具体的な方法を前後編でご紹介。「脳の力を賢く使いたいなら「マルチタスク」から距離を置いたほうがいいワケ」に続く後編として、脳メモリを最大化する7つのルールのうち残る4つを解説します。

『記憶脳』 サンマーク出版
『記憶脳』

◎前編はこちら

【脳メモリを最大化する7つのルール④】「2分ルール」で仕事を加速する

★ 小さな仕事をためない方法

「思いついた些細な仕事」は、メモや「TO DOリスト」、付箋に書き出し、今すぐ頭の中からきれいサッパリ忘れよう。しかし一方で、これを徹底して繰り返すと、「TO DOリスト」がふくれ上がり、どうでもいいような小さな仕事が山ほどたまっていくという深刻な事態が起きかねません。

 そこで便利なのが「2分ルール」です。「2分ルール」とは、「2分でできることは『今』やってしまう」というルールです。

 例えば、Aさんからメールが来て、「返信しなければいけないな」と思いながら、「やっぱり、後で返信しよう」と後回しにしてしまうことがあります。

 たかがメールの返信ですが、「後でメール返信する」と決めると、もう一度メーラーを立ち上げ、さらにAさんのメールを開き、Aさんのメールを読み直す必要が生じます。返信を書き始めるまでに、30秒から1分もの余計な時間を、もう一度とられてしまうのです。メール返信自体は仮に30秒で終わるとすると、2倍以上の時間ロスとなります。

 今すぐ終わることは、今すぐ片付ける。「懸案中」「継続中」「未完了」の仕事をドンドンこなして、1つでも減らすことが、脳メモリの空き容量を増やすコツです。

【脳メモリを最大化する7つのルール⑤】決断は「30秒ルール」で行う

★ 即断即決をしても決断は間違えない

 私は、急ぎの本はAmazonで買うことが多いのですが、買うか、買わないかは30秒以内に決めています。もし、どうしようか決めないでいると、1時間後にまた「そういえば、あの本、欲しいからやっぱり買おうかな」という考えが浮かんできてしまうからです。

 そのとき決めないと、後からまた考え直すハメに陥る。改めて決断するときにもまたゼロから考え始めるので、最初と同じ時間をロスします。「迷う」「決めない」「ペンディング」は、大きな時間の無駄であり、脳メモリの無駄遣いでもあります。

 私は、決断する場合は、できるだけ30秒以内に判断するようにしています。「決断の30秒ルール」です。どうしても判断できない場合は、「保留」という判断をします。「後で決断する」と、今決めるのです。その場合はいつ決断するのか、必ず期間を決めます。

 例えば、他の人の返事などが届いていないために、どうしても今すぐ決断できないということもあるでしょう。その場合は、「3日後に決断する」と決めて、スケジュール帳に「○○の件判断」と書きます。そうすると、3日間、その案件については全く考えないですみます。

「そんなに早く決断して、間違った判断をしたらどうするんだ?」と心配になる人もいるでしょう。

「ファーストチェス理論」をご存じでしょうか? プロのチェスプレーヤーにある盤面を見せて次の手を考えてもらいます。5秒で考えた手と、30分長考した手を比較します。すると、なんと86%は手が一致したそうです。5秒で判断しても、じっくり考えて判断しても、ほとんどの場合は、判断結果は変わらないのです。

 それならば、早く判断、決断して、脳メモリを空にし、他の仕事への集中力を高めるべきでしょう。

【脳メモリを最大化する7つのルール⑥】机がキレイな人は仕事ができる

★ まず整理整頓から始める

「机の上がキレイな人」と「机の上が汚い人」。どちらが仕事がはかどるでしょうか?

 いうまでもなく、「机の上がキレイな人」は、広々とした机の上で悠々と、そして集中して仕事をこなすことができます。机の上が汚いと、そこからさまざまな雑念が発生してきます。

 書類があれば、「この書類、今週が締め切りだったな」。本があれば、「この本、まだ読みかけだったな」。請求書が目に入れば、「そういえば、支払いがまだだった。今月中に払わないと」という考えが浮かびます。あるいは、「あれ、定規はどこにいった?」と物が見つからず、物探しのために集中力がリセットされることも増えるのです。

 これらの雑念は、確実に脳メモリを消耗します。 

 脳というのは、極めて高度な情報処理ツールです。情報が入ってくると、無意識のうちに、それを勝手に処理します。

 例えば車を運転していて、突然子供が飛び出してきた。そのとき、瞬間的にブレーキを踏んでいるはずです。危険に対して素早く反応できるように、常に注意が働いている。それは、無意識レベルでの「注意の網」。いわば脳のオートパイロット機能のようなものですが、何もしなくても、それだけ脳メモリを消費しているともいえるのです。

 机の上に余計な物がのっているだけで、脳の注意は無意識にそこに向かい、脳メモリを消耗する。ですから、集中して仕事をするためには、まず机の上をキレイに片付ける。整理整頓から始めるべきです。

 以前、船井総研に勤務していて、現在はコンサルタントとして独立している野田宜成さんから、興味深い話を聞きました。船井幸雄氏は、「『机の上がキレイ』が成功者の条件」だと、よく言っていたそうです。そして、なんと船井氏自ら、抜き打ちで、社員の机の上が整理されているのかをチェックしていた。約5000社をクライアントに持つコンサルタント会社の会長が、「整理整頓」が重要な成功法則だと語るのは大きな意味があると思います。

「机の上がキレイ」な人は、なぜ成功するのか? いろいろな理由があるとは思いますが、脳科学的にいえば、机の上の整理整頓ができている人は、脳の中も整理整頓できている。脳メモリを消耗せずに、目前の仕事に高い集中力を発揮できるわけですから、成功して当然といえるでしょう。

【脳メモリを最大化する7つのルール⑦】ときどきは「脱スマホ」をする

★「スマホチェック」が脳メモリを消耗する

 本来、私たちの生活を便利にしてくれるはずのスマホ。これが、私たちの仕事効率をどれほど低下させているでしょうか。

 人は集中した状態に入るのに15分以上かかるといわれていますが、邪魔が入るたびに、集中力が一旦、リセットされてしまうのです。

 スマホや携帯は、私たちの時間に割って入り、集中力をリセットしてしまう最たるものです。「私は、仕事中には個人的なメッセージはスマホでは一切見ません。あくまでも、休憩時間にしかチェックしていません」という人もいるでしょう。しかし、休憩時間に入るやいなや、ポケットからスマホを出して、メッセージやメールをチェックし始める人がほとんどです。

「休憩時間に入ったら、スマホでメッセージをチェックしよう!」という考えが頭の中に常駐していないと、そんな早業は不可能です。つまり、脳の中に3個しかないトレイのうちの1つを「休み時間のスマホチェック」で、占拠してしまっている可能性があります。

 仕事時間中にスマホを一切見ていなくても、「休み時間になったら、スマホをチェックしよう」という考えがしばしば脳内を去来するとしたなら、それは間違いなく脳メモリを消耗しているわけです。スマホユーザーの大部分が、大なり小なり、そうしたスマホ依存症的な状態になっているのではないでしょうか。

 電車の待ち時間もスマホ。電車に乗ったらスマホ。歩きながらスマホ。そんな、24時間スマホが手放せない人は、間違いなく、頭の中の一部に「スマホのチェック」ソフトが常駐しています。

「スマホをやめなさい」とは言いませんが、スマホが電源オンの状態でポケットの中に入っているだけでも脳メモリの消耗につながってしまうということは、知っていただきたいと思います。

 例えば、「集中して仕事をしよう!」「この仕事をどうしても1時間で終わらせよう!」という場合は、「この仕事が終わるまでは、スマホのチェックはしない」と決めて、スマホのスイッチをオフにして、引き出しかカバンの奥にしまうといいでしょう。

 それによって「スマホチェック」による脳メモリの消耗を回避できるはずです。

<本稿は『記憶脳』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)
Photo by Shutterstock


【著者】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家