見出し画像

本をどう売るか会議「書店営業・杉本くんに聞いてみた」BOOK TALK vol.1

Sunmark Web 「BOOK TALK」は、サンマーク出版のPR戦略室で働く新井俊晴と杉本耕亮が、「本の世界」で働く人たちの奮闘記をお届けする対談記事です!隔週月曜日に配信しています。



紀伊國屋書店新宿本店さん担当の杉本くんに聞きます!

新井俊晴
みなさん、こんにちは!「BOOK TALK」へようこそ!サンマーク出版PR戦略室の新井です。

杉本耕亮
同じくPR戦略室の杉本です!

新井 Sunmark Web「BOOK TALK」は、「本の世界」で働く人たちの奮闘記をお届けする対談記事です。書店や販売会社、出版社のみなさんや、これから出版業界を目指す方たちのお役に立てればうれしいです!

杉本 そしてあわよくば、サンマーク出版のことを、もっと知っていただいて、さらにあわよくば、本を買ったりしていただけたら本当にありがたいです(笑)

新井 あわよくば、ね(笑)。今回は「BOOK TALK」 の記念すべき第1回ということで、広告などを担当するPR戦略室でありながら、書店さんに営業訪問もしている不思議なポジションの杉本くんに、

「本ってどう売るの?」

ということを、営業目線で聞いてみたいと思います。えーっと、最近杉本くんのことを「ハイブリッド営業マン」って勝手に呼んでいるのですが、「ハイブリッド」について聞いても…?

杉本 いきなりいじってる!あの、自分でハイブリッドっていうの、すごい恥ずかしいんですけど…。営業部とPR戦略室の二足の草鞋なので「ハイブリッド」ってことです。新井さんが言ったんでしょ(笑)

営業部では主に書店営業をやっていて、PR戦略室では「ディレクター」として宣伝関係の仕事を新井さんと一緒にやったりします。営業のほうの肩書は長いので…省略しますね(笑)

新井 早口ことばみたいになるもんね。
「エリアマネージャーアドバイザー 兼 西日本統括マネージャー」

杉本 言わなくていいのに!笑

新井 みなさんに杉本くんのことをもっと知ってもらいたくて…。あと「PR戦略室ディレクター」もつくから、社内で一番肩書が長い人だよね(笑)。じゅげむみたい。

3回噛まずに言えたらすごい

新井 PR戦略室って、ひとことでいうと「本を広める戦略を考える部署」で、編集部が作った本のPRや広告の戦略を立てて、営業部にわたす。昨年この部署ができる前は、ぼくと社長の黒川さんで、広告品目とか原稿とか考えていたんですけど、そこを杉本くんも一緒にやってくれるようになって…。

杉本くんは「西日本統括」の立場でありながら、東京の新宿の書店(紀伊國屋書店新宿本店さんやブックファースト新宿店さんなど)の担当でもあるから「現場のリアルな声」を戦略に活かせるようになって、めちゃくちゃうまくいくようになったなぁと思ってます。

杉本 えーっと。急に褒めてもらっちゃってなんかありがとうございます。

杉本くん(左)と新井くん(右)

売れる本は「光って見える」ってホント?

新井 前置きばっかりで話が長くなっちゃうからさ、核心ですごく聞きたいこと…いい?

杉本 な、なんでも!ちょっとこわい!

新井 杉本くんは現場の営業マンとして、新刊で「ヒットの芽」を作ってくれることがすごく多いと思うんだけど、どの本が売れるかってどうやってわかるの?

ウワサでは、売れる本が光って見えるとか…。

杉本 見えるわけないじゃないですか!そんな目、あったらめっちゃほしい!

新井 じゃあどうやって…?「この著者さん、前にもベストセラー出してる!」とかはわかるんだけど、けっこう新人の著者さんとかでも「これはイケる!」って当てるよね⁉︎

杉本 難しいですね。いくつかあるんですけど…。一番大事にしているのは、その本の表紙や内容を見たときに、売ってくださる書店さんの顔が浮かぶかどうかですかね。「あの書店員さん、この本好きそうだな」って想像できると、新刊のご案内をする時に迷いがなくなるんです。

それをちゃんとイメージできると、ヒットになるっていうパターンが僕の中で一番多いかなと思います。

新井 なるほどー!「書店さんを通して、本を見てる」みたいなイメージなのかな。

杉本 とらえ方次第では自分がないっていう風に見えちゃうかもしれないんですけど、あんまりそこは自分を過信していなくて。

「この本どう思います?」って書店さんに聞きに行って、「うわ、めちゃめちゃいいね!」って言われて、展開していただいて売れるという確率が高いかな…。

新井 それは杉本くんが書店さんのことを「本のプロ」として見てるので、このジャンルのことはこの人に聞くべきで、この人がいいって言ったら売れるっていうのが経験則的にあるってことだよね。

杉本 もうまさにその通り。なんかこれおべっか使ってるみたいな感じになるとあれですね。でも本当にそうです。いつもありがとうございます。

新井 あははは。

杉本 営業とはいえ、サンマークの社員じゃないですか。自社の本なので愛や思いが強すぎちゃうことがある。そうなるとどうしても見えない部分が出てきてしまうから、自分だけで決めないようにっていうのを大切にしてます。

新井 たしかに、客観的な視点が持てなくなるよね。やっぱり自社の本に対して。

杉本 そうそう。とくにうちは本の制作過程から営業部とPR戦略室が一緒に関わっていくことが多いので、なおさら本への思い入れが強くなりますから。

新井 編集者の顔が浮かぶと「この本売ってあげたいな」っていう気持ちになったりもするし、それって大事なことなんだけど、本当に見極めとか目利きっていう意味ではちょっと邪魔しちゃう部分はあるんだろうな。

杉本 うんうん。邪魔しちゃう。それはもうしょうがない。邪魔しちゃうから極力そこをおさえるために、「あの書店員さんなら何て言うかな?」っていうのを想像するかなー。

新井 なるほどね。それは面白い。意外になかった視点かも。

ぼくは編集者と仕事をすることが多いんだけど、編集者が本をつくるときって、当然読者を見ていると思うんだよ。ぼくも新聞広告をつくるときは、新聞の読者をイメージするし。

でも、杉本くんや営業部のメンバーって、読者じゃなくてまず書店さんを見ているんだね。読者に届ける前に、書店さんに届けるっていう。

杉本 ぼくたちは自分たちで売るわけじゃないから。やっぱり書店さんに売っていただいているわけで。

年間何万冊も新刊が出るなかの一冊だから、ちゃんと選んでもらって、気持ちよく売っていただきたいです。そこはすごく大事にしてますね。


もしも、書店員さんに「この本は売れない」と言われたら…

新井 書店さんと「この本いいね!」ってなって注文数入れてもらったら、あとは書店さんに「おまかせ」ってなる?

杉本 書店さんによりますけど、どういう「売り場」をつくるかって相談することもけっこうあります。パネルやポップのような販促物も含めて、色々とアドバイスくださる書店さんが多いので。

新井 なるほど。「売り場づくり」かぁ。

杉本 そうですね。「じゃあ、ちょっと大きく展開してみようか」って言っていただいたら、「売り場はどのあたりの場所をイメージされてますか?」みたいなことを聞いて、このスペースにはパネル、こっちにはポップとか、そういう基本的なことはもちろんなんですけど、それ以外の部分で何かできることはないかも考えます。

新井 それ以外の部分?

杉本 たとえば『1年で億り人になる』のときがその最たる例です。編集担当の三宅さんが、朝一番に「杉もっちゃん、本の横に"金塊"を置いてもらえたら面白そうじゃない?」って言ってきたんです。

編集担当の三宅さんは食べるのが大好き🥢

新井 また面倒なことを!(笑)

杉本 そうなんですよ。たいへんだな、それ...って思ったんですけど、実物と書籍を並べてみたら、たしかに面白いかも!ってなって、とにかく書店さんに相談してみようっていうことになったんです。

そしたら、これがビックリするほど好評で、一時、楽天市場にある"ダミー金塊"の在庫をサンマーク出版が買い占めるっていうことにまで発展しました(笑)

新井 会社に金塊が大量にあるのを見たとき、何事かと思ったもん。

杉本 いま思い返すと、ぼくが楽しそうにしてるから「うん、いいよいいよ、置いてみな」っていう書店さんの優しさに救われましたね。ぼくのウザさが勝ってしまった瞬間かも…。

金塊をつかった展開。ウザくてすいません!笑


杉本 『1年で億り人になる』の表紙って黒地でゴールドも混じっていたから結構強烈でした。それに負けない販促物って、パネルとかPOPじゃもう全然太刀打ちできなかった。だから、金塊しかないか!って(笑)

これが大きなインパクトになって、なんと15万部になりましたね。ビジネス書の年間ベストセラーに入るまでに売っていただいて。書店さんにすごい展開を沢山作っていただいたなーと、本当にありがたいですね。

新井 本当にありがたい…。ところで、ちょっと意地悪な質問していい?

杉本 え!やだ(笑)

新井 (無視…)「書店さんの意見」って、ぼくもすごく大事なことだと思っていて、出版社にはない視点で本をご覧になっているので、絶対に参考にしたほうがヒットの確率は上がるでしょ。

一方、ある新刊をいくつかの書店さんにご案内した時に、「この書店さんとこの書店さんでおっしゃってることが違うんだよな」ってこともあるでしょ?「売れる」「売れない」で。

杉本 全然ある(笑)やっぱりみなさん人間なので、好き嫌いはあるんですよ。ぼくもあるし!

新井 そりゃ、そうだよね。でも、そういう時はどうしてるの?書店さんに「これは売れないよ」って言われたらどうする?

杉本 書店さんが「最初から大きく展開はできない」っていう判断であれば、それは仕方ないかなと思っています。売れるのがわかってからやる、という判断も当然あると思うので。

ただ、あくまで自分の気持ちとして、「〇〇冊くらい初月で売れると思うんですよ」っていうことはしっかりお伝えします。

新井 なるほど。さっき「目利きで自分を過信しない」って言ってたけど、この本だったらこれぐらいの部数は見込めるだろうっていう基準は、ある程度持って新刊案内するってこと?

杉本 もちろん。類似商品があればその実績に基づいて「〇〇冊はいくかもしれません」とか、もしくは「〇〇冊売ってほしいと思っています」っていうことをしっかり伝えます。あくまで決めるのは書店さんですけど、「せめて提案だけはさせてください!」の精神で。

その際に、それを判断していただく材料はちゃんと用意してお渡しするようにしてます。

新井 けっこうロジカルだよね。杉本くんってなんとなく、めっちゃ口がうまくて、書店さんを丸めこむみたいなイメージだったんだけど…。

杉本 印象悪い!!やめて!!

新井 その情報を集めるためにあんなに四六時中POSデータばっかり見てるんだね。POSばっかりみてるから"ポスモト"って呼ばれてるもんね!

杉本 それは言わない約束でしょ!いや、実はそれはあんまり営業では使ってなくて。あ、もちろん既刊とか、新刊の類似商品のデータは使うことありますけど、新刊そのもののデータを使って案内することはあまり…。

新井 そうなんだ!自社の本も他社の本も、すごい情報もってるから、一緒に仕事しているぼくとしてはめっちゃ便利!

杉本 便利!言い方!


唐突に宣伝!『糖質疲労』が好調な出足です

新井 対談ってあっというまに時間が過ぎるね。杉本くん、なにかお知らせあります?

杉本 あ、えっとですね。先週発売になったこの本なのですが、どうも出足が好調な気配がありまして…。

『糖質疲労』山田悟 3/4~順次発売(サンマーク出版)

新井 これよさそうだよねぇ。「唐揚げにはマヨネーズをかけるほうがいい」とかけっこう刺激的なことを書いてあるけど、エビデンスがしっかりした先生で、「健康常識の間違い」に気づかされる!

杉本 この土日で、北海道新聞と中日新聞に広告出してますが、どちらの地域でも動きあるので、今後が本当に楽しみな一冊です!

新井 ていうことは、これから杉本くんはこの本を書店さんに案内して回るわけだよね?

杉本 そうですね(笑) 新刊のご案内は済んでますが、こういう動きになってくると次のご相談をしないと…。「この本、もっと積んでみたい!」という書店さま、どしどしご連絡ください!なにか販促物のアイデアなどもありましたらお待ちしてます!

新井 ですね!ぜひご意見お寄せください!「BOOK TALK発のヒット本」、一緒につくってもらえたら嬉しいです!

杉本 よろしくお願いします!

新井 最後までお読みいただいてありがとうございました!次回は「本をどう売るか会議」の後編をお届けしますので、こちらもどうぞお楽しみに!

手のひらに、一冊のエネルギー。

サンマーク出版の新井と杉本がお送りいたしました!

なぜかカメラ目線のふたり...

第2回はこちら